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2016/01/08

うめざわしゅん『パンティストッキングのような空の下』

『うめざわしゅん作品集成 パンティストッキングのような空の下』(うめざわしゅん:著 大田出版:刊)
読了。コミックスです。

「うめざわしゅん」のお名前はまったく存じ上げませんでした。だからもちろん本書が初めてのうめざわしゅんの作品なのですが。
ツイッターで本書のタイトルが流れてきて、「おぉ!」となって。それで興味を持って買ってみました。元ネタが三上寛さんだったので。

三上寛さんに「パンティストッキングのような空」という曲があります。三上寛さんらしい、シュールな歌詞にダークな情念をこめた曲だと思います。人生のやりきれなさ、かなしみがとても胸に届いて涙が出てくる、好きな曲です。

おいらが眺めた空は
パンティストッキングのように透き通ってはいたが
バーゲンセールの値札がついていて
ちり紙とも交換できなかったんだ

ほぼ絶対あの曲が元ネタなのだろうと。だから興味を持って買ってみました。ほんと、うめざわしゅんは存じ上げないのですが。買いに行った書店でも本書は平積みされていて、人気のあるお方のようであります。

本書の後書きによると過去15年間に描かれた単行本未収録作品から選ばれたアンソロジーのようです。目次によると本書の収録作は、

パンティストッキングのような空(前・後篇)
平成の大飢饉予告編
学級崩壊
渡辺くんのいる風景
いつ果てるとも知れぬ夏の日
未来世紀シブーヤ
メンデル
朝まだき(前・後篇)
唯一者たち(前・後篇)

です。

作品名を見ると三上寛さんの曲名が題名の元ネタになってるのは『パンティストッキングのような空』のほかに『平成の大飢饉予告編』があります。三上寛さんのは『昭和の大飢饉予告編』ですが。

愛だの平和だのぬけぬけと抜かしやがる
愛だなんてただ単にヤりゃ片付くもんだ
平和だなんてただ単に殺しゃ片付くもんだ
おまんこに指突っ込んでそのダラダラした指でVサイン作ってなんになる

って曲で、こちらも鬱屈したやりきれなさが伝わってきて好きです。(引用したも歌詞は2曲ともうろ覚えなので間違ってたらごめんなさい)

以下本書の感想を書いてみます。すこしネタバレもするかもしれませんから先に書いときますが、面白く拝読しました。
こういうきっかけで本書に出会えてよかったと思います。

(以下ネタバレゾーンにつき)

「パンティストッキングのような空」と「平成の大飢饉予告編」はシリーズになってます。ヒロシと三上君の物語。「パンティ~」は高校時代。「平成~」はそのあとのオッサン時代。
ちょっと足りなくてガタイのでっかい、デクノボーのヒロシ。ヒロシの頭の中はオマンコでいっぱい。クラスから孤立し、斜に構えてる三上君。

なんか息が詰まってくるような、どろっとした、遣り場のない、救いのない、閉塞したおはなしです。

高校のクラスのリーダー格の男。教師側ともやりあう、正義漢。しかし、裏では彼はいじめをやったり、彼についていかないヒロシと三上君を疎んじ、ヒロシをハメて退学に追い込み、それに憤ってそいつに殴りかかった三上君も退学になりそうで。

ま、正義の看板を掲げて仲間を率いてボス面をしてドヤりたいだけ、力を振るいたいだけの人物。まさに「愛だの平和だのぬけぬけと抜かしやがる」奴かと。

そういう表では正義の味方面、素晴らしいリーダー、しかしその実態は…、ってキャラクターをあぶりだしてくれて、いいと思いました。そういう人物、ありがちだと思いますし、世の中にも社会活動家の看板を掲げたそういう人物がちらほらと見受けられるみたいだし。

ヒロシはいつか「てぽどん」が落ちてくると思っていて、それにおびえています。しかしたぶん、それを内心では待ちわびてもいるんじゃないかと。そこらへんの機微はとてもよくわかります。っていうか、私もそういう風な気持ちである部分もあります。

ただやっぱりちょっとやり場がなくて、救いがなくて、こんな話ばっかりかなぁと思うと、ちょっとしんどくなったのですが。
次の「学級崩壊」でその閉塞した世界がどんがらがっしゃんと屋台崩しされて。

中盤はナンセンスというか、奇想というか、SFというか、そういう作品たちがメイン。
面白かったです。

そして「朝まだき」「唯一者たち」。これは最初の2作品と同じ、どろっとした、行き詰った、救われない、やるせない方向のお話なのですが。こちらはいい読後感がします。カタルシスがあります。

どこが違うのかな?不思議です。

本書に収められた作品たち、楽しみました。
面白かったです。

落ちてこないかな、てぽどん…

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