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2015/12/14

音楽劇『レミング』

昨日は池袋の東京芸術劇場プレイハウスで寺山修司原作の音楽劇『レミング~世界の涯まで連れてって~』を観てきました。寺山修司ということと、青葉市子さんご出演ということで。

『レミング』。寺山修司率いる演劇実験室◎天井桟敷最後の公演(初演ではありませんが)。その公演のあと、寺山修司死去により、天井桟敷は解散したのですが。
寺山修司元夫人で、寺山修司と離婚後も天井桟敷の制作として寺山修司の活動を支えてきた九條今日子さんの『回想 寺山修司』によると。『レミング』大阪公演のとき、病身で動けない寺山修司を東京に残して大阪へ公演のプロモーションに行った九條今日子さんと、寺山修司との電話での会話が、九條さんと寺山との最後の会話になったそうです。

また、寺山修司の本を作るために出版社に入り、そして、今は藤沢で遊行舎という劇団を主宰されている白石征さんの『望郷のソネット 寺山修司の原風景』には、寺山修司の葬儀のときに、劇団員さんたちが『レミング』の劇中歌を歌っていた様子が描かれていたと記憶しています。

そういう意味で『レミング』は観てみたいなぁと思っていた演目でした。

ただやっぱりなかなか動けなくて。お芝居も寺山修司没後、その衣鉢を継いで、天井桟敷のメンバーだったJ・A・シーザーが創立した演劇実験室◎万有引力のお芝居以外はなかなか観に行けていません。

ま、そこのところに青葉市子さんご出演の『レミング』があると知って。

青葉市子さんもファンです。2009年暮れだったかな、こちらも大ファンな日比谷カタンさんのライブの対バンで初めて拝見しました。そして翌年また日比谷さんの対バンで拝見してファンになって、手売りのアルバムも買いました。ただライブは最後に行ったのが数年前で、数回行ったきりなのですが。でも、新譜が出るとだいたいは買って、通勤のお供にヘビーローテで聴いてます。

そういう方向で、大ファンな寺山修司と青葉市子さんの組み合わせというちょう俺得なお芝居、観に行かなくてどうしますかってんで観に行くことにしました。

ただまぁほんと、万有引力以外のお芝居はほとんど見てなくて。だから、演出・スタッフさんもご出演の方も、青葉市子さん以外は麿赤兒さんがちょっと、あと宣伝美術の東學さんの作品を拝見した事はあるかなぁ、そのくらいしかわからないのですが…。ま、そういう奴の書いた感想ということで。

東京芸術劇場は何度か行ってますが。プレイハウスは初めてかな。でかい劇場です。
入場すると緞帳が下りていて。万有のお芝居ばっかり行ってると緞帳が下りたお芝居のほうが少し不思議な感じがしますです(笑)

ややあって開演。ベルとかはなかったかな。緞帳が下りたまま、「みんなが行ってしまったら~」と青葉市子さんの歌声が流れて。寺山修司の世界をうたう青葉市子さん。それだけで来てよかったと感涙です。

四畳半のアパート、そこに暮らす中華のコックの男ふたり。タロとジロ。あるとき突然、隣室との壁が消滅して…。というシュールな展開。
もうひとすじの「ストーリー」としては30年前の映画を生きる女優のおはなし。
このふた筋があるときは別々に、あるときは交じり合い。

しかしまぁそれも寺山芝居ですから、直接にストーリーがずんずん展開していって決着がつくとかいうようなオーソドックスなスタイルではありません。そういうオーソドックスなお芝居を「小説」とするなら、なんていうのかな、「詩」のような感じ。このふた筋のストーリーの間にもイメージ的なシーンがたくさん挟み込まれます。お芝居が進むにつれて謎が解き明かされるというより、更なる謎、というか迷宮?に迷い込んでいくといえばいいかなぁ。

入れ子模様。医者が患者になり、患者が医者になり。現実と思ったものが映画で、映画と思ったものが現実で。ここらへんも寺山修司を感じさせるものですね。『邪宗門』の鞍馬天狗のあやつりつられの入れ子模様の長台詞とかと連想します。

麿赤兒さんがタロの母親役でした。タロとジロの暮らす下宿の床下にいるという設定。これは寺山修司が渋谷のアパート、松風荘の2階に住んでいて、寺山の母親・はつが1階に住んでたというのが元ネタかなぁ。この指摘は私が気がついたのではなく、何かで読んだような記憶もあるのですが、思い出せないや…。
寺山修司の母親・はつは、とてもおっかない人だったようで。先日急逝された元天井桟敷団員・昭和精吾さんのトークショーでもよくお話がありました。

しかし、こういう老婆役を男性が演じるというのは、定番ぽくて。やっぱり女性が演じると生々しすぎるのかな。つか生まれ故郷でばってん荒川さんを小さいころから見て育った者としては、ごく自然に受け取るのだけど、そうでない人はどうかしら?
しかし麿赤兒さんもそのかなりの時間を生首状態でのご出演というのも珍しいんじゃないかなぁ。

その女優役が霧矢大夢さんとおっしゃる方で、パンフレットを拝見すると宝塚ご出身の方のようです。万有引力のお芝居にも宝塚出身の方がご出演のときもありましたし、宝塚と寺山修司って親和性があるのかもしれないなぁと。(パンフレットにもそういう対談がありましたし)
そして「暗黒の宝塚」といえば、寺山修司の側近だった高取英さんの月蝕歌劇団ですね。やっぱり親和性はあるかなと。

今回、寺山修司の中国趣味について気がつきました。いや、寺山修司には、『中国の不思議な役人』とか、映画『上海異人娼館』、それからこれは万有引力の演目だけど、寺山修司存命中に構想はあった『フー・マンチュー』とかあるのは知っていましたが。で、今更ながらに気がついたのですが。それは何がルーツなのかなぁ。もちろん70年代初頭は日中国交正常化があって、中国ブームでありましたが。

青葉市子さんはお芝居のシンボルというか、精霊というか、イコンというか、そういった役どころでした。「ストーリー」には直接には絡まないかたち。お歌もありましたし、(ダイアローグではない)モノローグの台詞もありました。歌声、素敵でした。そして、女優さんたちの発声と、歌い手としての青葉さんの発声と、ちょっと違うのが面白かったです。
Project Nyxさんの寺山芝居における黒色すみれさんの立ち位置と比べて考えてみるのも面白いかなぁと。Project Nyxさんのお芝居もあまり観に行けてないのですが…。

この『レミング』では、音楽は内橋和久さんとおっしゃる方が作っていらっしゃるようです。素敵でした。サントラも買いました。もちろん青葉市子さんの歌声も入ってますし。

モブシーンも素敵でした。音楽と群舞(と呼べるかどうかはよく分からないのですが)。足を踏み鳴らす音とかとても良かったです。

虚構と現実の入れ子、いや、虚構と現実じゃなくて、「『現実』と呼ばれる虚構」と「『虚構』と呼ばれる虚構」かもしれませんが。そういう世界観も好きですし、私にもしっくり来ます。

『レミング』、楽しみました。ほんと、観に行ってよかったと思います。
寺山芝居、いろんな劇団の、いろんな演出の、いろいろ観てみたいとは思っているのですが。天井桟敷オリジナルに近いのから、独自解釈のものまで、いろいろと観てみたいのですが。なかなか手が回りませぬが…

しかし、壁だらけの世界と壁のない世界、どっちのほうがいいのかな?

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