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2021/02/01

万有引力公演『プロメテウス』

昨日は新井薬師の中野ウエストエンドスタジオさんで演劇実験室◎万有引力さんの実験公演『フォークト=カンプフ検査音楽劇『プロメテウス』− 伝奇仕掛けの俳優都市 −』を拝見して来ました。楽日になります。

この公演は本来は去年の3月に予定されてたのですが、新型コロナ禍で延期になり、やっとこさ今回公演できるようになりました。

中野ウエストエンドスタジオさんは初めて行く場所にります。けっこう広いスタジオ形式の場所です。
スタジオ本体は地下にあって、階段を下っていく方式。その階段も舞台の一部として使われていました。舞台装置は2段式かな。あと、移動できるようになってる階段が印象的でした。その階段、そのスタジオ本来の階段に沿わせて設置できるようにもなっていました。

お話は、タイトルからして分かるように『ブレードランナー』から強く影響を受けています。アンドロイドのいる世界、そして脱走アンドロイドを「処分」するバウンティハンターがいる世界。
あと、私自身の印象ですが、放射能汚染下で「アンドロイド」が暗躍している世界ってのは私の好きなゲーム、『Fallout4』を連想させました。Fallout4にも誰かが実は人造人間ってイベントがいくつかありましたし。

もちろん万有引力さんのお芝居でから、ストーリー的なものというより思弁的なお話でした。

アンドロイドと人間の境界。それは『共感』の有無で測れるのか?しかしその『共感』でさえプログラムされたものであったなら?人の『記憶』はほんとにあった事なのか?それともそれは偽造の記憶なのか?(ここらへんは『攻殻機動隊』にもある要素ですな)
あなたは「アンドロイド」なのか「人間」なのか?魂の重さ分、人は死ぬときに軽くなるなら、アンドロイドは軽くならないのか?

そこでふと思い出したのはリラダンの『未來のイヴ』です。万有引力さんもお芝居にしていますが(こちらも原作としての舞台化ではないけれど)。
「人造人間は愛情の対象となるか?」その問答でほとんどを占められた小説。小説中では「アリ」と結論が出されますが、しかし最後、そのアンドロイドの美女を乗せた船は嵐に遭い、その美女ともども沈んだと語られます。ちょいとチキンな結末。

私はどうなんだろ?だいたい「アンドロイド」だからって排斥するのもちょっと違うような気もする。(もちろん彼らは火星から逃亡してきたという処分に対するもっともな理由があるけれど)
もしアンドロイドの理想の女性が現れたら、私は彼女を伴侶とするかな。伴侶としたいとは思います(それは逆に私の思慮が浅いせいかもしれないけど)。

また、寺山的な虚構論ですね。「作り変えることのできない過去なんてない」。それはまた記憶操作とも通じます。

「人は脳内の虚構を生きる」。近年はそう考えてます。脳内の虚構、脳外の事実、他者の脳内の虚構、そういったものがないまぜになった物を人は自分の脳内に構築し、それを『現実』と呼んで、それに沿って生きているのではないかと。
『虚構』と『現実』なんてない、それは『虚構と呼ばれる虚構』と『現実と呼ばれる虚構』があるに過ぎないのではと。昨今の『歴史修正主義』の跋扈を見るにつけ。

孫引きですが寺山の言葉に「歴史について語るとき、事実などはどうでもよい。問題は伝承するときに守られる真実の内容である。」というのもあるそうです。
この虚実の入れ子模様、けっきょくは「それは信じるに足るほど『うつくしいもの』であるか」で考えていきたいなとは思っていますが。

いや、ややこしい事はあまりわかりません。閑話休題。

今回、印象的だったのは、光り物です。衣装や持ち道具がLEDで光ったり、レーザーポインターをうまく使ったり。ここらへんの光り物も今どきは色々進歩していて扱いやすくなってるのかなと思います。
時節柄か衣装もマスク姿でしたが、ペルシャの踊り子さんみたいって言えばいいのかな?(私はゲームの『ニーア・オートマタ』のオペレーターさんみたいと思ったのですが)よいものです。

そして何よりも、今回ほんとうに、お芝居が「五臓六腑にしみわたる」感触がしました。そこまで自分が干からびていたのかなって。
昨今の状況ですし、正直体調もメンタルもあまりよくないので、ライブや観劇もほとんど行ってないのですが。久しぶりに観劇して、そのお芝居がこれほどまで自分にしみわたる物かと驚きました。ほんと、それだけ自分が干からびていたんだなって。

そして、それは、やはり「本物の人間」によって与えられるものなんだなって。いや、「アンドロイド」とか「人間」とか構やしないんだ、それを与えてくれるものが、私にとって「本物」なんだって思います。

ちょいとお手数をおかけしましたが、とても楽しみました。
久々に生きている感じがしたといっても大げさじゃないかもしれない。

万有引力さんの公演では、公演のときに席に置かれたリーフレットに次回公演の案内がある物でしたが、今回も去年7月の『疱瘡譚』&『眼球譚』のときと同じく次回公演の案内はありませんでした。
次回公演の案内がないのは残念ですが、楽しみに待っていましょう。

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