絵本『満月村』
数年前、京橋のフィルムセンターに映画を見に行ったとき、周辺をうろついた事があります。あの界隈には画廊がたくさんあるのですが。なんかちょっと面白そうな展覧会をやっていたので覗いてみました。
「満月村立風切館」というタイトルの、架空の村の絵画と建物のディオラマの展示。田舎風の、レトロな雰囲気を持つ建物たちのディオラマ。
私は高校時代まではプラモマニアでした。大学に入って、下宿暮らしを初めて、接着剤や塗料の臭いをぷんぷんさせて、置き場所もとるプラモデルは諦めてしまい、いつか模型作りも再開したいと思いつつ、ここまで来てしまったのですが。
そのディオラマたちは私の久しく眠っていた模型ゴコロに直撃しました。
素材的には段ボールとか厚紙とか紙粘土とか、ごく普通の身近にありそうな素材を使ってるみたいで、作りも素朴な感じなのですが。しかし、細部の作り込みが驚異的でした。
小学校の廊下にかけられた色とりどりのズック袋、手洗い場の雑巾。床屋さんのテーブルに置かれた将棋盤、映画館のお客さんの荷物。それぞれが細かく細かく作りこまれています。その素朴さと精緻さにいっぱつで魅了されてしまいました。
んで、また見たいなと思って。その展覧会のタイトル「満月村立風切館」で時々検索してたのですが、どうもネット情報では展覧会は見つからなくて。
それからしばらくして、ネットで検索しているうちに、どうやらこの模型たちをモチーフに下絵本が出たと知りました。
まぁただやっぱり「写真より実物が見たい」という気持ちのほうが強くて、しばらく手を出していませんでしたが。
で、ぐずぐずしていましたが、先日やっとその本書『満月村』を買ってみた次第です。
本書は4月から始まって、3月まで、13点のディオラマの写真たち。
四月は村立姫告天子分校
五月は山羊医院
六月はバーバー土星
七月は風切館
八月は時風屋・お多福や
九月は月光荘のお姉さん
十月は満月食堂
十一月は月見ヶ丘のわが家&わが家の応接間(2点)
十二月はたんぽぽ図書館
一月は霧多布座
二月は亀の湯
そして、三月はべっこう屋
それからそれぞれの建物にまつわる、1ページくらいの短いおはなしが添えられています。満月村、その村出身の、その村をもう去ってしまった、人物の回想のようであります。
(あの展覧会にあったディオラマがぜんぶ本書に入っているか、逆に本書に入っているディオラマがぜんぶ展示されていたかは記憶が定かではないのですが)
あと、巻頭に著者さんのご挨拶。そして途中に簡単な「満月村」のご紹介、つまり設定。
ほんとにこの、素朴さを持ちながら、細部まで驚異的に作りこまれた様子。
これが本書を通しても伝わってきます。
図書館のおびただしい量の本、煙草のパッケージ、食器類、野菜類。商品たち。
あの展覧会を思い返しながら拝見しました。
ただやっぱり、視線が固定された写真集より、自由に除きこめる、現物がまた見たいなぁと思っています。こういう写真集が出て、いつでも見られるのもとても嬉しいのですが。
そして、できたら、ですが、いつかこういうディオラマ、私もこしらえてみたいなぁと思ってます。
もともと不器用なたちだし、年をとってさらに手が動かなくなってきているのも自覚してはいるのですが。
ほんと、こういう世界に遊んでいたいものですよ。
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