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2021/06/07

万有公演『青森県のせむし男』

下北沢のザ・スズナリさんで演劇実験室◎万有引力 第71回本公演『見世物浪漫小歌劇(オペレッタ) 青森県のせむし男-寺山演劇の原点に隠された劇!劇!劇!-』を観てきました。『青森県のせむし男』、寺山修司が率いた演劇実験室◎天井棧敷の旗揚げ公演ですね。

私と寺山修司の出会いは、高校時代、演劇部の部室にあった角川文庫の寺山修司の戯曲集でした。2・3冊あって、この『青森県のせむし男』とか、『毛皮のマリー』とか『血は立ったまま眠っている』とか『大山デブ子の犯罪』とかの収められた本だったと思います。角川文庫の寺山修司は今でもかなり出されていて、電子版もあるようで、嬉しい限りなのですが。ただ、残念ながら、角川文庫の寺山修司の戯曲集は『毛皮のマリー』以外、そして競馬エッセイはすべて絶版になってるみたいです。ちょっと残念だけど。復刊してくれないかなと思っているのだけど。できたら電子版もね。

その部室にあった寺山修司の戯曲はいくつかは読んだと思いますが、あんまり憶えてはいません。ただ『大山デブ子の犯罪』の「人生はお祭りよ。いつもどこかでお囃子が鳴っている」(うろ覚え)は印象に残ってて、だから、本屋に行ったとき、角川文庫の寺山修司のエッセイを見かけて、ちょっと読んでみようかなと思って、読んでみました。
それで大いにハマりました。なんていうのかな、ちょっと視点を変えてみると今までがんじがらめにされていたような『価値観』が軽やかにひっくり返っていく心地がして、それがとても気持ちよかったです。それが寺山修司のエッセイシリーズに冠されていた「さかさま」という事だったのでしょう。面白かったです。
まぁ、そういったものは、今のSNSなんかで溢れている「逆張り」って事だったんだろうけど。(もちろん寺山はその逆張りの『名手』だったと思います)

「寺山修司の演劇」に触れたのはそれからだいぶのちの演劇実験室◎万有引力さん他の『百年気球メトロポリス』でした。まるで空中楼閣のようなパルテノン多摩全体を舞台に、あちこちで行われている演目を、劇団員さんの先導で観て回るという趣向でした。
それがとても楽しくて、それから万有引力さんの公演に行くようになりました。

いや、ま、閑話休題。

その天井棧敷旗揚げ公演の『青森県のせむし男』を天井棧敷の衣鉢を継いだ万有引力さんが掛ける。期待はいやおうにも高まります。
(『青森県のせむし男』はもちろん『ノートルダムのせむし男』が元なんだろうけど、『ノートルダムのせむし男』も近年は聞きませんな。ポリコレ的にダメなのかしら?)

下北沢のザ・スズナリさんも万有引力公演ですっかりおなじみの場所になりました。
検温と手指の消毒をして入場。

劇場の左右の壁、それからあとから気がついたのですが、劇場に入る通路にも天井棧敷のポスターが貼られていました。
舞台は不思議な構成。中心部に丸い舞台があって、その前に少し高くなった真ん中より小さめの丸い舞台。そこから左右に枝が出ていて、その先に小さな四角い舞台があります。なんていうか『生命の樹』の一部みたいな感じ?上手と下手の高いところに小スペースがあって、そこは奏者さんのコーナーになってました。下手が琵琶、上手が三味線と琴だったかしら。

そしていつものように俳優さんが舞台をうごめいています。半ば闇に溶けた感じで。
そして開演。
開演の口上があって、「天井棧敷第一回公演」と宣言されます。場内のポスターといい、天井棧敷時代をフィーチャーしています。
当時もそういう口上があったのでしょうか。

失踪した役所の戸籍係。その名前が古間木某で、「古間木」とは三沢の昔の地名で、青森市から戦災で焼け出された寺山修司と母のはつが身を寄せた伯父が住んでいた場所ですね。そしてもちろん今は寺山修司記念館のある場所。
そしてなぜその戸籍係が戸籍謄本と共に失踪したかの理由が語られ。土地の名家の息子が女中を手籠めにし、孕ませたと。そして世間体もあり、その息子は女中を嫁にした、しかしその息子は上海で頓死して…。その戸籍関係を封印するために戸籍係は失踪したと。

やがて時は経ち、その名家の人びとはみな死に絶え、その女中だけがひとり残っていた。
そして、彼女のもとにやって来る、せむし男。その男はその女中の産んだ子かもしれないと……

そう言った「ストーリー」、ふつうのお芝居なら俳優の演技によって綴られていくのでしょうが、『青森県のせむし男』では、その「物語」のほとんどが俳優さんたちの『語り』によって綴られて行きます。『演技』によって物語が綴られていくパートは、なんていうのかな、小説のさし絵みたいな感じです。そこらへんが寺山芝居の特徴かなと思います。『犬神』なんてお芝居としては大きな山場になりそうな、主人公の少年がやっと幸せを掴む事になりそうなのに、それを自ら壊していく下りが「語り」だけで綴られていきますもの。

ほんとうに今回も万有引力さんの異世界を創るの、凄かったです。目の前の舞台、空間が繋がってる世界とはちょっと思えなかったなと。
照明も美術も、そして演技も歌も踊りも。
一瞬暗くなって明かりが点くと、舞台のががらっと入れ替わってるのも。それも次々と何回もやって。お見事です。いちど暗視装置で見てみたいくらい。

あと、匂いが印象的でした。マッチの匂い、蝋燭の匂い、そして、これは気のせいかもしれませんが、お香の匂いがかすかにした気がしました。そういうのもいいなって思います。匂いの演出はいろいろ難しいでしょうが。
照明も印象的で。床に埋め込まれた上向きの照明とか、照明の塩梅で、仕切りなんかないのに、奥の方が仕切り越しみたいに見えたり。障子に映るシルエットを使う演出も素敵でした。それとあとハナ肇のあのネタもどきのもあったりして。あとあれは「ロックユー」ネタかしら。

公演、楽しみました。

そして、最後に、また口上がありました。次回公演は『大山デブ子の犯罪』と。いや、それは、天井棧敷時代の口上なので、ほんとにあるそうではないのですが。天井棧敷はそういうスタイルだったんだなと知りました。
でもやっぱり万有引力版の『大山デブ子の犯罪』は見てみたいです。萩原朔美さんの天井棧敷時代の思い出をつづった『思い出の中の寺山修司』に、『大山デブ子の犯罪』制作の苦労話が書かれていますし、天井棧敷の名花・新高けい子さんのトークショーでも、『大山デブ子の犯罪』にご出演の時の思い出話がよく出てきますし。だから、万有引力版も見てみたいなと思ってます。

肝心の劇の内容について、本当にうまく言葉が出なくて、言葉足らずでありますが、とても良い経験でした。
ここ最近、色々あって、鬱々していたのですが、舞台が進むとなんかちょっとセカイがいい感じに見えるレベルの、いい気分になりました。
やっぱりお芝居にしろライブにしろ、行く物です。

次回公演も見られたらいいなと思ってます。

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