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2013/04/01

再見『月はどっちに出ている』

京橋のフィルムセンターで、崔洋一監督自選作特集をやっていました。
3月30日、土曜日は、『月はどっちに出ている』の上映があったので、見てきました。
内藤陳・日本冒険小説協会会長ご出演という事で。

内藤陳会長は一昨年の暮に逝去され、日本冒険小説協会も去年3月の全国大会をもって解散しました。
日本冒険小説協会は毎年、3月の終わりか4月の頭の土曜日に年に一度の全国大会があったのですが。だから、もし今年も全国大会があったとすれば、その日はたぶん3月30日だったかなと。その、全国大会があったかもしれない日に会長ご出演作の上映がある、それも何かのご縁かなぁと思って見に行くことにしました。

私は不肖の元・日本冒険小説協会会員で、会長ご出演作でも未見のものがあるのですが。ただ、『月はどっちに出ている』は封切りで見てます。お話はほとんど忘れてしまったのですが、とても面白い映画だったという記憶はあって、だからもういちどスクリーンで見られる機会があって、そういう意味でも嬉しいことです。

いつもの通り上映時間ギリギリでフィルムセンターへ。まぁ一服するぐらいの時間はあるだろうと喫煙室に入ったのですが、そこにいらした方から、もうすぐ一杯で入場締め切るだろうという話を聞いて、煙草も吸わず上映室へ駆け上がりました。無事に入場できました。ただ、ほとんど席は一杯でしたが。最前列が空いていました。デブ的に奥の席に行くのは周りに迷惑なので、よかったなと。

入り口のところで崔洋一監督が入ってくるお客さんにご挨拶していらっしゃいました。なんかとてももったいない感じがしました。私は崔洋一監督のファンとはとても言えない、全作品見てないどころか、代表作とされているものでも未見のものがある、のですが

上映前に崔監督のご挨拶があって、それから上映。

映画『月はどっちに出ている』。岸谷五朗演じる在日コリアン(北朝鮮系?)のタクシー運転手を主人公に、ルビー・モレノ演じる酒場の女・コニーとの色恋をメインストーリーに、そしてキャラ立ちまくったタクシー会社の同僚や同胞、様々な人々の様々なエピソードがコメディタッチで描かれる作品です。
コミカルに描かれていますが、猥雑な、「人間臭い」登場人物たち。非コミュな私だったらとても付き合いきれないなぁと思ったりしますけど…。

主役の岸谷五朗、かっちょいいです。同胞の結婚式で女性を口説きまくったり、コニーを強引に口説き、転がり込むテクニック。そんないい加減なC調男かと思えば、思わぬところでガツンと気骨があったりして。あの、パンチドランカーの同僚に最後に会うシーン、良かったです。

内藤陳会長はタクシー会社のびっこの老整備工役です。冒険小説にはよく「うらぶれてはいるけど実は凄腕の~」ってキャラがよく出てきますが、整備の腕前もあまりよろしくないようです。

日本冒険小説協会公認酒場・深夜+1には、この映画のスチールの、赤ん坊を背負った会長の写真が飾ってありました。(今でもあるかな?今は深夜+1に顔をほとんど出さなくなってしまったので、よく憶えてはないけれど)
映画を見てしばらく経って、おはなしの筋もおぼろげになってしまい、あのショットがどの場面だったかも忘れてしまっていたのですが、今回再確認できて嬉しかったです。

今回、映画版の上映後にWOWWOW版の上映があったのですが。映画版を再編集したショート版かなぁと思っていたのですが。上映前の崔監督のお話によると、こちらが先というお話でした。
在日コリアンのタクシー運転手のフィリピーナの酒場女との色恋をメインに、様々なエピソードが語られる、というスタイルはほとんど同じなのですが(WOWWOW版のエピソードのほとんどが映画版でも出てきます)。ただ、配役が大きく違います。主人公のタクシー運転手役も岸谷五朗ではなく石橋凌でしたし。
ただ、ヒロイン役はルビー・モレノで変わらず。ルビー・モレノ、ショートカットが似合っててとてもキュートでした。あの役はルビー・モレノじゃないとって思います(他にフィリピン人の女優さんは知りませんが)。

『月はどっちに出ている』、いつごろの映画かも忘れてしまっていたのですが、WOWWOW版も映画版も1993年の製作とか。ちょうど20年前の作品でありました。
93年、バブルは弾けてしまったけど、まだ余熱ぐらいは残っていたころ、かなぁ。

まぁ、あの時代を「バブル」と呼べるぐらいに過去になって。主人公が勤めるタクシー会社の社長が土地がらみの儲け話にしくじってヤクザに乗り込まれるのも、今となって逆に「ああ、バブルが弾けたころよくあったんだろうなぁ」と概観できます。すべてを失ったタクシー会社社長の「ゴルフ場が欲しかったんだよ」という台詞が、あまり好きになれない、イレコめない人物だったのですが、その一言が心に残りました。
そういう、「今から見て」の視点というのも面白いかもしれません。

いや、実は、本作で唯一憶えていたエピソードがあって、たとえば会話に使ったり、ブログに書いたりもしてたんですが。今回改めて拝見して、それが記憶とだいぶ違うって驚きました。そういう記憶の改変もあるのだなぁと。

そしてこのネトウヨがかまびすしい現代。本作では在日朝鮮人、そしてフィリピーナというきわめてセンシティブな題材を取り上げていますが。
ネトウヨ的な反韓国・北朝鮮な心情は、どこか潔癖症的部分から出てると思うのですが。本作はその潔癖症的部分とは真逆な、カオシック、かつリアルなものを持っているのではと思います。コメディ仕立てだけど。

上映後、崔洋一監督のトークショーがありました。本作の裏話など。原作者の梁石日に会った時の印象、ルビー・モレノ演じた大阪弁のフィリピーナには元ネタがあったこと。あの送金方法も元ネタがあったそうです。
『月はどっちに出ている』に決まる前のタイトル原案のお話も。このタイトル、ほんとアイディアで素晴らしいと思いますが、そっちのタイトルだとヒットしたかしら?

トークショーもたっぷりでした。とても面白く拝見しました。
崔洋一監督、なんとなくおっかない方を想像していたのですが。
(現場だとがらっと違うのかしら)

『月はどっちに出ている』、また見られて嬉しかったし、WOWWOW版というのも初めて見られて嬉しかったです。崔洋一監督のトークショーも。
そして、スクリーンで内藤陳会長のお姿を見られた事が嬉しかったです。
全国大会があったかもしれない、その日に。

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