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2013/04/18

映画『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』

昨日はフィルムセンターで『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』という映画を観てきました。『特集・逝ける映画人を偲んで 2011-2012』というプログラムの1本です。
フィルムセンターでは時折『逝ける映画人を偲んで』というプログラムが組まれます。文字通り物故された映画人、役者さんも監督さん・スタッフさんも含めての追悼上映プログラムです。
本作『新宿アウトロー ぶっ飛ばせ』では、音楽の玉木宏樹さん、録音技師の橋本文雄さん、そしてご出演の原田芳雄さんと地井武男さんがその追悼の対象でした。

原田芳雄さん、好きです。あの独特の存在感、かっちょいいと思いますし、しびれます。また、私の好きな寺山修司が監督した映画、『田園に死す』『さらば箱舟』にもご出演され、あの独特の存在感を放っていたのが印象的でした。
ま、原田芳雄さん、好きだけど、大ファンという資格は私にはありませんが。だいたい余り映画自体見ないほうですし、代表作とされている作品も観てないのがあるし。ま、だから、ミーハー系のライトファンでありますが。

本作は1970年の日活映画。43年前の映画ですな。日活アクションとかその系譜になるのでしょうか。私はそこらへんよくわからないのですが。

映画は渡哲也演じる西神勇次の出所?シーンから始まります。そのすご腕っぷりから姓をもじって「死神」とあだ名された男。彼を拾うのが原田芳雄演じる松方直。エエトコのボンボンのようですが、今は実家を飛び出して酒場を経営していて。そして麻薬取引にも手を染めているようです。どうやら彼は少し前に麻薬の取引に失敗し、カネとブツを奪われ、彼と行動をともにしていた仲間も拉致されてしまったようです。それを取り戻すための助っ人として渡哲也に声をかけたようです。

西神の存在を知ったのは、彼の酒場のママさん、梶芽衣子演じる笑子から。拉致された松方の相棒は彼女の弟。そして彼女は西神の元恋人だったようですが。彼の元を去った元恋人に引き合わされて激怒する西神、しかし色々あって西神は松方に協力するようになります。

事情を知っていそうな奴らを次々問い詰めるふたり。松方が躊躇するような暴力行為を平然と行う西神。相手の指をへし折ったり。そうしながら黒幕に近づいて行きます。
また一方松方は、一方の取引相手である、沖雅也率いる暴走族にも、その横取りされた取引の支払いを迫られていて。
松方と西神、彼らのカネと麻薬と仲間を奪った黒幕、そして沖雅也の暴走族たち、みつどもえの結果はいかがあいなりまするか、というおはなしでした。

う~ん、おはなし自体はどうかなぁ。ジャンルでいえば和製ハードボイルド?あのころ量産されたおはなしかなぁと思います。肩肘張らず、ちょっとしたひまつぶしに気軽に映画館いってたころの映画、のような気がします。本作が作られた70年ともなると映画の斜陽化はだいぶ進んでいたとは思いますが。

っていうか、ストーリーそのものより、お話のデティールとか役者さんが良かったと思います。

渡哲也と原田芳雄が横浜で酒を呑むのが根岸家。もう現存していないそうですが、横浜の伝説的な居酒屋だそうです。私は「白いメリーさん」のドキュメンタリー、『ヨコハマメリー』で知ったのですが。24時間営業、客筋は水夫からヤクザ、警官まで、横浜という街を体現したような居酒屋だったそうです。セットかロケかは判らないのですが、店内の様子から、「NEGISHIYA」とローマ字で書かれた表の看板も映ってました。

原田芳雄がオーナーで、梶芽衣子がママさんを勤める酒場でかかるのは寺山修司作詞で浅川マキの歌う『かもめ』。寺山修司ファンとしてはニヤリ、でありました。
新宿の歩行者天国が舞台として登場します。調べてみると新宿で本格的に歩行者天国が始まったのはこの映画が作られた70年。最先端の風俗だったのでしょうか。
そして日吉ミミの『男と女のお話』も劇中かかります。この曲のヒットも70年だそうで、最新流行を取り入れているようです。

「日活コルト」とか言いますが、プロップガンはけっこう良いデキ。電着っぽいですし、やっぱり扱い方は現在の目から見るとアレですけど…。市販のモデルガンベースなんでしょうね。ちなみに最初の大きなモデルガン規制、「46年規制」がかかるのがこの翌年の71年になりますな。

役者さん、やっぱりみんな若いなぁと思います。

原田芳雄と渡哲也。原田芳雄に拾われる渡哲也、なんて画は思いもよりませんでした。後の「ボス」という雰囲気の渡哲也しか知らないので、拾う方にはなりこそすれ、拾われる方になるとは。原田芳雄はまだのちの圧倒的な存在感までは行ってないと感じましたが…。

暴走族のリーダー役の沖雅也、甘いマスクでかっちょよかったです。なんていえばいいのかな、甘いマスクだけど、アイドル系じゃない甘さ、でかっちょよかったです。
敵方のヤクザの黒幕のボディガード役の成田三樹夫。あのヌメっとした存在感もまた、すごかったです。

そして酒場のママ役の梶芽衣子がかわいかったです。調べてみると70年ごろは、「野良猫ロック」シリーズが始まったころで、まだ「女囚さそり」シリーズは始まってなかったころ。
髪を下した姿がとてもかわいらしかった。やっぱあたしって「ロリ・つり目・クーデレ好きの三重苦」(from『ハルシオン・ランチ』)だわ。

お色気シーンもありました。といってもブラとか、お尻とかぐらい。梶芽衣子と渡哲也のベッドシーンもありますが、乳首ももちろん見えない、おとなしいものでした。ま、あのころはこのくらいでも凄かったんでしょうかね。

ラストはなんかすっとぼけた感じ。『ルパン三世 カリオストロの城』のあのシーンの元ネタかなぁとかちょっと思ったけど。ま、よくあるシチュもしれないですが。あれは特撮かなぁ。それとも実機であんなことやったのかなぁ。

ま、ストーリーを突き詰めて考えるとちょっと「???」なシーンもあるんですけど。どうも原田芳雄は病気持ちっぽいですが、イ○ポみたいだし。でもそこらへんもあまり突っ込んで描かれないです。
それと梶芽衣子の弟の扱いが…。

地井武男さんはラストに出てくるヘリコプターのパイロット役だったそうです。それはちょっと気がつきませんでした。沖雅也率いる暴走族のひとりかなぁと思ってそっちに気をとられていたので…。このヘリコプターも透明なバブルキャノピーに桁を組んだテールブームの古めかしいので懐かしかったです。

うん、ほんと、当時の風俗や景色、そして役者さんたちの存在感が楽しい映画でありました。

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コメント

まだベトナムで戦争をやっていた時期ですから、
当時の横浜というと、本牧・根岸方向にハウスが
並び、大黒ふ頭には戦車が、そして上空は厚木
への艦載機が頻繁に通過する様な状況で、また、
歓楽街でなくとも(電車などでも)米兵の姿を
みかけていました。伊勢佐木町の奥には日活の
映画館があり、その上にはエアライフルのレンジ
がありました。これ、企業製品イメージの延長
だったのかも知れませんね。(今はもうありません。)

同時期に佐世保をみていた村上龍さんの小説からも
雰囲気をうかがうことが出来ると思います。
(横浜、横須賀、座間、みんな似た雰囲気でした。)

そんな中、大阪では万国博覧会が開かれました。
こちらは特需で潤った国としてのイメージ向上策
だったのでしょうね。

投稿: telepost | 2013/04/19 22:57

telepost様
あの頃の横浜は経験してみたかったです。
矢作俊彦も何か書いていたと思いますが。
(矢作俊彦はあまり読んでないけど)

投稿: BUFF | 2013/04/22 11:28

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