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2014/03/25

イメージフォーラム映像研究所2013年度卒業制作展

今年もイメージフォーラム映像研究所の卒業制作展に行ってきました。
渋谷のミニシアター、イメージフォーラムには映像を教える学校、映像研究所が設けられています。
イメージフォーラムは渋谷に移転する前は四谷三丁目にあったのですが、その四谷三丁目時代には、映像関連の雑誌出版やそういう教育活動がメインだったと理解しています。

そして週末は一般向けの実験映画、映像作品の上映会があって。
それに足しげく通っていた時期がありました。
(まぁやっぱりなんか「特別な自分」を演出するアイテムが欲しかったんでしょうかね……)
そのころから卒展も見たりしていました。

イメージフォーラム映像研究所の卒展、映像研究所の生徒さんたちにとっては、初めて私みたいな「一般人」」に作品を見せる初めての機会であると思います(もちろんそれ以前にも作品を発表されている方もいらっしゃるとは思いますが)。

プログラムは全部見られた年も、一部しか見られなかった年もあるのですが。
今年はA・B・Cの3プログラムで、全プログラムを観ることができました。

簡単な感想など書いてみます。
(勘違いがあったらごめんなさい)

Cプログラム
『Discovery Tail』(櫻庭莉子/デジタル/5分)
雨に濡れた自然の景色、水辺の景色。そういった映像を繋ぎ合わせた作品です。
映像作品でいちばん多用されるスタイルじゃないかなぁ。
雨の風景というのは。この前見た深夜アニメの台詞にありましたが、出かけなくていい日、窓の外の雨模様を眺めるのはいいものかもしれませんね。

『走る女』(三浦美帆/デジタル/5分)
夜の公園を走る女。木にしがみついている男、ダンスを踊っている男女の脇を通りすぎ。
そして、男の死体が発見されました…というナレーション。
その事件の捜査のためか、刑事っぽい男たち。
ちょっと奇妙な味のドラマかなにかのダイジェストのような。

『旅の口実』(木下亮/デジタル/15分)
誰もいない家、亡くなった祖父の家?、を訪れた男。ふと見つけた写真。それは祖父の単身赴任時代に住んでいたマンション(だったかな?)だったと。その場所を独り訪れる男。
ひとりの風景。『旅の口実』とタイトルをつける自意識のあり方。

『いどうするたましい』(大久保喜江/デジタル/17分)
フィクストの画面を右から左に横切る人物。商店街、港、海沿いの砂地、雪の残る山、など。遠くのほうを横切るので、フィクストの風景で人物だけそろそろと動く様子をずっと映している、という趣向。
ここらへん、映像作品のひとつの手法として、「とても早くorとてもゆっくり」というのがあるのかなぁと。

『ノート』(日下部水規/デジタル/35分)
こちらはドラマ仕立ての作品。ちょっとメンヘラ気味の女性。ノートにつける日記に日々の思いを発散していたけど、「真実の愛」に出会って、日記にさようならをするという話。
「真実の愛」というと大仰に感じるけど、ほんとのところはああいう姿をとって現れるのかなぁと。

Bプログラム
『背景と画』(玉木晶子)
本作は2台のプロジェクターを使い(1台は8ミリをビデオ化したものかしら?)、1枚のスクリーンに映像を重ねて映写するという趣向の作品でした。
考えてみたら、卒展では、映写方法に実験的な手法を使う作品はあまりなかったなぁと。

『てん てん』(森有未)
こちらはアブストラクトに加工された映像で作られた作品です。これも映像作品としてポピュラーな手法のひとつかと。
光に溢れるスクリーンがいい感じでした。これから光に溢れる季節ですし。

『ケイデンス』(新井智也)
自転車に乗って撮った映像をイメージ的に編集したもの。一晩の時の流れ、でしょうか。
ほんとにこういったかくとしたストーリーを持たない画像の編集って、ずいぶん大変じゃないかと思います。

『DEMO』(Ghetto Hollywood)
昨年12月に行われたデモの画像と(仮)ALBATRUSの楽曲を組み合わせたミュージックビデオとか。撮影も編集もキマっていました。

『Launch』(荒舩良孝)
作者さんはサイエンスライターさんだそうです。冒頭の作者さんの地元の大型ロケット花火を打ち上げるお祭りはアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』に出てきた物かなぁ。
その冒頭から、閉鎖される遊園地からレトロなデザインのロケットの遊具を引き取ってお宅に置いている方の話、ロケットの打ち上げを見に行く話、そしてラジオゾンデ用の風船?にiPhoneをぶら下げて、宇宙に入るような超高高度からの映像を撮るプロジェクトのお話などを紹介していきます。

やはりプロのライターさんだからなのか、きっちりとサイエンスルポエッセイ映画としてまとまってると思いました。これがイラストルポだったりしたら書籍として流通できると思うのですが、こういう個人映画だとどう流通させればいいのか…。書店売りのDVDとかになるかなぁ。ほんと、そうすればいいと思うレベルのできでした。
ソフト化されるなら、その、風船から撮ったiPhoneの映像を付録としてぜんぶ収めて、好きなように見られたりしたら面白いだろうなぁと。

Aプログラム
『THE EGG HOUSE』(高田須美子/デジタル/4分)
今回の卒展でアニメーションは本作だけみたいです。ドローイングアニメーション。
ちょっとひねた感じの子供たち。卵。

『birthday』(野田ゆり子/デジタル/3分)
ちょっとあっさり目でしたが。ただ、ケーキのろうそくの炎がなんとなく合成っぽく感じられました。ほんとに合成なのかな?それともカメラの都合でそう見えるのでしょうか。その風情が面白かったです。
吹き消そうとしても消せないバースデーケーキのろうそくの炎。なんか夢に出てきそうなシーン。

『イエロー』(岡田三千代/デジタル/10分)
昔懐かしいモノクロームの写真、それが水に濡れて滲んでいく様子(ほんとに濡らしたのか画像加工かは判らないのだけど)。インクジェットのプリントアウトを濡らしたのかなぁ。

『in the room』(yuuka/4分)
8ミリの映像をビデオ化してあるのかな。アブストラクトに加工された映像。合成されたりして。とても上手くスタイリッシュにまとめてあるなぁと思いました。

『オカダさん』(水嶋かおりん/32分)
オカダさんとは介護施設に通うおじいちゃん。とあるビエンナーレ展で入選するほどのアートの腕前の方でもあるようです。そのオカダさんをモチーフにしたドキュメンタリー。
オカダさんの作品紹介、日々の暮らし、そしてオカダさんの“個展”の様子。

オカダさんの作品は、印刷物などを裏返しにして、輪郭をなぞって、カラフルに彩色してゆくという手法。確かに手すさびとしてはとっつきやすい手法かなぁと。そしてポップアートとかの文脈にも組み込めるかなと。

まぁただやっぱり老いていくのは大変かと。

オカダさんの住まい。もうお亡くなりになったそうですが、寝たきりの奥さんを介護していた時期もあったそうで。そして、一時期はゴミ屋敷化していたようで。それでボロボロになって住めなくなった部屋もあるようです。
やっぱいろいろ大変だなぁと。そしてそれは私もいつか行く道ですし。どころか私は住む家もないでしょうし、もっと悲惨だろうなぁと……。


とまれ、今年も無事に卒展を拝見できました。
今年の全般の印象はとかはあまりよくわかりませしかれど。
去年の卒展の『しんやのばぁばん』とか、今年の『オカダさん』とか、お年寄りを扱った作品が印象的でした。それは私にとって高齢者問題が人ごとではなくひしひしと差し迫っているせいかもしれません。

映像を取り巻く状況も大きく変わりつつある昨今。ビデオカメラや編集ソフトも比較的手軽に買えるようになり。また、携帯電話にも普通にムービーカメラがつくようになりました。映像の撮り方もいろいろバリエーションが増え、発表もニコ動やYouTubeに気軽に上げたり。それを踏まえた映像作品もたくさん出てくることでしょう。

そういう時代のなかで「映像を教える/学ぶ」ということはどういう風に変化していくのかなぁと思ったりします。

さらにイメージフォーラム付属映像研究所は8ミリフィルム映画の牙城でもあります。
今年も8ミリをモチーフにした作品がありましたし。来年は8ミリ作品、あるかなぁと思ったりもします。もちろん8ミリはいつか消え行くものにしても。

そして、わたし自身、いつまで観に来るのだろうと思ったりもします。
いつか最後の卒展鑑賞の時が来るのだろうなとここ数年、思ったり。
それはそう遠い時じゃないかもしれないな、と思ったり。

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