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2013/03/11

東郷隆『定吉七番の復活』

東郷隆『定吉七番の復活』(講談社)、読了。
四半世紀の時を越え、やれうれしやの定吉七番の復活です。
東郷隆さん、ほんとうに思い出深い方です。
(以下、私のおぼろげな記憶をネット情報で補強しつつ)

私が初めて東郷隆さんのお名前を見かけたのはいつだったかしら?『タミヤニュース』(田宮模型のPR誌)か『ホビージャパン』(模型雑誌)だと思うのだけど。
記憶は定かではないのだけど、とにかく30年以上前のことでした。

それから東郷さんは『コンバット☆マガジン』(ガン&ミリタリーのスーパーマガジン)の編集部に在籍していらして、ただ、私が『コンバット☆マガジン』を買い始めてからほぼ入れ違いに東郷さんは編集部を去られたように記憶しています。

東郷さんの『コンバット☆マガジン』編集部時代のお仕事の白眉は、(対ソ連のころの)アフガニスタン紛争真っ只中の、ムジャヒディーン(イスラムの「聖戦(ジハード)」を戦うイスラムの戦士たち)の後背地であったアフガニスタン-パキスタン国境地帯に潜入し、彼らが鹵獲した、当時噂になっていたソ連軍の新型小銃を取材されたこと。これはガンマニアの世界だけでなく、一般的な意味でも大スクープでした。この記事の載った『コンバット☆マガジン』誌は、後述する『戦場は僕らのオモチャ箱』を読んで興味を持って、バックナンバーで手に入れたと記憶しています。

そして『戦場は僕らのオモチャ箱』!これはその、東郷さんのアフガニスタン紛争に投入されたソ連軍の新型小銃探しを描いたルポルタージュ。その新型小銃の正体はAKシリーズの小口径高速弾化モデル、AK-74シリーズだったのだけど。(正確には東郷さんが見つけたのはAK-74のスタンダードタイプではなく、AK-74の分隊支援タイプの空挺モデル、長銃身、二脚つき、折り畳み銃床タイプの品物だったと記憶していますが。んで、その品物の折り畳み銃床のパーツは破損していたかと)

この、『戦場は僕らのオモチャ箱』という刺激的なタイトル、当時はまだまだ鉄のカーテンの向こうだったソ連の最新兵器が題材だったこと、そして何よりもその面白さで夢中になって読みました。
パキスタンの手作り銃器の街、ダラについて初めて知ったのも『戦場は僕らの~』でした。
イスラムの基礎知識、そして彼らにとって「聖戦(ジハード)」とは何かという解説もわかりやすくて面白く、それが私のイスラム理解の根っ子になってます。

ちなみにこれをヒントに船戸与一さんがお書きになったのが『血と夢』という冒険小説。
これも面白本でありますよ。

それから数年して、本屋さんの角川文庫売り場で東郷隆さんのお名前に再会しました。
それが定吉七番シリーズ第1作『定吉七は丁稚の番号』。本書は「ドクター・不好(プーハオ)」「オクトバシー・タコ焼娘」の2本の中篇を収めたもの。

夢中になって読みました。まさに「巻を措く能わず」状態。

「全関西人の食卓に納豆を!」のスローガンの元、暗躍する「NATTO」という関東の秘密結社、それに対する大阪商工会議所秘密会所所属の「殺しのライセンス」を持つ丁稚、定吉七番の活躍。ほんと、面白かったです。パロディ、そして薀蓄、私のツボにはまりまくるギャグセンス。

続く『ロッポンギから愛をこめて』『角のロワイヤル』『ゴールドういろう』『太閤殿下の定吉七番』、本屋さんで見かけると歓声を上げて購入し、夢中で読みました。
PCエンジンでゲーム化もされたらしいのですが、PCエンジンは持ってなかったのでそれは知らないのだけど。

『太閤殿下~』を読み終わって、新作を首を長くして待っていましたが、それは出ず。
そして、東郷隆さんは時代小説家への道へお進みになり。そちら大活躍され、大きい賞をいくつかお取りになったようです。そこらへんはあまり読んでないのですが、東郷隆さんの時代小説も面白かったと記憶しています。

それからまた数年して、こんどは講談社文庫から定吉七番シリーズが復刊される、旧角川文庫版はぜんぶ再刊され、新作も出る、という話を聞いて。
『定吉七は丁稚の番号』『ロッポンギから愛をこめて』復刊された2冊を買って(応援と云う意味と、それから角川文庫版は実家に置いてきたので)、続く復刊、そして新作をワクワクしながら待ったのですが。それで途切れてしまい、もちろん新作も出ませんでした。(改めてネットで調べると『ゴールドういろう』も講談社文庫版が存在するようですが、それの記憶はありません。出ていたのなら買ったはずとは思いますが。歳ですな)

まぁ、それはしょうがないものとも思いました。「定吉七番」シリーズはきわめてマニアックなシリーズじゃないかと思ってます。だから、熱く語ってしまう人は、思わず熱く語ってしまうから、このように(苦笑)。そしてその「熱い想い」を見た出版社の方が「これは売れるんじゃないか?」と思って出しても、マニア向け、少数の人が熱狂的にハマるような作品で、予想したよりもあまり売れなかったのではと思ってます。

ただほんと、ミリオタ(今は引退状態ですが)であり、ケンリックやハイアセンみたいな笑える冒険小説が大好きだった私にとっては、めちゃくちゃツボにはまる小説でありましたよ。
『角のロワイヤル』みたいだけど、バニーガール姿の女子高生が三脚つきMG42(34だったかも?)を軽井沢(清里だったかもしれない)で乱射するシーン、また読みたいなぁ。
(いや、ほんとうに読みたいのなら電子書籍版はまだ入手できるそうですが)

それからまたまた幾星霜、数年前ですが。こんどは雑誌に定吉七番の新作が連載されたという話を聞きました。おぉ、復活か!と喜んで。んで、単行本化を首をながぁ~くして待っていたのですが、音沙汰がどうもありません。
講談社文庫版の時から十数年、今はネットがありますから、検索してみると、どうも刊行が延び延びになってる様子。このままお蔵入りなのかなぁ…。と半ば諦めムードで待っていましたが。

んで、ある日、AMAZONで。またちょっと思い出して「定吉七番」で検索かけてみて。
「『定吉七番の復活』…在庫あり。」と表示されました。ちょっとぽかんとなって、このメッセージの意味するところを理解するまでちょっと時間がかかりました、そして意味がわかったとたん、ワォー!と歓声を上げました。

ほんと、四半世紀を経ての定吉七番シリーズの新作でありますよ。
いよっ!待ってました!!

(以下若干のネタバレゾーンにつき)

本書を手に取って。まず、四半世紀振りの新作という事で、時間的なものはどうなったんだろ、と思いましたが。

人物設定は前のまま、舞台だけ現代に移すのかなぁ。あるいはもう時代もあの頃のまんま。それもアリかと思います。、最近はバブルのころをノスタルジックに描くっちゅーのがあるみたいだし。
それともやっぱ時は流れ、今は初老となった定吉七番の活躍を描くのか。それか2代目定吉七番になって、先代は指令役とかでちょいと顔を出す程度か。それも時の流れちゅーたらそれもありかもとも。

んで、本書を読むとあらまびっくり、あるアクロバティックな設定により、当時のまんまの定吉七番が歳もとらず現代に甦る、というおはなしになってます。

まぁしかし、だからやっぱり、最初の方は読んでて少々つらかったのですが。リップ・ヴァン・ウィンクルとなってしまった定吉。そのさみしさ、辛さ。それはちょうど故郷を離れた自分の時間ともシンクロするものでありましたから。あの頃のいろいろが次第に喪われていく時間…。

時代も流れ。不倶戴天の敵同士だったはずのNATTOのメンバーも大阪商工会議所~で働いていたりします。これも東西冷戦終了後のスパイと一緒かなぁ。

でも、小説が中盤に入るとグイグイとあの頃の定吉七番に戻ってきます。エエ感じになってきます。
某物語キャラのパロキャラ、某実在キャラのパロキャラ、入り混じってドタバタと面白く。
また定吉だけでなく、旧作キャラの再登場に「待ってました!」と手を叩いたり。

また、ミリタリーに限らず、ありとあらゆる膨大な知識をバックにした薀蓄、短い文章にもこめられた衒学、東郷隆節とでも呼ぶべきもの、も健在でした。

まぁ後半~終盤あたりはもっとボリュームが欲しかったですが。5割増とは言わんまでも、2・3割増しぐらいはボリュームが欲しかった所ですが。
でもほんと、四半世紀ぶりの定吉七番の新作、とても楽しく読み終えることができました。

実は、本書を手に取る時、正直言ってちょっと不安でした。いや、小説の出来ではなくて、自分がなのですが。

どうもここ2・3年、小説が読めなくなっていて。
「待ってました!」で買った新作、面白いと聞いて買った小説本、買うには買っても、なかなか読み続けることができなくて、最初の方だけ読んだり、あるいはまったく手をつけずに、部屋の隅に詰まれている状態でした。しまいにはもう小説本自体ほとんど買わなくなってしまって。

しかし、心配は無用でした。『定吉七番の復活』、ほんとうにおもしろく読み終えられました。
この勢いでまた小説読めるようになるといいですが…。

ラストを読むと新作が出そうな感じもします。ほんと、出て欲しいのですが。
新作、出ないかなぁ。またシリーズが続いて欲しいのですが。

『定吉七番の復活』、大おススメです。そして、ご新規さんのためにも旧作の復刊も望むところであります。

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コメント

ども、超おひさです。
定吉セブンとは随分と懐かしいですね。
ゴールドういろうも含めて、全部読んでました。
(と言うか、とくに早川JAなどはほぼ初版読破。)

自分はミリオタではありませんが、サバゲでは
アタックできるスナイパーやってました。んで、
残業帰りにそのまま野戦に行って、スーツ姿に
借り物の92F一丁で参加して面白がられたことは
ありますよ。ちょうど、そんなシチュエーションかと。

投稿: telepost | 2013/04/17 10:27

telepost様
お久しぶりであります。
なんていうか、もう色々と懐かしがる年齢になっちまったなぁと。
新しい書き手も読まないといけないなぁと思いつつ…、です。

投稿: BUFF | 2013/04/17 17:54

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