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2015/06/22

万有公演『夜叉ヶ池』

昨日は新宿のシアターブラッツさんで演劇実験室◎万有引力公演『幻想絵巻劇 夜叉ヶ池』を観てきました。万有引力の第60回本公演になるそうです。
夜叉ヶ池。泉鏡花の戯曲だそうですが、未読です。寺山修司と泉鏡花というと映画『草迷宮』を思い出しますが、『草迷宮』も未読です…。

そぼ降る五月雨の中、シアターブラッツさんへ。ブラッツさんではいちど万有の公演を観たことがあるかなぁ。
いつもの通り、お客さんを入り口に並ばせて、開演少し前に一気に客入れする方式でした。
シアターブラッツさんはスタジオ形式の劇場。小さいほうになるのかなぁ。そうともいえない広さだけど。万有さんのここ数回の公演場所と比べたら小さいほうかな。

いつものように客入れの段階で俳優女優陣が蠢いてます。いや、蠢いてない方もいらっしゃいましたが。

今回の大道具と衣装は生成りの白でした。舞台から一段高くなってコの字型の張り出しがあって。その張り出しの内側も客席になってました。数回見るならその張り出しの内側の席も面白いと思いました。
そして、この生成りに映像を写す演出をしていました。よかったです。

「島」と呼ぶんでしたっけ。木製のさまざまな高さの小さな台を場面場面で組み替えて、効果的に使っていました。これもまた万有お得意のテクニックでありますな。

今回は泉鏡花の戯曲に即していることもあるのでしょうが、「ストーリー」がしっかりとあって、追いやすかったです。
万有のお芝居はえてしてストーリーが追いにくくて、ストーリーメインでお芝居を見ようとするとややこしくなってついていけなくなるのですが。
だから、私は、万有のお芝居を基本的に一種の「レビュー」として見ています。つまり、歌と踊りを交えた寸劇集としてね。あるいは「小説」に対する「詩」というか。そういう見方をしているのですが。

さて、お話は(以下ネタバレするかもです)

いや、あらすじ自体はたとえばウィキペディアに紹介されている泉鏡花オリジナルの『夜叉ヶ池』のあらすじと同じみたいです。大きくは変更はされていないようです。

かつて、人々に災いをなしていた龍神を封じ込めた夜叉ヶ池。そこから流れるせせらぎの下流にある、龍神との約束のための鐘撞き堂。そこに住む鐘撞きの夫婦。旱魃に苦しむ村(夜叉ヶ池とそこから流れる川は水が豊かなのだけど、村人はその水には毒が含まれていると-偽薬効果が出るぐらいに?-信じていて、口にしようとはしません)。そこで繰り広げられる物語、でした。

私はこのお芝居に、ある種の虚構論というか、「迷信論」を感じました。いや、『迷信』といっても信じている当人には『ほんとう』でありますけど。それが問題でありますけど。
人はその『迷信』すら、自分の都合の良いように取捨選択し、改変し、その上で「信じて」しまうものなんだなぁと。そう思いました。
鐘撞き夫婦が従っている『迷信』、村人たちの『迷信』。それがぶつかり合う。
そして村人たちに『迷信』と断じられた鐘撞き夫婦の『迷信』のほうが『ほんとう』で。それが観客にもわかっていて、惨劇に突き進むのを眺めているしかない。

いや、今日の日本の、あるいは世界の状況には、この鐘撞き夫婦と村人の『迷信』の対立の写し絵があるような気がしてなりません。
そういう意味で本作は今日的な問題を提示しているのではないかと。

人が孤立化し、手前勝手な「自己幻想」に耽っているこの時代。それが個々人どころか国の政府さえその自分に都合のいい『他者』の視点を持ってない「自己幻想」にふけっている時代、それを逆照射しているのではないかと。

寺山修司は虚実のあわいの紊乱を人々に仕掛けていたと思っていますが。そしてそれに接しているうちに私は人はもともと虚実のあわいを生きているものではないかと考えるようになってきているのですが。本作はその、人々が持つ「虚実のメカニズム」を俯瞰して見せている部分があるのではないかと思いました。「その先」を考えるきっかけを与えてくれました。

いや、うまく説明できないのだけど。

例えば、この「村人の迷信」を「憲法九条」のアレゴリーとしてみるとどうかしら?「村人の都合」で勝手に解釈が変えられる「憲法九条」。その犠牲となる金撞き堂の夫婦。しかし、結局は「憲法九条」は「迷信」に過ぎず、金撞き堂の夫婦を犠牲にしたことにより、ほんとうの災厄が村人を襲う。そういう流れとして見たら?

そういう意味でこの『夜叉ヶ池』のストーリーはとても面白かったし、興味深かったです。

万有引力の次の公演は青森。それはちょっと行けないのだけど。そして次の東京での本公演は来年2月の『奴婢訓』だそうです。ちょっと先で少しさみしいけど、楽しみに待ちたいと思います。

アトリエ公演とかないかなぁ…。

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