「IOGI チェコ若手アーティストが描く杉並」展
荻窪にある杉並区郷土博物館分館で「IOGI チェコ若手アーティストが描く杉並」という展覧会を見てきました。
チェコセンターさんの紹介ページによると、「チェコのコミック作家の卵たちが日本の日常生活をリアルに描き、チェコ・コミック界で話題となったプロジェクトです。 」だそうであります。
チェコ。う~ん、私はチェコについてあまり詳しくないのですが。開高健がチェコのビールを絶賛するエッセイを読んだ記憶があります。
あと「ロボット」という言葉を作ったカレル・チャペックがチェコの人だったかしら。
それと私は元ガンマニア、ミリタリーマニアだったのですが。チェコ製の戦車がチェコを併合したナチスドイツによって使われ、その車体を利用した自走砲がドイツ敗戦まで使われたとか、日本軍をさんざん苦しめた「チェッコ銃」とか、ソ連に共産主義化されてたころ、東欧のソ連衛星国は正式小銃にソ連のAKシリーズのクローンを使っていたのが、チェコだけは独自の小銃を採用したとか。
そしてプラハの春のこと。
チェコの人は「メカが友達」なのかな。私の生まれも工場街なので親近感があります。そしてソ連の衛星国でありながら、ソ連従属に抵抗していた気骨のある国だと認識してます。
それからヤン・シュヴァンクマイエルですね。あの土臭いシュールレアリズム。ちなみにチェコセンターさんにはシュヴァンクマイエルの映画の上映とご贔屓なインディーズミュージシャン、日比谷カタンさんのライブって企画で訪れたことがあります。楽しかった。あとビールもおいしかったです。(あと、トイレに入ったら小便器の位置が高くて「さすが」と思いましたw)
さて、この企画はどうやら、紋切り型の日本のイメージではなく、異文化として日本を研究したうえで作品を描くというルールで作られた作品の展覧会のようです。日本の紋切り型のイメージ、フジヤマ・スモウレスラー、ゲイシャ、スシ、テンプラあたりでしょうか。あるいはアニメや漫画やゲームのイメージでしょうか。それには拠らず作品を書くというルールのようです。
舞台が杉並区なのは、原作者に杉並区在住のチェコの方がいらっしゃるのが理由のようです。そしてたぶんお描きになった皆さんは訪日の経験はないようなのですが。いろいろと研究されてお描きになられたようです。(勘違いがあったらごめんなさい)
杉並区郷土博物館分館は小ぶりな場所なんですが、その1階と2階、フルに使って展示されていました。
「定点観測」した年代記。とてもいい趣向です。あちこちを舞台にしたこういう作品の集成を眺めてみたいです。
インディーズバンド?物の作品がありました。バンドの人たちは東京もチェコも共通点が多いのかな。
父親が障害を持つ息子をプールで泳がせるって作品がありました。初見ではどういう作品かちょっとわからなかったのですが。気がついて驚きました。そういう趣向の作品ってなかなか見かけないので。
「異文化」として研究した、しぐさの違いの研究のイラストです。日本を「異文化」として研究し、こういう発見に至る。その着眼点は凄いです。例えば日本の作品で海外を舞台にした作品があるとして、こういうところまでリサーチはするものなのかなと思いました。
「アンダーカレント」という作品だそう。アングレームで賞をとった漫画家。しかし受賞後、周りはけっきょく「大きな賞をとった漫画家」に漫画を描かせるしか頭にない、「彼自身」には興味がない、その乖離感と心象風景を描いた作品になるのかな。絵で語りかけてくる力、凄かったです。
あと、脱サラをして製塩業に就こうとする中年男を描いた作品がありました。たぶんチェコだと塩は岩塩じゃないかと思うのですが。海水から塩を作るという仕事に「日本」を見出したのかなと。「脱サラ」って言葉はチェコにあるのかなぁ。
このチェコの方の解釈によるお地蔵さまがとても素敵でした。子供の守護仏のお地蔵さま、それを理解しつつ、とてもかわいらしく、斬新さも感じさせ、すごいと思いました。
あと、チェコの漫画の紹介のコーナーもありました。こういうのが日本で見られる機会もなかなかないと思うのですが。
全体として台詞が少なく、画力で語りかけてくるのが今回展示されていた作品の共通点かなと思います。それがチェコの漫画そのものの特徴か、今回の企画の作品の特徴に限られるのかは分からないのですが。
この、紋切り型のイメージのよらずある国を描くという作業、大事だと思います。往々にして人は紋切り型のイメージに頼ってしまうものですが。そうならないようにしていくのは大切ですし、そこからまた新しい表現の地平が現れるのかもしれないと思います。
「IOGI チェコ若手アーティストが描く杉並」展、面白かったです。
入場も無料で大サービスです。おススメであります。
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