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2020/10/08

高野秀行『謎のアジア納豆』

『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』(高野秀行:著 新潮社:刊 Kindle版)
読了。「辺境ライター」、高野秀行さんのアジアにおける納豆についての見聞記です。
簡単に感想など。

納豆。不思議な食べ物だと思います。あたしは西の方の故郷にいるころ、納豆が食べられませんでした。しかし上京してしばらくたったある日、納豆を食べる仲間の様子を見て、自分でもちょっと興味を持って、スーパーで納豆を買ってみました。そしてそれまで食べられなかった納豆を食べられました。そしてそのことに自分で驚きました。食べ物を食べられる・食べられないってのはその土地の空気にもよるのかなと思いました。いや、貧乏暮らしでは納豆が食べられるか食べられないかはかなりQOLに関わってくるとは思いますが。インスタントラーメンより飯に納豆かけて食う方がコストは同じくらいではるかに体に良いでしょうし。
というわけで、納豆ってのは自分の中ではちょっと不思議な食べ物にカテゴライズされているのだけど。

そして、納豆ってのは日本独自の食べ物だと思っていました。そう思っている人は多いと思うのだけど。昔、韓国の人に「納豆食べられるんですか。すごいですね」って言ってしまったことがあります。本書では詳しくは紹介されてないですが、韓国にも納豆はあるようで(赤面)。

納豆を日本独自の食べ物と思い込みがちなのは「中華」に納豆がないせいかなと思います。日本でポピュラーな食材で、中華に似たような食材がないなら、それは日本独自な食材ではないかと思いこんじゃうんじゃないかと。
ただ、本書によると中国にも納豆はあるようです。ただ、メインストリームの食材ではなくて、「辺境」の食材とか。そう、本書で高野さんは納豆を「辺境食」と定義づけていらっしゃいます。

さて、本書の目次ですが。

プロローグ 日本は納豆後進国なのか?
第一章 納豆は外国のソウルフードだった!? チェンマイ/タイ
第二章 納豆とは何か
第三章 山のニューヨークの味噌納豆 チェントゥン/ミャンマー
第四章 火花を散らす納豆ナショナリズム タウンジー/ミャンマー
第五章 幻の竹納豆を追え! ミッチーナ/ミャンマー
第六章 アジア納豆は日本の納豆と同じなのか、ちがうのか
第七章 日本で『アジア納豆』はできるのか 長野県飯田市
第八章 女王陛下の納豆護衛隊 パッタリ/ネパール
第九章 日本納豆の起源を探る 秋田県南部
第十章 元・首狩り族の納豆汁 ナガ山地/ミャンマー
第十一章 味噌民族納豆民族 中国湖南省
第十二章 謎の雪納豆 岩手県西和賀町
第十三章 納豆の起源
エピローグ 手前納豆を超えて
謝辞
参考文献

となっています。アジアの納豆事情だけではなく、日本国内も取材されています。
そして納豆に関する高野さんの考察と高野さんによる実証実験も紹介されています。

紙版の方は分からないのですが、Kindle版には口絵にカラー写真もたくさん収められていて楽しいです。

本書の冒頭に収められた地図によると高野さんの納豆行脚は中国南部の中国湖南省からインドシナ半島の根っ子を横切り、インドにぶつかる手前の内陸部まで続いています。

この「納豆文化圏」は他の地図によると沿岸部の「魚醤文化圏」さらに内陸部の「牧畜(乳製品)文化圏」の間隙を縫い、インドの「カレー文化圏」の手前で停まる形になってます。(あと中国には「味噌醤油文化圏」もあるのかなぁと思うのですが)。その間隙を縫う納豆文化圏。だから納豆は「辺境食」であるのでしょう。

その納豆文化圏を巡る高野さんの体験記、現地の人たちとの交流、そして様々な(おいしそうな)納豆料理。まさに「高野節」全開で楽しく読んでいくことができました。
また、海外だけではなく、日本国内でも高野さんの納豆紀行は繰り広げられます。納豆メーカーへの取材、ローカル納豆の取材、そして自分でも納豆を作ってみる体験記。それもまた面白いです。

驚いたのは高野さん、海外にも愛犬を連れていくこともあるってこと。「納豆犬」だそうですが。旅慣れた方は愛犬連れで海外にも行っちゃうんだなぁって驚きました。

納豆ってのは大豆の加工食品としてはとてもプリミティブなもの。茹でた大豆を葉っぱか何かに包んで放置しておけばできるし。そこから高度化して味噌醤油文化に行って。そうも行かなかったのもまた納豆文化圏の辺境的な所かしら。
そして高野さんはそういう風に納豆は自然発生的にできたのではないか。だから日本では稲作の渡来前に日本原産の大豆の原種から納豆が作られていたのではないかと仮説を立て、実証実験なさってます。コンティキ号みたいです。ほんと、納豆はロマンです、

海外の納豆料理もおいしそう。日本みたいにご飯に単純に納豆をかけるようなものではなく、もっといろんな方法で調理しています。そういう意味では彼らの方がもっと高度な納豆文化を築いているのかもしれません。
そして、日本国内での納豆ことはじめのお話も面白かったです。

日本では納豆汁というと永谷園のインスタント味噌汁で普及しましたが、かつては日本では納豆は汁として食べるのが主流だったみたいです。永谷園でリバイバルしたけど。
日本の納豆の特徴として「粘りが強い」ってのもあるそうです。(あと、「工場で作っている」ってのも特徴みたい)
日本には「ねばねば食」信仰があると思うのですが。とろろ芋とかオクラとか、ねばねばした食品を「精がつく」ってありがたがりますが。あたしはねばねばしてない海外の納豆の方を食べてみたいです。ねばねばしてるのは服についたり口元についたりして始末があまりよろしくないと思いますし。あたしはそんなにねばねばしてなくてもいいかなと思うのですが。

そして「手前納豆」。これは「私んとこの納豆がいちばん!」ってみんな思ってること。「手前味噌」みたく。発酵食ってのは癖があって、それが郷愁を誘うのかなと思うのですが。「手前チーズ」とかあるかもしれませんね。

本書もほんと、他の高野さんの著作と同じくとても楽しく面白く読めました。

どうやら高野秀行さんには本書に続いて「アフリカ納豆」についての本もあるみたいで。インドの手前からいきなりアフリカ!?って思うのですが。またいつか読もうと思ってます。
高野さんも「辺境ライター」に続き、「納豆ライター」としてもご活躍されることを期待しております。

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