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2018/11/06

高野秀行『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』

『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』(高野秀行:著 文藝春秋:刊)読了。
「辺境ライター」高野秀行さんの世界各地の珍食奇食に関する紀行エッセイです。

先日、「食フェス」ってのに行ってきました。広場にたくさんの露店が並んでいて、日本や世界の各地の料理が食べられるというイベント。

181106

そこで、仲間がアフリカのどこかの国のブースで買ってきたという焼いたイモ虫を持ってきました。後日改めてネットで調べるとモパネワームという物らしいのですが。

お酒が少々入っていたこともあり、食べてみました。中がぐちゅっとしてたり、妙な味がしたらダメだったかもしれませんが、けっこうもくもくと食べられました。ネットで煮干みたいというたとえを見かけましたが、食感はそんな感じかな。味もそう濃い方ではなかったかと。あとかすかに小エビのカラの風味がしました。キチン質って奴かしら?

ま、昆虫食としては初心者向きではあったのでしょうが、けっこう食べられるものだなと思いました。それで、その手のイカモノ食いにちょっと興味を持って。
で、フォローしている高野秀行さんのツイッターによると、高野秀行さんが経験してきたそういう世界の珍食奇食を取り上げた本が出ると知って、これは幸いと本書『辺境メシ』を買ってみました。

高野秀行さん、ファンです。以前はよく読んでいたのですが、近年はそういう本を読むことも少なくなってしまい、あまり読まなくなってしまっていたのですが。
辺境ライターの高野さんが紹介する、世界の辺境でのエピソード、とても楽しく読みました。

昔はこういう本を「いつかそういいう所にもいく機会があるのかなぁ」と思いながら読んでいましたが、近年は「こういうところに行く機会はないだろうけど、面白いなぁ」と感じながら読んでます。老いてますわ。

また、そういう辺境をじかに見てるぶん、氏の見識もまた、鋭いものがあります。ミャンマーのアウンサン・スーチーが、ミャンマー民主化のホープと世界に思われていたころに読んだ氏のミャンマー旅行記に「ミャンマー問題の本質は少数民族問題である。その点においてミャンマー民主化の期待がかけられているアウンサン・スーチーも少数民族については差別的に見てる。だから氏がミャンマーの政権を取ってもそれは変わらない」と書いていらっしゃいました。スーチーが政権の座についたその後の展開は氏の分析通りになってしまいました…。

という事で、久しぶりに高野秀行さんの本です。

本書のカバー範囲はアフリカ、南アジア、東南アジア、東アジア、中東・ヨーロッパ、南米と、世界の辺境をほぼカバーしてます。日本もあります。

本文はモノクロですが、カラーの口絵があります。おいしそうに見えるものも、「うむむ…」と思うものも、キャプションに悶絶するものも。その、私が先日食べたモパネワームの写真もありました。
本文は1記事3ページくらい。複数記事にまたがる場合もあります。このボリューム感も手ごろです。

本書もほんと、楽しく読めました。いくつか気づいたこともあって。

まず、ちょう手間をかける料理。宴席なんかでの料理。作る間、待つ間、おしゃべりを楽しんだり。料理はそういう側面もあるんだなぁと思いました。
もっと上手なやりかがたあるだろうに、わざわざ昔ながらの手間をかけたり。これもある種の食の呪物性があるのかなぁと。
そして、昔ながらの手間をかけるからこそおいしいって物も。

そして珍食寄食ゆえの宿命でしょうか。「精がつく」って話も出てきます。そういう現地でもゲテモノ扱い、おいしくないもの扱い、でも、「精がつく」って食べられてる食材。
それはちょっとさみしいなと思いました。楽しく読めるのはやっぱり、「こんなもの食べるのか!?」ってビビるような食材を高野さんが「おいしい!」って紹介してる食べ物の話です。

でもやっぱりよくお食べになるなぁと思います。病気とか寄生虫とか、心配ないのでしょうか。いや、現地の人が食べてるぐらいだから、最低限の安全性はあるのだとは思いますが。
高野さんが危険とされる辺境に行こうとして止められた時、「そこで生活している人が居るなら、最低限の人が暮らしていけるルールはあるんじゃないか」って出かけていく話が昔読んだ高野さんの本にありました。食についてもそうかもしれないとは思うのですが。

でもやっぱり高野さんはとても運がいいか、危険を避ける能力がとても高いんじゃないかとは思います。私なんて命がいくつあっても足りないだろうなと思ったりもします。

中国の(人間の)胎盤餃子の話が出てきます。これについては高野さんが無理やりお願いして作ってみたという形っぽくて、さすがの中国人も引いていたようですが…。
人間の胎盤を食べる話というと、開高健のエッセイに胎盤を漬け込んだ酒ってのが出てきました。中国の「精のつくお酒」についてのエッセイだったと思いますが。人間の胎盤を漬け込んだ酒、ネズミの胎児を漬け込んだ酒、そして三種類の動物のペニスを漬け込んだ酒の三種を開高健が試飲するという話だったかと。
ただ、この胎盤餃子も味というより「精がつく」系のシロモノで、あまりおいしいものではないようですが。
そういえば魯迅の小説に、処刑された死刑囚の血を含ませた饅頭ってのが出てきたなぁと思いだしたり。

『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』。とても面白く読みました。おいしくて安全ぽいものは私も食べてみたいなと思いました。

本書もまたおススメ本であります。

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