万有公演『Q』
昨日は演劇実験室◎万有引力さんの第65回本公演『Q』を渋谷の某所で見てきました。
千秋楽になります。
演劇実験室◎万有引力さんは寺山修司率いる演劇実験室◎天井棧敷を寺山没後、劇団員だったJ・A・シーザーさんがその衣鉢を継いで設立した劇団です。
今回の公演、万有引力さんのウェブサイトの告知でも会場は「渋谷周辺某所」としか告知されず、なんともミステリアスな公演でした。チケットもあっという間に売り切れたそうです。たぶん、キャパの少ない場所での公演なんだろうなと察せられました。ライブハウスかギャラリーみたいな場所での公演かなぁと思いました。
それと同時に万有引力公式サイトに『Q』特設ページができ、9のつく日に「『Q』に関する劇上演のためのト書き」と称する文章が連載されました。それを見て公演場所や内容をあーでもないこーでもないと推察するのも面白かったです。
渋谷時代の天井棧敷館のおはなしが出て。どうも会場はその近辺、並木橋あたりの場所らしいと。当時のシーザーさんの写真が撮られてるのが神社みたいな場所だから、天井棧敷館近くの金王八幡宮さんかなぁと。ここは後述しますが、天井棧敷とも因縁の場所なのですが。
そしてそのうち公演場所も明かされるかなぁ…と思っていたのですが。最後まで公演場所は明かされず。近日届く書状にてと案内が出ました。
さて、数日して書状が届きました。しかしそれにも具体的な場所は書かれていなくて。QRコードが印刷されていて、公演初日にそれで行けるリンク先に集合場所が書かれていると。
今回、スマートフォンがあるといいというお話で。で、寺山修司のエッセイに出てきた「書簡演劇」みたいなことをやるのかなぁと思いました。
書簡演劇。たとえば「どこそこへ行き、だれそれに会え」みたいな書簡(スマートフォンならメールですが)が届いて、観客はそれに従い、劇を「体験」すると。そういう事をやるのかなぁと考えていたのですが。そうではなくて。
このQRコードを使った何らかの趣向があるみたいだと。そいや、QRコードってなにやら呪符みたいでもありますな。
そして公演初日、集合場所が判明し。
私が行くその当日を楽しみに待ちました。
当日の集合場所は並木橋の金王八幡宮さんでした。丘を上がっていったところにある八幡宮さん。これは公演の時にも解説がありましたが、状況劇場団員と天井棧敷団員のあの伝説の乱闘事件のとき、状況劇場側が公演を行っていた場所だそうです。
ここら辺のお話は私が覚えている限りでは、九條今日子さんの『回想・寺山修司 百年たったら帰っておいで』や小川太郎『寺山修司 その知られざる青春』、そして四谷シモン『人形作家』に書かれていたかと。四谷シモンさんは乱闘に参加した状況劇場側の人間としてお書きになっていました。天井棧敷館の喫茶部のガラス割ったの、シモンさんみたい。おっかない人として有名な寺山修司の母・はつさんが店主の喫茶部の…。
実際、現地に立ってみると、天井棧敷館とは指呼の間でありますゆえ、状況劇場の皆さんも頭に血を昇らせたまま天井棧敷館に乗り込んでいったんだろうなと、その様子が想像できます。そして渋谷警察署もすぐ近くです。
こうして乱闘騒ぎを起こした状況劇場と天井棧敷ですが。唐十郎と寺山修司のおふたりは、『佐川君からの手紙』の映画化でタッグを組んで準備してらしたそうです。しかし、寺山修司が死去して、それは叶わなくなってしまったと。
受付で招待状を示して地図を受け取ります。その地図は並木橋界隈の地図で、幾つかの地点に番号と、右にその番号に対応するQRコードが印刷されていました。
ややあって開演。台詞からすると1回60人ぐらいの公演です。となると今回5公演ですから、トータル300人でしょうか。普通のホール公演1回分くらいになるのかな。前売りが瞬殺だったのもわかります。
前説の方が根本豊さんでした。私が初めて行った万有公演は97年の『百年気球メトロポリス』なのですが。その前説も根元さんでした。そして根元さんはたくさんの万有公演で寺山修司のイコンを感じさせる役どころを演じてこられたので、嬉しかったです。
能楽堂で短いお芝居。あ、神社って、能楽堂があるところが多いから、それを使った公演ってのもいい趣向だなぁと。
そしてその短いお芝居で、地図の説明を受けます。この地図に振られている番号の場所は、渋谷時代の天井棧敷館ゆかりの場所であると。そして、対応するQRコードでその説明がされているウェブページへ飛べると。そして公演は地図内の某所で開かれると、それを探して欲しいと。ただ、開始前になると地図に書かれた最後のQRコードでその場所を教えてくれるし、もし迷子になったのなら招待状に添付された案内の番号に電話するとその場所を教えてくれると。
そして一時解散。
あちこち見て回るのも面白そうだったのですが、まず会場を探そうと思いました。地図に目印っぽいのがついているのに番号が書かれてないところがあったので、多分そこかなと。
あと、今回、暗すぎてQRコードが読めない場合があって。読み取るのに街灯のある場所、明るい場所を探してそこで読み取らなきゃいけない場合もありました。今回の趣向はとても面白くて大好きなのですが、それは次の機会があればご配慮頂きたいなと。
とりあえず会場はそこでどんぴしゃみたいで、迷わずたどり着けました。もともとはなんの場所なのかしら。スタジオみたいというか、作業所みたいというか。そんな場所でした。列を作って待機、シャッターが上がっていよいよ入場。
招待状には種類があるみたいだとツイッター情報で察せられましたが。招待状に書かれたマークが万有引力の天秤のと、天井棧敷の口元のと、2種類あるみたいです。観客はその万有組と桟敷組の二手に分かれて。
最初は二組とも、ひとつの会場に入ります。ここは舞台の三方に座席のあるオーソドックスなつくり。そこで繰り広げられる親指小僧と父親の物語。そして、万有組(私はこちらでした)は別の会場に移動します。
そこでは覗き劇のスペースでした。舞台は板で囲われてて、覗き穴からお芝居を見るようになってます。根がモタモタするタイプですから、あまり覗けはしなかったけど(笑)
そして最初のスペースに戻り。しかし桟敷組の姿はなく、どうやら別の場所に案内されて、別の出し物を見ているようです。
今回舞台となるある一族の解説など。そして棧敷組も戻ってきて全員揃い、観客の数人も参加してのパンと牛乳の食事シーンもありました。ほんと、このシーンを見るのはとても久しぶりかと。台詞は「森永牛乳でございますよ」と憶えていたのですが、今回、牛乳は雪印でした。あのころも雪印だったのかなぁ…。
そして桟敷組は先ほどの覗き芝居に案内されたようで、万有組は今度は別室に行って別のお芝居を。自慰機械(昔懐かしいハケ水車)にまたがるこの家の主人。このスペースはいくつか椅子が舞台を向かずに置かれてあっりました。
どうも演目には差し替えがあるらしく。このスペースでのお芝居も他の日時では違うかもしれません。いや、今回の棧敷組が観たのも違うかも。
そして再び全員が最初の部屋に入ってお芝居はクライマックスでした。
いつものように役者さんが全員はけ、客電がついて、終演。
しかしまぁ、めまぐるしくてちょっとついていけたかどうか。その自信はないのだけど。
とても面白かったです。できたら何回か見たかったなと。
そして、こういう趣向の演目もまた拝見したいけど、でも一方そうなると見られるお客さんの数が限られてしまうし、そこら辺、なんかいい解決策はないかなぁと思います。
今回、次回公演の告知はなかったのですが、12月20日、渋谷ラ・ママでのJ・A・シーザーさんのコンサートで何か告知があるかなぁと。
で、帰りにラ・ママでシーザーコンサートの前売りを購入して帰宅しました。
今回の渋谷天井棧敷館周囲のゆかりの場所の解説、できたら万有引力さんのウェブサイトでずっと公開しておいてほしいです。また再訪した時にでもゆっくり回れたらなと。
渋谷はちょうアウェーですけど…
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