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2014/05/20

月蝕歌劇団『疫病流行記』

万有引力『リア王』のお話しからひとつ日付を戻して。
5月17日の土曜日は南阿佐ヶ谷のひつじ座さんで、寺山修司系劇団のもうひとつの雄である月蝕歌劇団の『疫病流行記』を観てきました。『疫病流行記』は寺山修司の天井棧敷からの演目と記憶しています。初見かなと。

大昔、ほんと大昔、寺山修司の『ポケットに名言を』(角川文庫)って本を読みました。寺山修司の編んだ名言集です。その最後のほうに、自著からの引用コーナーがあったのですが、そこに『疫病流行記』からの台詞がふたつ収められていました。

「神を殺して、仏を売って、何の南があるものか。地獄。煉獄。水しぶき。歴史を書くのは右の手で、舵をとるのは左手だ!」
「あたしはあなたの病気です」

このふたつの台詞。
「神を殺して~」は威勢のいい啖呵みたいな台詞。どういうシチュでどういう口調で語られている台詞かはちっとも知らなかったのですが、時々口にしたりしてました。
「私はあなたの病気です」というのもなかなかオツな台詞でありますな。白磁のような美少女に面と向かって言われるとクラクラきてしまいそうです。
ふたつとも好きな台詞です。

しかしながら『疫病流行記』のお芝居じたいはずーっと、長きにわたり、未見でした。
それで月蝕がかけるということもあり、観てみようと思った次第。

といっても月蝕さんのお芝居はあまり観ていないのですが…

地下鉄丸の内線の南阿佐ヶ谷駅を出て、新宿方面にちょっと歩いた場所にひつじ座さんはあります。小ぶりなスタジオ形式の場所。阿佐ヶ谷~南阿佐ヶ谷にはこういう小さな劇場がぽつりぽつりとあるようです。他の街と比べても多いと思うのですが。詳しくは知らないのですが、阿佐ヶ谷には小さいけれど有名なダンスの劇場があったと聞きますから、それの流れなんでしょうか。それとも「阿佐ヶ谷文士」あたりの流れからなんでしょうか。

受付を済ませて入場。万有と同じく緞帳などはありません。天井棧敷からの伝統なのかなぁと。舞台の天井から柱時計がいくつかぶら下がってます。上手と下手に葬儀の案内の指矢印の道標。

開演前に劇団の女の子たちによるおみくじ(当たると生写真が貰えるみたい)、物販なんかがありました。そして開演。

南の島、街に広まっていく疫病、陸軍野戦病院跡に立つキャバレーの謎、島の娘と恋に落ちた日本軍兵士、島から脱出しようとするふたり、といった感じのお話しでした。
といってもいつもの寺山芝居らしく、ストーリーがずんずん進むのではなくて、寸劇が積み重なっていくような「物語」というよりは「詩」という感じのお芝居でした。

女の子たちがいっぱいでエガったです。

ろうそく踊りもものめずらしく。マッチを擦りながら口上言うの、硫黄の匂いが漂ってくるのがよいです。
そして、あのふたつの台詞がどう使われてるのかも。

物販がちょっと混んでたので演出ノートを買わずじまいだったのがちょっと残念。
コピーのホチキス綴じに生写真ぺたぺた貼り付けて、手作り感満載なパンフレットなのですが、主宰の高取英さんの驚くような薀蓄話がさり気にちりばめられていて、資料製高い品物であります。

あ、そうそう、劇中に生卵を食べるシーンがあるのですが。翌日拝見した演劇実験室◎万有引力の『リア王』にも同じように生卵を食べるシーンがありました。オリジナルの『疫病流行記』にあるシーンなのか、高取さんがお遊びで追加したシーンだったのか。両方見たあたしはニヤリ、のシーンでした。

北のない羅針盤。「吸いさしの煙草で北を指す時の北暗ければ望郷ならず」。

今回の公演には時事ネタとしてあの『美味しんぼ』騒動が入ってました。劇中の扱われ方とは違いますが、私はあれってほんと寺山的に読み解くと面白い、考えさせる事件だったと思ってます。

寺山は「“虚構”と“現実”があるのではない、“虚構っぽい虚構”と“現実っぽい虚構”があるのだ」というような事をよく書いていたと思いますが。
そう、人は、せんじ詰めれば、脳内の“虚構”を生きているのだと。しかし個人がてんでバラバラの“虚構”を生きれば、社会を作り、個人が他者と、あるいは“自然”と協調して生きていくことはできない。だから人は他人の“虚構”や動かし難い過去の“事実”や“自然法則”と自分の“虚構”を擦り合わせ、それを“現実”と呼んで生きている。
しかし、人は“脳内虚構”を生きるのが本義だから、時としてその擦り合わせができてない部分が生じると。そして人はその時、“脳内虚構”を最優先にしてしまうもの、だと。

私は“虚構”をdisるつもりはありません。例えば民族や国家や宗教のはじまりには、なべて超現実的な「神話」があります。物理法則さえぶっちぎったリアリティゼロのね。その“虚構”をルーツに置かないと、人は人たりえないのだろうなと。「人は虚構を生きる」。ま、それはそれとしていいのだけど、それは時として大きなトラブルを生んでしまうのだなと。

その考えはもともと寺山修司の本から生まれて、本田透や岸田秀の本で深まったものなのですが。
最近のSTAP細胞騒動、そして『美味しんぼ』騒動を見て、そういう思いを強くしました。

お芝居、楽しかったです。おにゃのこ、よかったです。
もっとこまめに月蝕さんも観劇できればいいのですが。

寺山修司系の劇団、演劇実験室◎万有引力、月蝕歌劇団、流山児事務所、「寺山の生き字引」白石征の遊行舎、池の下、などなど…。.
いろいろ見ておきたいのですが。

ま、先立つ物が、でありますが…

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