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2020/03/22

イメージフォーラム映像研究所2019年度卒業制作展

この週末はイメージフォーラム映像研究所2019年度卒業制作展を拝見してきました。
ここ数年は作品数の少なかったイメージフォーラム映像研究所の卒展ですが、今年はA~Hと全部で8プログラムもあります。
なにがあったのか事情は分からないのですが、とてもたくさんです。

今年も簡単な感想を書いてみます。ただ、ほんとわたしは、こういう映像作品の感想を書くほどのスキルは持ってない者ですけど。
見た順番に書いていきます。
なお、作品タイトル等はイメージフォーラムさんのサイトのものによります。変更された作品もあるみたいです。

Aプログラム
『Bael』(酒巻海成 / 8分 / 2020年)
音楽も良かったし、画作りも上手いと思います。スタイリッシュでした。

『Demenz』(白水浩 / 6分 / 2020年)
薄れゆく記憶をテーマにした作品、かしら。いや、まだお若いのに。あたしなんてひどいものですよぉ。にじみゆく映像。

『TSUKURIME』(Ayako Tejima / 11分 / 2020年)
自分の目の病気をモチーフにした作品。実は私も加齢と不摂生が原因で、目の具合がだいぶ悪くなってて。映像を見るのがちょっと苦痛で、だから今回の卒展も行こうかどうしようか悩んだのですが。でも、卒展に行って、この作品に出会えてよかったです。私もそうありたいと思います。
自身の目の病気をモチーフにした作品だと萩原朔美さんの『目の中の水』シリーズを思い出します。

目の病気で気づかされたことが一つあって、それは、「他の人の見えてる世界と私の見えてる世界は違う」ってこと。ちょっと考えたらわかるような事ですが。でもやっとそれを「理解」したような。

『30歳の旅』(Johan Chang / 55分 / 2020年)
作者さんが30歳を迎えるのを機に、作者さんの周りの人たちに30歳の頃はどうだったかって訊くインタビューとイメージ映像を組み合わせた作品です。作者さんは台湾の方らしく、インタビューの相手は台湾の方や日本の方のようです。まぁ、普通のサラリーマン的な人はいらっしゃらないようですが。

私は30歳のころ、どうだったかな?ぼんやりとサラリーマンをしていましたが。それは今も変わらないけど。

Gプログラム
『ASMRISM』’前田大介 / 10分 / 2020年)
靴フェチ作品、かなぁ。靴に細い紐を通してゴソゴソいう音をさせたり。

『動物園 I/Zoo Ⅰ』(立川清志楼 / 22分 / 2020年)
この方の作品は去年の卒展で『24minutes』という作品を拝見しています。動物園の檻の一角に向けられたまま、フィクストのカメラ。24分間、夕暮れの日が傾いている様子がかすかにわかるって作品です。
今回も動物園の檻をゆっくり移動していくショット。そこにいるであろう動物を写そうとせず、それと無関係に動いていくカメラの目線。
そしてラストは短く反復していく映像で妙な躍動感を出しています。

『TOKYO INCIDENTS』’坂本裕司 / 17分 / 2020年)
風景、しかし、音楽がINCIDENTS-何か起きそうな空気を醸し出していて。不思議な緊張感。

『Smoke』(ジョイス・ラム / 10分 / 2020年)
最初のシーンはBBQらしきものを楽しむ人々。じつはそれは「どんと焼き」の様子で。村の人々が協力して大きな山車を作り、それを曳いて行って火をつけます。どんと焼き。そしてそのどんと焼きの残り火でみんなで持ち寄った思い思いの食材を焼いて楽しむ、と。
楽しそうなお祭りで、そしてこの国にこういう風景があるのだなと感じいれさせてくれる作品でした。

Hプログラム
『意味をもつ前に』(寺島万智 / 8分 / 2020年)
もう世間一般的には8ミリ映画なんて消えてしまっていますが。イメージフォーラムの卒展では8ミリ作品が見られる事もあります。本作も8ミリ作品でした。フィルムとか現像とかどうしてるのかしら?と思うのですが。モノクローム作品です。
上映後のお話によると今回が初めての8ミリ作品だそうです。

『きりむすぶ』(花房慎也 / 90分 / 2020年)
作品紹介に「好きな人を10年間撮り続けました。そしてついに結婚しました」とあったのですが。作品を見てびっくり。以前の卒展でも作品を2本拝見した方です。

その2本では、惚れたあるアングラ劇団の女優さんがいて、彼女をモデルにして撮っていたと。でも、振られるのが怖くて告白はしなかったと。しかし結局は彼女には嫌がられてしまい、もうモデルもお断りになってしまっていると。そういうトホホな流れだったのですが。でも「ついに結婚しました」とあるので、結局はその方とうまく結婚できたのか?羨ましいなぁ、と思ったのですが。でも作品を拝見してるとそれは違うくて。

つかこういう人間関係、よくこなせるなと思いました。作者さんも、ご出演も皆さんも。これがほんとだったら。だったら私はそういう相手と友達付き合いできない、結婚もできない、逃げ出して独りでいるって思いました。孤独に耐える方がいいなぁって。

本作はその女優さんを撮り始めたころの映像が4:3で、それから16:9になって、そういうところにも時間の経過を感じさせます。

Eプログラム
『差異と反復とコーヒー』(工藤雅 / 5分 / 2020年)
ドローイングアニメです。喫茶店の中をぐるぐる回る視線。出たり入ったりいろんなお客さんの様子。
レコード盤のようなぐるぐる。

『「IMAGE FOR LOVE」のつくり方』(田中情 / 20分 / 2020年)
これは劇映画です。ある映画を作ろうとする男のお話。メタな展開もします。

『Fences』(小林真楠 / 15分 / 2020年)
「柵」をモチーフにした作品です。様々な柵の様子の映像、そして作者さんの母親の?思い出話。ちょっと残酷な自然。

『The Ballad of Foreigners』(中島夏樹 / 32分 / 2020年)
作者さん、そして作者さんの母親が巡ったクルドの土地の風景、人々の言葉、思い出話。
クルドの人びと、少数民族。周辺の国々に抑圧された歴史、そしてその敵対関係を利用しようと援助を申し出て、味方として利用しようとする大国。しかし大国は自分の都合で身勝手に手を引き、クルドの人びとは無責任に放り出され、恨みをかった周辺国からさらにつらい目に遭わされていると。私はそう理解しているのですが。いや、私のクルドの知識はスティーブン・ハンターの冒険小説『クルドの暗殺者』くらいなのですが。

Cプログラム
『休日』(杉本洋樹 / 16分 / 2020年)
特にストーリーはない、日常的なショットの積み重ね。そして時々現れる、ハワイ旅行のイメージ。それは非日常かな。
音楽は無く、画像の緊張感でながれていきます。

『さめないで』(田野勝晴 / 3分 / 2020年)
淡色のドローイングアニメーション。ラストの歯磨きをする女の子もヨイです。

『忘れてないけど覚えていない。』(朴夢里佳 / 15分 / 2020年)
過去は現在を侵食する。点々の浸食。

『PATTERNS』(稲葉朋子 / 5分 / 2020年)
アニメです。切り抜かれた絵のアニメーション。なかなかにスタイリッシュです。ワニとシマウマの戦い。ここでもワニが死んじゃうのかな?って思いましたが(なんて時節ネタはあとから読み返すと何のことやらわからないんだろうな。笑)

『ユキちゃんとタマちゃん』(高橋幸大 / 32分 / 2020年)
こちらも劇映画仕立て。同棲しているカップル。そこにやって来る女の子。彼女が生理が来ないと告げるとぷいっと姿を消す男。いや、どうなんだろうね。そういう同棲経験とかもないけど。そういう関係はどうも苦手だけど。だからこの歳でも独りなんだろうけどさ。
クーラーがないふたりの暮らす部屋。今時クーラーがないというのも珍しいと思います。

Fプログラム
『父の声』(エルサムニー・ソフィー / 15分 / 2020年)
最初の映像、いったい何をモチーフにしてるんだろ?と思ったのですが。1972年に沖縄が本土復帰して。そして1978年に沖縄が米国式の右側通行から日本式の左側通行への切り替えをしたころのあるエピソードの映像でした。作者さんの父親はエジプトの方のようですが、その少し前に沖縄に移り住んでいらしたようです。その、切り替えの時の思い出話。目撃した事故。その「父の声」。

そしてその語りのバックには、当時の映像。これは沖縄のフィルムアーカイブを行っている組織の収蔵品の映像だそうです。ブルドーザーで押しつぶされて埋められていく品物、たぶん右側通行対応のヘッドライトとか、そういうものだと思いますが、そういう映像(今だと産廃処理はもっと厳しいでしょうし、リサイクルとか言われるんでしょうが)。船からぞろぞろと降りていく他県からの応援の白バイ警官さんたちの映像。告知のためのPRポスターの映像。

これも日本本土と沖縄の、決して良い事だけではない関係史の1ページなのかなぁと思います。

『まどろむ-風の波』(永井桃子 / 3分 / 2020年)
ドローイングアニメーションです。ふわふわした雲、ふわふわとした兎。ちょっと硬質も感じさせ。

『Dear Present Future』(藤井杏奈 / 60分 / 2020年)
作者さんは写真を学びにボストンに留学していたようですが。その留学時代の映像で構成された作品。いや、ふと気がついて驚愕したんですが、そんなにたくさん撮影してたのかぁって。作品は1時間ですが、その何倍もカメラを回していたのではないかと。息をするように、は大げさだろうけど、食事するぐらいには自然にいつもカメラを回していたのかなぁと。

作者さんのルームメイトはスリランカの方でしたか。結婚式の時に着るという民族衣装を着て見せていて。それでふと驚いたのですが、日本人であるはずの私は日本の民族衣装・着物は着れませんな。ましてや婚礼衣装となれば。そして日本の女性もほとんどは花嫁衣裳なんて自力では着れませんな。そこを「うむむ…」と思いました。

Bプログラム
『動物園 Ⅱ/Zoo Ⅱ』(立川清志楼 / 7分 / 2020年)
こちらは「動」の世界に入っています。つか抽象的なうごめく映像で、「動物園」らしさはほぼ残ってないようですが。
ちなみに本作はイメージフォーラムさんのサイトの紹介では「アニメーション」となってます。確かにここまでくると「アニメーション」なのかなぁ。

『DOGHEAD』(Momo Takenoshita / 4分 / 2020年)
アニメーションです。ちょちバッドテイスト入ってるところが「三ツ星レストランの残飯」さんを連想させます。

『PUBLIC EYES TOKYO 2020』(内山尚久 / 10分 / 2020年)
今の東京、あちこちに設置された「防犯カメラ」の様子をフィーチャーした作品。ほんとにあるものです。たぶんこれらの防犯カメラの映像をたどって、私がこの日イメージフォーラムまでやってきた道のりもトレースできるんだろうなって思いました。

Dプログラム
『VORTEX』(Takamoto Yamauchi / 9分 / 2020年)
これもモノクローム8ミリ作品です。混沌とした、目まぐるしい、うごめく、イメージの奔流というタイプの作品。サイレント。

『無題』(金埈熙 / 30分 / 2020年)
自意識のこじらせ方がなんとなく自分に近しいなって感じさせる作品でした。
子供を見るのがお好きとか。私も公園で子どもが遊んでるのをぼんやり眺めているのが好きなのですが。『ライ麦畑でつかまえて』の「ライ麦畑の捕まえ係、そういうものに私はなりたいんです」ってのを連想します。

『赤い玉がない!』(山口健太 / 18分 / 2020年)
「赤い玉」というと、男の人が最後に出すアレかなと思ったのですが、違いました。作者さんの母親も出てきて、かなりファンキーです。
私も実の親とそういう関係だったらよかったかもしれないなと思いました。ただ苦手なままで終わりましたし、終わりそうですが。

*****

今回拝見して。ほんと作品数が一気に増えて嬉しかったです。どういう事情があったかは分かりませんが。

あと、気がついたのは、喫煙シーンが多いなってこと。このタバコのみがほぼボクメツされつつある現代社会において、喫煙率は有意に高そうな。私もたばこゼニに不自由しないくらいの収入で、体も壊してなければ喫煙を続けていたかったのですが。
新型コロナネタ(後年の私へ:このころ新型コロナというのが流行していて大変でした)の入った作品もあって、ずいぶん公開間際までこしらえていらしたのだなぁと。

それから、自分の歩く足を上から撮ったショットを使う作品もいくつかありました。この自分の歩く足のショットってのは実験映画のクリシェ的なもので、いろんな実験映画で見られます。面白いです。

話を脇で聞いていると、こちらがなんとなく見ていたショットも作者さんがいろいろ工夫して撮っていらしているのだなと気づかされました。私は「撮らない人」なんだなって、そういう思いもします。

という方向で、今年もイメフォの卒展、拝見できました。

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