イメージフォーラム映像研究所第40期卒業制作展
この前の土曜日はイメージフォーラム映像研究所第40期卒業制作展を見てきました。
イメージフォーラム映像研究所も40期。つい先だって30期と思ったのに、この歳になると時間の流れるのはあっという間ですな。
初めてイメージフォーラムの卒展に行ったのはいつかしら。もうだいぶ前、四谷三丁目時代からです。
あのころ、ある会に入っていて、イメージフォーラムの かわなかのぶひろ先生も会の仲間でした。その会の全国大会でカメラを回していらっしゃいました。
ある日、会の仲間が集まる新宿ゴールデン街の酒場で、イメージフォーラムでの、かわなか先生の作品の上映会の案内のチラシが置かれてました。かわなか先生にはお世話になってますし、どれどれと思って見に行くことにしました。
正直言って、どうせ退屈すると思ってました。実験映画とかよくわからないし。ほんと、お付き合いと思ってました。
でも、それは裏切られました。面白く拝見しました。そしてそれがとても不思議でした。はらはらドキドキのストーリーでもなく、スペクタクルでもなく、美男美女が出るわけでもなく。日常的に感じられる風景を構成した作品でしたが、それでもなんだか見飽きることがなく、見てました。
たぶん、モンタージュの「呼吸」とでもいったものが絶妙なのでしょう。もちろんその「呼吸」は一般的な劇映画なんかでも存在するでしょうし、劇映画でも、それが面白くなるかならないかに大きく影響してくるのでしょうが。ただ、劇映画では他の要素も大きく関わってくるでしょうし、それがあまり表立ってはこないのでしょうが。
ま、という方向で、実験映画の世界をもっと見たいなと思って、それからイメージフォーラムに通うようになりました。
今の渋谷のイメージフォーラムはミニシアターの部分が大きいですが、四谷三丁目時代のイメージフォーラムは、映像作家を教える映像研究所、そしてダゲレオ出版、そして週末には実験映画の上映会を開催していました。
あのころは毎週のように実験映画の上映会に足しげく通い、その流れで映像研究所の卒展も拝見するようになりました。卒展に行くのはたぶんもう20年は超えてると思います。
もちろん全部見てたわけじゃありませんし、見に行かなかった年もあると思います。だいたい昔はgとかhとかiプログラムまであって、全部見ようとするのは大変でしたし、挫折することも多かったです。
ま、そうやってきたのですが。最近、萩原朔美さんの作品展やトークショーに行って、朔美さんのおっしゃる「定点観測」の世界に興味を持ちました。私の中で、図らずも、ここまで来て、イメフォの卒展は自分にとっての「定点観測」のネタになったなぁと。やっぱり時代によっての違いとか少しは見えたりしてます。
ただやっぱり映像についてもきちんと勉強はしてなかったので、それについて語ることは拙いですが。
そういった方向で今年も卒展の感想を書いてみます。
お気に触ったらごめんなさい。
今回のイメージフォーラム卒展はA・Bの2プログラムで、8作品でした。
今回、上映終了後に作者さんのご挨拶がありました。「作者は『作品』で語るべきで、他に言葉は無用」って考え方があるのもわかりますが、こういうのがあると作品の理解が深まります。ありがたいです。来年以降もやってほしいなと。
上映はぜんぶプロジェクター上映だったかな。さすがのイメージフォーラムでももう8ミリはないのかなぁと。
『終』(八木 圭/6分)
ブリーフいっちょで風呂場で手首を切って自殺しようとする男。激しく切り替えられ、RGB強調される画面の真ん中に浮かぶ「終」の文字。
作者さんのお話によるとイメージフォーラムというと裸と自殺というイメージなのでこういうのを作ったというお話です。
ただもう近年は裸も自殺(自傷)もあまり卒展では見かけません。もちろん全作品チェックしてはいないので、拝見してない作品にはあったかもしれませんが。フリチンを最後に見たのは何年前かなぁ。自傷シーンがある作品もだいぶ長いこと見てません。自殺した祖父をモチーフにした作品は近年拝見してますが…。
そいや包丁を振り回す作品は卒展で拝見したことがあって、それを思い出しました。
「終」の文字が出るのも確か数年前のイメージフォーラムフェスティバルで拝見した萩原朔美さんの作品にあったかと。いろんな風景の映像に「終」の文字をかぶせるの。(勘違いだったらごめんなさい)
『color for you-blue-』(塩田浩余/3分)
幅広の絵筆で描かれたような鮮やかなイラストのアニメーション。
ストーリーは特になく、イメージ的なものかな。きれいでした。
『タマゴ島の港で』(小曽根一輝/6分)
無言劇ですが、こちらはストーリーのある一編。
タマゴたちの暮らす島、その島からは時おり貨物船でタマゴたちが出荷されていくみたい。
母子ふたり暮しのタマゴの家族。ある日、母親に召集が下り、出荷されていくと。
そういうお話。
この作品は作者さんが考えているタマゴたちのお話しのスピンアウトだそうです。
ひとつの大きな世界を創造し、その細部の物語を描いていく、そういうのっていいなと思います。わたしもそういうの作ってみたいのですが。
『Filtration』(向井悠人/16分)
色も形もぼやけた映像で構成された抽象的な作品。最後、画面はほぼ乳白色になっていくのですが。ふと、「人間が死んでいく時に見る風景はこんなのかなぁ」と思ったり。
『スキヤキ』(上田周吾/6分)
スマートフォンネタのアニメーションです。上映後のお話しによるとタイトルは坂本九の『上を向いて歩こう』の海外でのタイトル『スキヤキ』からとったようです。まさにスマホから顔を上げて「上を向いて歩こう」かなと。
まぁほんとにこのスマホブームの猖獗っぷり。スマホは世界に繋がっているというけど、それは逆で、スマホによって自分が快とする狭く閉じた世界にいつでも没入できるツールで。ま、「島宇宙化」ってやつですか。
『after image』(木村遊/3分)
画像をさまざまに加工し、抽象化した映像で構成された作品。上映後のお話しによるともとはスマホで撮った映像だったかしら。
ふと思ったのだけど。フィルム時代はこういう映像はフィルムをさまざまに加工したりして作っていたのだけど、デジタル時代はどうなっていくのかなぁと。
『夜の蟻』(チン・ユウピン/18分)
モノクロームのスチル写真で構成されたスタイリッシュな作品。
3つの風景。引っ越し、デート、仲間たちとの飲み会。その合間にカラーのスクランブル交差点の風景が挟み込まれます。
外国の方にとって、スクランブル交差点は観光場所になってるって話を思い出しました。外国にはあまりないのかしら。
『AYA』(上田雄太/20分)
雪の積もる山間の集落。そこにやってきた女性と、そこで居ぬきの物件に入居してお店を始めようとする男、のお話。ドラマかなぁと思ったのですが、ドラマというよりなにか別方向に進んでいって。女性の方の、役としての台詞か、それともその女優さん自身の言葉か、わからないようなものが出てきて。なんかそのあわいが『新塾泥棒日記』のラストのヒロイン役のシーンを思い出させて、面白かったです。
上映会終了後の作者さんのお話によると、最初はドラマを撮るつもりだったのが、撮ってるうちに方向転換してきて、女優さんご自身のことを語るような場面も入れたそうです。そういうのがこの面白い感じになってくれたのだなと。
雪の積もる中を女優さんが一枚の大きな布と戯れて舞うシーンもあるのですが。それも雪に足をとられるようで軽やかというよりどこかたどたどしく、荒げた息も音声に入っていて、それもまた興趣となっていました。
雪に埋もれた山間の集落を舞台にしたイメフォの卒展作というと、数年前、ミュージシャンの双葉双一さんが主人公だった作品を思い出します。
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という方向で、今年もイメフォの卒展、拝見しました。面白かったです。
今年は(セルフ)ドキュメンタリー系の作品がなかったなぁと。
卒展、セルフドキュメンタリー作品でけっこうあたりが多いです。
来年も見に行けるかなぁ。来年ぐらいならまだ見に行けるかな。ただ、もう、今まで見てきた回数ほどにはこれから見る事はできないなぁと思います。
いつまで見られるのかなぁ。それにしてもいつかは私の見る最後のイメフォ卒展ってのがあるのでしょうが。
ま……
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