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2023/07/07

万有公演『アダムとイブ、私の犯罪学』

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下北沢のザ・スズナリさんで演劇実験室◉万有引力第75回本公演『〜もう一つの天地を創造する日のための一幕劇〜アダムとイブ、私の犯罪学』を観に行ってきました。

ザ・スズナリさんも万有引力公演ですっかりおなじみの場所になりました。アパートの2階を改造した場所だそうですが、建物の外観からはあそこに劇場が収まってるとはとても思えません、劇場の中は異空間になってるんじゃないかしらと思ってます。
今回も指定席制でした。今までの万有さんの開場前にお客さんを並ばせ、開場で一気に客入れ、席は自由、というのも楽しかったのですが。こちらもトシをとり、足元が少々おぼつかなくなってくるとこちらの方がいいかなと思うようになりました。ほんとトシです。

入場。今回の大道具も前回の草迷宮と同じような木製の無地の低い台をいくつか配置したレイアウトになってました。草迷宮だとその台の間が川に見立てられたりしてましたが、今回はそういう趣向はないみたい。あと前後左右に4つのはしご、上手のに奥に出入口。その横に奥に向かう2列の電柱と雲と空の書割りがありましたが、ちょっと不思議な存在感。投影か光らせてるんでしょうか。いくつか配置された台の上に真っ赤なリンゴ。
万有さんは開演前から舞台上を俳優さんが蠢いていることも多いのですが、今回はなかったかな?(気が付かなかっただけかもしれない。老眼的に)

ややあって開演。

舞台はトルコ風呂(と書いて分からない人のほうが多いかなぁ。ソープランドがかつてはそう呼ばれてました)の3階にある安アパート。トルコ風呂の湯気が上がってくる安物件。
失業中のお父さん(アダム)、リンゴフェチの母親(イブ)、家出を夢見る兄(カイン)とその弟(アベル)の一家。そして下のトルコ風呂で働くロビンソン・クルーソーを愛読し、無人島を夢見るトルコ嬢見習いの女の子。彼女は寺山修司のエッセイ常連の「ミス・トルコの桃ちゃん」なのでしょうか。

このお芝居は万有公式サイトの解説によると1966年、寺山が演劇実験室◉天井棧敷を立ち上げる前の最後の戯曲だそうです。
そういう意味で後の天井棧敷時代の寺山修司の演劇ほどには思弁的ではなく、通常の演劇っぽい感じがしました。それでも前衛的な感じはしましたが。

ロビンソン・クルーソーは以前の万有のアトリエ公演でも取り上げられていましたし、寺山ワールドに親和性があるのかな。あと、私の大好きな寺山修司の長編詩『ロング・グッドバイ』からの引用もあって嬉しかったです。

床下のトルコ風呂・エデン。床下の楽園という趣向もよかったです。寺山の映画『田園に死す』も布団をはぐと下に荒野が広がっているという印象的なシーンがありましたが、寺山ワールドのキーワードみたいなイメージなのかな?
スズナリの舞台には床下に通じる穴が空いているのですが、それをうまく使ってました。万有さんのほかのスズナリ公演でもそういう演出があって面白かったですし、ザムザ阿佐ヶ谷でも同じように床の穴をじょうずにお使いだったかと。
今回の演目、万有は初めてかけるようですが、なんとなく既視感もありました。万有引力さんは寺山演劇の名場面集といった公演もなさるのですが、そういう演目の中で演じられたこともあったのかな?

今回の万有引力公演も楽しみました。
万有引力さんの次回公演は8月5日に去年に続きふたたび三沢の寺山修司記念館での公演のようです。
行けると良いと思うのですが、やっぱり三沢は遠いですし。
ちょいと悩みどころです…

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