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2016/06/13

万有公演『犬神』

座・高円寺で演劇実験室◎万有引力第62回本公演『呪術音楽劇 犬神-月と不死、魂の古代形式譚-』を観てきました。

万有の『犬神』は、もう十数年前になると思いますが、天王洲の劇場での公演を拝見しています。もうほとんど憶えてないのですが、あのころはタバコを吸っていて、劇場に喫煙コーナーもなくて、許可の紙をもらって劇場の外で吸ったのを憶えてます。ま、あそこらへんはなんか小じゃれてて、あまり好きな場所じゃありません。

去年急逝された「寺山修司の語り部」昭和精吾さんが、トークショーで犬神の一節を演じられたときのことを憶えてます。
昭和さんが犬神の仮面を着けた瞬間、別人のような風情に、なんかほんとに何かとり憑いたようになったのを、凄いって目を丸くしてみてました。これも、また見たかったな…。

あと、『【懺・】さよなら絶望先生』ってアニメのオープニング、アングラ芝居?のポスターネタがいくつかあるのですが、天井桟敷の『書を捨てよ町へ出よう』と『犬神』のポスターのパロディが使われていました。

組み替えたPCの調子がいまひとつだったので、悪戦苦闘しながら直していて、時間ギリギリになったので、タクシーに飛び乗って座・高円寺へ。
今回も万有独特の、お客さんを整理番号順に並べて開演直前に一気に客入れ、席は自由席方式ではなく、普通のお芝居のように座席指定制の普通の入場でした。万有でも最近はそっちのほうが普通になってますね。

今回の大道具は、左右に少し高い台、中央奥に扉。そして、それに囲まれた舞台中央部が縦長の、奥行きがたっぷりある感じです。
今回、黒塗りのお膳型の台が演出上もとてもいい小道具になってました。あちこちに配置したり、積み重ねたりして。頑丈にできてて、役者さんが飛び乗ったりしてました。
開演と同時に片付けられましたが、舞台奥左右にシーサーらしい絵。だから沖縄が舞台っぽく感じました。

入場するとその時点で、舞台の高いところ、たぶん普通のお芝居ではスタッフさんが使うだろうキャットウォークで、もう踊っている役者さんがいました。
その黒塗りのお膳、開演時には二列に並べられていて、まさに『犬神家の一族』のあの会食シーンみたいな感じです。

今回のお話は、犬神憑きの一族と後ろ指さされる少年と祖母の物語。母は自殺し、父は女と逃げ、残された少年と祖母。少年は誰にも遊んでもらえず、自分はかくれんぼの鬼なんだと夢想してその日々をまぎらわしています。

もちろん万有のお芝居ですから、そのストーリーラインにいろんなコーナー、歌と踊りがはさまれています。寺山が「詩劇」と呼んだスタイルかなぁ。

そして、あのラストは胸に刺さりました。

周囲に犬神筋だと噂されてきたこともあるのでしょうが、、周囲を呪い、不幸を生きてきた人間は、いざ幸福になる機会が巡ってきたとき、それを受け入れることができない。思わず破滅的な選択をしてしまう。
私はあれをそう読み取りました。そして、自分の人生に引き比べて、愕然としました。
私も自分が不幸であると思い、そして周囲を呪い、生きてきた部分があります。だから、たぶん、幸福になれるチャンスが来ても、それを受け入れられなくなってるのかもしれないなと。そこらへんがぐさりときました。

いや、それはまた、日本の心象のネガティブな面に普遍的にあるものかもしれないとも思いました。「幸せになるのは怖ろしい」こと。なんか、身を削って働くのが称揚されるブラック企業的な心性。自己否定をよしとされる部分。そういう意味で因習的かもしれないなと思ったり。それから日本人は早く離脱すべきかもとも思いますが。染みついてる。

今回、その少年役が女優さんでした。幼少時と青年時代、おふたりでした。その少年とそれと犬神でもある?老犬役の方が白い衣装。
そのほかの衣装は基本、黒紋付を羽織ったかたち。被り物がいろいろ独特で面白かったです。桶にひしゃくとか、熊手とか。
舞台奥の扉、いろんなものが現れて面白かったです。仏壇があるときもあったのだけど。天井桟敷の『犬神』のポスターだと真ん中にあるのが仏壇ですね。あ、そうなのかと。

今回、呪術的というか、おどろおどろしいというか、そういうのは、お話の本筋自体にはあまり感じられませんでした。もちろんJ・A・シーザーさんの音楽と踊りの世界はまさにそうなのだけど。先に書いたように、幸せになれない、「呪い」に自縄自縛された人の悲劇、と感じました。
しかしラスト、あのあっさりと語りで済まされた結末。普通のお芝居だったらいちばんの山場、クライマックスシーンとして描かれるのだろうけど。そこらへんが万有センスです。

あと、蝋燭に火を灯すシーンがいくつかあります。マッチの硫黄の匂いがかすかに漂ってくるのがいいです。こういう匂いの演出って面白いです。ドロドロ呪術系だったらお線香とかいいかもしれないなぁ。(匂いが残るのは劇場側が困るかしら?)

『犬神』、楽しみました。

演劇実験室◎万有引力の次の公演が12月に川崎で『愚者たちの機械学(仮)』だそうです。タイトルからすると万有らしい小コーナー集みたいになるのかなぁ。
あと来年3月に世田谷パブリックシアターで『身毒丸』です。前回の『身毒丸』から、白石征さんの寺山本『望郷のソネット-寺山修司の原風景』を拝読して、寺山修司と身毒丸の関係を知りましたので、再見したいと思ってました。ありがたいです。

両方とも、見に行けるといいなぁ…。

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