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2017/05/01

「萩原朔美作品集」@イメージフォーラムフェスティバル

ゴールデンウィークが始まり、そして例年のように実験映画の祭典「イメージフォーラムフェスティバル」も始まりました。もう昔みたいにフリーパス券を買って全プログラム制覇!なんて気力はありませんが、ぼちぼち見ていこうかなと。んで、今回楽しみだったのは、萩原朔美さんの特集プログラムがあったこと。

萩原朔美さんの作品を拝見するきっかけになったのは、もう解散してしまったけど、ある会の仲間だった、かわなかのぶひろ先生の「映像書簡」シリーズでした。「映像書簡」というのはかわなか先生と萩原朔美さんの映像を使った文通シリーズです。この影響を受けたのが寺山修司と谷川俊太郎との『ビデオレター」シリーズであったそうです。

私は寺山修司ファンなのですが、のちに萩原朔美さんもまた寺山修司に縁の深い方と知って。朔美さんは寺山修司率いる演劇実験室◎天井桟敷の初期に最初は美少年役として入団し、のちに演出をお勤めになったとか。のちにそのころを語った作品『思い出のなかの寺山修司』も拝読しました。

そういうことで、萩原朔美さん関係のイベントもたまに行くようになりました。展覧会とか朗読劇とか上映会とか。そして今回イメージフォーラムフェスティバルで特集上映があると知って、いそいそと出かけることにしました。

今回の萩原朔美作品集はイメージフォーラム3階のスペースでありました。全4プログラム。X1~X4まで。こんなにたくさんいっぺんに朔美さんの映像作品を拝見する機会は初めてです。

29日の土曜日にX1~X3まで、そして30日の日曜日にX4を拝見しました。

X1は「時間を生け捕る」というテーマで。『TIME』の上映がありました。これは一個の林檎を1日1枚1年365日撮った映像をつなげて動画にしたもの。最初はみずみずしい林檎が、少しづつ朽ちて行き、そして黒く、小さくしぼんだ姿になるまで。
面白いのは林檎の真ん中に凹みができ、そこにカビが生え、いいアクセントになってること。天工かなと。

『KIRI』もありました。これは霧がゆっくりと晴れていって、山が姿を表す様子をフィクストの長回しで撮った作品。これは以前の上映会でも拝見したのですが、この霧が晴れていく様子が撮影できたのは偶然だとか。これもまた天工であります。
この、霧が晴れていくのがぱっと見で知覚できるかできないかの狭間でそういうのって面白いです。

先日、萩原朔美さんのトークショーで御自身の作品について「定点観測」という言葉があって、あ、そうか、そうだよなぁって思ったのですが、その「定点観測」な作品たちでした。

X2が「映画からキラリズムへ」という副題で。これは朔美さんのもうひとつの興味の対象、光のまたたき、ゆらぎ、ちらつき、といったものに対する思弁的エッセイ的映像作品たち。「キラリズム」とか。そう、映画とは光のゆらぎであるのか、と。

X3は「映像の思考回路」として、思弁的な作品。『総ては本』という作品があって。「本」と「萩原朔美」という焼き印を朔美さんがあちこちに捺していくという作品です。あらゆるものを「萩原朔美」の「本」にするコンセプチュアルな作品かと。「え、ここに捺していいの?」と思うようなところにも捺していって、見ててはらはらしました。
空にも捺そうとするのは、寺山の「空には本」という言葉を思い出しますね。三上寛さんの歌にも出てくるフレーズです。「積もる話をしようよ あることないこと含めてさ 空には本 空には本~♪」。

X4は「毎日が冒険」として自己言及的な作品でした。朔美さんの母親、萩原葉子さんのことを語った作品がありました。萩原朔美さんは萩原朔太郎のお孫さんであるのですが、萩原葉子さんは萩原朔太郎の娘だった方です。

そして「目の中の水」シリーズ。朔美さんの片目のご病気をモチーフにしたシリーズ。朔美さんによる、寺山修司の朗読もありました。
このご病気のこと、あるトークショーで朔美さんが「これはネタになると思った」とおっしゃって驚きました。私だったら悲嘆にくれてグチグチするだろうなと思って。でも、今回上映された朔美さんの他の作品で「創作は悲嘆に飲み込まれないための最後の砦である」というような(正確にはそうじゃないと思います)言葉があって、ああ、そうだ、そうなんだって思いました。

今回、萩原朔美さんの作品を一度にたくさん拝見する機会があって、そのおかげでなんとなく、萩原朔美さんの感覚とか思考とか、そういうものの一端に触れられたかなぁと思います。僭越でありますが。そしてそれを自分の中にも持ちたい、持てたらいいなぁと思うのですが。ちょう僭越でありますが……
つか、朔美さんみたいなかっちょいいイケメンになりたかったなぁ、なんて(笑)

東京でのイメージフォーラムフェスティバルでの萩原朔美さんの上映会は3日と4日もあるそうです。朔美さんのティーチ・インのある回もあるそうです。おススメです。

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