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2023/08/06

万有引力公演『八月の紫陽花Ⅱ』

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8月5日の土曜日は三沢の寺山修司記念館で演劇実験室◉万有引力公演『八月の紫陽花Ⅱ~わたしはあなたの病気です~』を観てきました。
いや、私は三沢まで公演を見に行くほどコアな万有引力ファンの資格はないと思うのですが…

新幹線で東京から八戸まで、八戸から青い森鉄道で三沢まで。
三沢も妙におなじみの場所になりました。
青森はちょうどねぶたシーズン。宿を取るのはまず不可能で最初は諦めていたのですが、奇跡的に取れました。
(ありがとうございます)

ただ、三沢到着時間を間違えてしまい、無料送迎バスがぽっかりと無い時間帯についたので、タクシーで記念館まで。
ちょっと痛い出費だったけど、三沢駅のタクシー乗り場ですぐタクシーが拾えたので助かりました。

寺山修司記念館では企画展「手紙魔 寺山修司」をやってました。私信系のほか、公演の写真?案内?を同封したお手紙とか、絵葉書とかありました。
寺山修司の手紙の展示は何度か拝見したことがありますが、そういう系統はあまり拝見した記憶がなかったので面白かったです。
あと『市街劇ノック』の総合台本の展示もありました。そういえば『ノック』の演目にも手紙を使ったものがあったんでしたか。
それから手紙つながりということで寺山が詩人の谷川俊太郎と行っていたビデオでの文通、『ビデオレター』の上映がありました。これは映像作家の「かわなかのぶひろ」先生が萩原朔美さんと行っていた8ミリ映画での文通『映像書簡』を見た寺山修司がその影響で始めたという話をかわなか先生のトークショーで伺ったことがあります。

それから常設展示も。ただ、昔の自分なら、すべての展示を熱心に眺めていたでしょうが。今はざっと眺めるだけでした。そういうのも「老いる」って事なのかなぁと。

外からは稽古をする声や音が色々聞こえてきます。

ややあって開演。
会場は記念館の屋外ステージでした。
少し前のにわか雨が降ったそうですが、開園時には上がってました。
よかったです。

6時半開場、7時開演だったのですが、開演前から舞台で舞踏が行われていました。
長い舞踏。始まったころにはまだ蝉が鳴いていたのですが、舞踏の間に日は落ちていき、蝉の鳴き声も収まりました。
今回、この、日が落ちていくのを使った演出がとても良かったです。
野外ステージならではかと。そして計算され尽くしていたのではと。

そして本編の始まり。今回の『八月の紫陽花Ⅱ』は寺山の『疫病流行記』がベースになってるようです。
『疫病流行記』は以前、月蝕歌劇団さんのを拝見したことがありますが、あまりよくわかってないです。例によって例のごとく。

ある南の島のキャバレー、島には疫病が流行しています。死んでいく人々。
陸軍野戦病院を探し、「あたしはあなたの病気です」とつぶやく少女(かわいかったです)。
過去を失くしたらしい刑事。
島からの脱出を夢見る男ふたりの親友。

今回、ストーリーがわかりやすかったと思います。
もちろん万有らしい、抽象的な部分の多い演出でしたが。
少女の正体、そして刑事の正体。わかりやすかったです。
そして男二人の友情も。あたし、そういうのに弱いです。
少女の「あたしはあなたの病気です」の台詞の意味もわかりました。

そしてあの寺山修司の編んだの名言集『ポケットに名言を』に「わたしはあなたの病気です」と共に収められた作中の台詞
「神を殺して、仏を売って、何の南があるものか。
地獄煉獄。水しぶき。歴史を書くのは右の手で、舵を取るのは左手だ!」
男二人は一緒に南に行くのを夢見ていたのですが。
北のない羅針盤。「吸いさしのタバコで北を指すときに北暗ければ望郷ならず」
死んだ男の名前が「ムギ」なのは聖書の「一粒の麦もし死なずば」が下敷きなのかなぁと思いました。

前述のように元ネタ的には731部隊があると思いますが。本作は森村誠一の『悪魔の飽食』の前みたいですが。
ただ、『悪魔の飽食』の前にも731部隊のことは社会に先生の話で聞いたことがあるので、寺山は知っていたとは思います。
となると「神を殺して仏を売る」行為は、その、疫病を使って人体実験を行った731部隊をはじめとするかつての日本軍の残虐行為の事だったのかなとちょっと思いました。寺山作品はストレートな社会批判要素は少ないと思っていたのですが。いや、寺山の目指したものはそういうストレートな社会批判を超えた「想像力による権力の解体」であったかと思っているのですが。

万有引力の三沢公演、楽しみました。
ほんと、いろいろと有難うございました。

あ、そうそう。8月の19〜20日、いよいよ三沢で初の実験映画も含めた寺山映画の上映会「寺山修司映画祭2023 映画監督◉寺山修司」があるそうです。ちょうおススメです。
三沢や青森のみなさんが寺山修司作品に触れる機会がどのくらいあるかわからないのですが、たくさんあるといいなと思います。
「寺山」が広まってくれたらいいなと。

あたしも故郷にいるころ、寺山修司との出会いで救われたクチですしね。

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