夜想上映会『アリス』
土日と2日連続の渋谷行きでした。
2日目はアップリンクさんへ。ヤン・シュヴァンクマイエル『アリス』の上映会。
二夜連続の夜想上映会の2日目だそうです。
日比谷カタンさんのライブつきというので行ってきました。
一昨年あった「ヤン&エヴァ・シュバンクマイエル展」に『アリス』の小コーナーが作ってありました。『アリス』未見の私はちょっと残念でした。だから『アリス』は観たいと思っていて、今回日比谷カタンさんのライブつきで『アリス』が見られて嬉しかったです。
ヤン・シュバンクマイエルの映像作品を初めて見たのは四谷三丁目時代のイメージフォーラムの上映会。渋谷に移ってからも続いていますが、イメージフォーラムでは毎週末に実験映画の上映会をやってました。
あのころ実験映画を見まくってました。なぜだというと…。
日本冒険小説協会の仲間は映画マニアが多いです。公認酒場「深夜+1」でもマニアックな映画話が多くて、あまり観てない私は話にあまりついていけませんでした。今から観まくっても話についていけるレベルにはなれないなぁと思っていたのですが。
ちょうどそのころ、イメージフォーラム主宰で日本冒険小説協会全国大会の映像とか撮っていただいていた、会の古参、かわなかのぶひろ先生の上映会があると伺って。
ま、最初はお付き合いという感じ、どうせ退屈するだろう、面白くないだろと内心思いつつ、上映会に行きました。
しかし、けっこう面白くて。いわゆる「物語」的な面白さじゃなくて、イメージ的な面白さというか、目の離させなさがあって。
その時こう思いました。「劇映画じゃ会のみんなにはかなわない。でも、実験映画の世界ならみんなより詳しくなれる」と。今考えると妙な迷走っぷりですが。
んで、イメージフォーラムに足しげく通うようになりました。もう20年以上前の話になりますか。
ヤン・シュバンクマイエルの短編集も足しげく通っていたころに見たプログラムのひとつ。
奇妙な味のクレイアニメとか。そのプログラムもまた20年近く前のものになるかと思います。
ま、深夜+1で実験映画の話しても解る相手がほとんどいないってのに後になって気がつきましたが。わざと孤立を深める奴…。
しかしまぁ日比谷カタンさんがヤン・シュバンクマイエルがお好きと伺ってこれもまた不思議なご縁のひとつかと。『対話の可能性』という曲名を聞いてちょっと心に引っかかったり。その大昔の上映会で見たような記憶があって。
シュヴァンクマイエルの『対話の可能性』というタイトルを憶えていたのは、「対話の可能性なんてねーよ!」と孤立していたせいもあるかしら?
ただほんと、そういうきっかけですからシュバンクマイエルの長編はほとんど見てないのですが。
数年前あったイメージフォーラムであったシュヴァンクマイエルの上映会も結局『悦楽共犯者』を見ただけですし。
まぁとにかく『アリス』が日比谷カタンさんのライブつきで見られるのはとても嬉しいものです。
所用を済ませてから渋谷へ。渋谷駅からアップリンクに行く途中に楽器屋さんがちょっと前にできたのですが。そこで弦とピックを仕入れました。まだほんと弾けないけど。
「サバレス・アルゼンチーノ」(マカフェリタイプのギター用弦で有名な品物)の弦が置いてあったのにはちょっとびっくり。店頭で初めて見ました。ちょっとしげしげと眺めたりして。高いので買いませんでしたけど。
それからお店をちょっと見て回って。マカフェリタイプのギターの在庫はないようでしたが。ほんとまだまだ弾けないけど、いいギターを眺めるのも楽しいものです。試奏している人の演奏を脇で聴くのも楽しいです。
アップリンクに着いて。ややあってまず日比谷カタンさんのライブから。
今回も「ヲマヂナイ」が聴けたので嬉しかったです。昔のより甘口のアレンジになってるように感じました。昔は身を切られるような感触がしたのですが。
「終末のひととき」はまたverが上がりましたか。「ウスロヴノスチ」前半から「キッチンレアリヅム」イントロに流れながらのMCも素敵。
シュヴァンクマイエルの上映会だから「対話の可能性」で〆るかと思いましたが、そうではなかったです。
ミニライブかと思っていましたが、けっこう普通のライブぐらいの長さがあって楽しかったです。
今回、一見さんも多かったかもしれないと思うのですが、一見さんも日比谷さんのライブを見てくれるようになるといいなぁと思います。
そしていよいよ「アリス」の上映。DVD版での上映とか。
アリスというと青のエプロンドレス姿ってのがイメージだったんですが、本作のアリスはピンク色のドレス姿。「ローゼンメイデン」の雛苺を思わず思い出してしまったあたくし。
彼女が「不思議な国」を巡るのですが。どの程度ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」シリーズに準拠しているかはわかりません。チェシャ猫とか出てこなかったし。ま、私自身「不思議の国のアリス」シリーズをあまり知らないのですが。
夜、退屈しのぎにティーカップに小石を投げ込むという遊びをしていたアリス。その時、ガラスの標本箱の中の兎の剥製が動き出し、それを追いかけたアリスは不思議の国に迷い込みます。
クリーチャーたち。これはヤン・シュヴァンクマイエルの展覧会といった感じ。魚の標本、鳥や動物の剥製、骨格標本、そして人工物をさまざまに組み合わせたシュールなクリーチャーたち。アリスも時々ヲ人形になります。可愛いというよりは不気味っぽい、古めかしい感じのヲ人形。
小道具なんかも不気味。不気味な瓶詰め標本。ジャムとかおいしい物が入ってるぽい瓶詰めも、中を良く見ると不気味だったりして。(不気味というか、感覚を逆撫でされる部分もあります)
そういったクリーチャーはストップモーションアニメで動きます。古めかしい、カクカクした動き。
お話の進め方としては淡々としているという感じがしました。大きく話に起伏があるという方向じゃないです。何か、夢の中の世界という感じ。語り口としては。ほんと、夢に出てきそうな感じです。悪夢としてかなぁ。
もともと「不思議の国のアリス」は夢の世界の物語だし、本来的な「アリス」かもしれないです。
「書き物机」が小道具としてよく出てきました。アリスが引き出しを開けようとすると必ず取っ手がもげて、アリスはしかたなく取っ手の取れた穴に指を突っ込んだり、道具を使ったりして引き出しをこじ開けます。あれはなんの比喩だったのでしょうか。
引き出しを開けるという行為に対して正当なアクセス(取っ手を引っ張って開ける)というのができない。それはアリスが異界(つうかアリスにとってはこっちの方が異界ですが)からの闖入者だったから?
アリスが引き出しに飲み込まれて異界へ行くというのは「ドラえもん」の影響かしら?つうか、「ドラえもん」の引き出しには元ネタがあるのかなぁ。
ちょっと淡々としているなぁという感想ですが、「アリス」楽しみました。ほんと見られてよかったです。
しかし、シュヴァンクマイエル作品やシュヴァンクマイエルのドキュメンタリーを見ていつも思うのですが、チェコには美人、可愛い女の子っていないのかしら(スマヌ)。
上映後、日比谷カタンさんとアップリンクの方のトークショー。トークショーまであるとは思っていなかったので嬉しかったです。のっけ、日比谷さんの鋭いツッコミとか。
日比谷さんが音楽活動を始めるようになった経緯とかも初めて知りました。
URiTAさんとのいきさつもそうだったのかと知りました。
だいぶ前から日比谷さんのライブはよく行ってますが、そういう話を伺うことはなかったし。
岸田秀は私も読んでて、その「唯幻論」は大切な思考の杖です。私は本田透からはいりましたが。でも根っこに寺山修司の「作り変えられない過去なんてない」っていう言葉があったと思います。
という方向で楽しいイベントでした。
ただ、土曜出勤+土日イベントというのはさすがにくたくたになりました。
帰宅して一杯呑んでばたんきゅー。
つうか夜想の最新号もあって、寺山修司関連の記事もあるはずでしたのが、チェックせずに帰っちゃいました。
つうか「アリス」みたいな夢が見たいな。女の子は可愛い方向で。
| 固定リンク | 0
コメント