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2013/03/26

イメージフォーラム映像研究所2012年度卒業制作展

この週末はイメージフォーラム映像研究所2012年度卒業制作展を拝見してきました。
去年は別の用事と重なって1プログラムしか拝見できなかったのですが、今年は無事にA~Dの4プログラムぜんぶ見ることができました。昔はgとかhとかぐらいまでプログラムがあって全部見ようと思うと大変だったのですが。

イメージフォーラム映像研究所の生徒さんたちの作品が、私のような部外者(完全には部外者ではないけれど、少なくともOBとかではありません)に公開される、初めての機会かと。(もちろんそれ以前に作品を発表されている方も少なくないのでしょうが)

副都心線で渋谷へ。東横直通化から初めて。ヒカリエのエスカレーターで地上へ。それだけですが、ヒカリエに入ったのは初めて。昔のプラネタリウムのよすがらしい設置物を見てちょっと苦笑。
そして、久しぶりのイメージフォーラム。

まぁ私は実験映画についてきちんと教育を受けた者ではありません。そして、実験映画について語る事は難しいです。特に特定のストーリーを持たない、抽象的な、映像を構成した作品については。それを語る言葉もその作品にいたる系譜の理解も乏しいですし。なので、書かなかった作品がつまらないという事ではなく、それを語る言葉が無かったという部分もあることをお含みおきください。ま、「言い訳」として、まずそういう言葉を置きます。
あとそれと、記憶違い、勘違いがあったら、それもごめんなさい。

Bプログラム
「目目朱朱」(
木村瞳/ビデオ/15分)
ある女性の、日常の様子をモチーフにした作品。そのタイトル通り、淡い朱色が基調になっていて。

「哀情」(田代眞梨/ビデオ/4分)
イメージで綴られるショートストーリー。愛が壊れるまで、かなぁ。
押しつぶされた口紅。

「Trip」(須賀川望美/ビデオ/8分)
旅の映像でしょうか?自然や車窓っぽい風景、それを様々に加工し、重ねあわせ、そういった映像で構成されている作品。なんとなく私も旅に出たいなぁと感じました。

「ありきたりのふつうの日々」(白岩義行/8ミリ/58分)
8ミリフィルムはもうとっくの昔に販売終了していると思いますが、イメフォの卒展にはまだ8ミリ作品があります。これもその1本。

映画の世界を志す青年の焦燥と高揚を、ぼそぼそとした独白と、自画像を中心としたイメージ映像で構成した作品です。映画青年、だからこそのフィルム撮り、8ミリではないかと。
映画界を目指し、しかし思うようにいけず、苦悩する姿。それは視点をちょっとずらせば「イタい」姿。もちろん作者さんはそこまで理解して、あえてこしらえてると思いますが。

いや、人の一生というのは、大なり小なり「自意識」との戦いかもしれません。それなくしては人は生きられないのだろうけど、またそれは人をさいなむものであり。うまく折り合いをつけて生きるべきなのでしょうが。この歳まで生きてきて、そんな感じがします。

それはたとえば映画という「アート」だけではなく、サラリーマンの世界の出世競争も同じじゃないかと思います。「特別な人間」であろうとする欲望、それはほとんどの人が大なり小なり持っているんじゃないかしら。
この作品の主人公の焦燥を、たとえば会社でなかなか出世できないサラリーマンの焦燥と置き換えても、同じような作品ができるのではと。

Aプログラム
『POPCORN HEAD』(板垣雅与/ビデオ/4分30秒)
今のシステムはどうか知らないのですが、イメージフォーラム付属映像研究所にはアニメーションコースがありました。アニメーションといっても普通の人が思い浮かべるような商業アニメ、セルアニメ(今はセルは使いませんが)ではなくて、いろんな手法を使ったアニメーションがほとんどでした、卒展を拝見すると。実写映像を使った(ストップモーションじゃないという意味で)「アニメーション」もあって、面白かったです。実写アニメ?
本作も実写ベースのアニメーションといった雰囲気の作品でした。

『妙な肉』(三ツ星レストランの残飯/ビデオ/7分)
元は食べ物がメインみたいですが、取り込んだ画像をグロテスクに加工したキャラが蠢くアニメーションでした。確かに食べ物ってちょっと悪趣味に加工するとめちゃくちゃグロテスクになりますな。
作者さんの「三ツ星レストランの残飯」という名義もユニーク。確かに今までの卒展の名義はほとんど(ペンネームの可能性もあるかもしれませんが)、人名でしたし。

『夜果てぬ粒子』(片倉大貴/ビデオ/15分)
こちらもイメージ映像に語りがぽつりぽつりと入るというかたち。スタイリッシュです。
ただ、こちらは映像自体の加工は(画質の調整とかはもちろんあるでしょうが)ほとんどないかたち。
映像の「呼吸」といったものがこういう作品では大切になってくるかと。そしてそれの巧者になれば、それは劇映画・商業映画でもとても役立つテクニックになるのかなぁと。

『membership cards』(小川亮/8ミリ→ビデオ/44分)
8ミリフィルムのシステムってあまりよく知らないのだけど、紙焼き写真みたいにネガで撮影してそれから上映用のポジフィルムを起こすのが普通なのかしら?本作はそのネガで全編作られた作品です。この発想はなかった!

男三人、同じ会員証を持つ仲でつるんで遊んでるみたい。その遊びの様子もシュールで面白いですが。そのひとりが会員証をなくし、"factory"を訪れて会員証を再発行してもらう…。というおはなし。無言劇。
あの、"factory"での、会員証を失くした男の取った行動を見ると、その男にとって“会員証”は内心では腹立たしいものだったのかしら?

我々の人生は「見えない会員証」で縛られているような気がするときもあります。一時期流行った「KY」なんてそういう部分もあるし。そういうアレゴリーなのかしら?

ネガ作品ですが、一部の小道具は普通にポジで見えて、そうなるようにネガの小道具を作ったのかな。

Cプログラム
『愛しいあなたに会えるまで』(坂本直樹/ビデオ/30分)
これは「ドラマ」であります。う~ん、なんとなく女性が、ちょっとプライドの高い女性が夢見そうな恋愛ストーリーでありますな、作者さんは男性のようですが。いや、あたしだってあたしを手ひどく振った女性が私の所にやってきて、赦しを請い、「あなたの女にして」と跪くのを夢想したりすることもあるので、偉そうな事は言えないのだけど…。そういう自分の困ったところを衝かれた気がして、ちょっときつかったです。

『しんやのばぁばん』(福田幸代/ビデオ/25分)
セルフ・ドキュメンタリー系の作品になるかしら。いや、あたしはちっとも実験映画に詳しくないのだけど。
作者さんが小さいころよく遊んでくれたおばあちゃん。故郷に帰った作者さんがそのおばあちゃんをモチーフにしてとった作品。
作者さんの暖かいまなざしもあり、おばあちゃんのお人柄もあり、ほっこりする、とてもいい作品になっています。

セルフ・ドキュメンタリー、ほんとうに「個人映画」ならではの作品じゃないかと思います。
見切れたりした映像もあるのですが、それを「味わい」に昇華させているなぁと。

私はいくつまで生きられるかわかりませんが、老人になるのならこのおばあちゃんみたいなじーさんになりたいものです。

『ミルミル夢ミル飛んでミル』(川北 玲/ビデオ/25分)
こちらは「ドキュメンタリー」というより「イメージ映像」という感じ。じゃあその違いってどこよ?っと自問したりするのですが。
手描きアニメーションをこしらえたり、ストリートミュージシャンやったりする作者さん?と合間に挟まれるその手描きアニメーション。

Dプログラム
『8で殺せ-shoot me deadly-』(光永 惇/ビデオ/30分)
今回の卒展で驚いたのは、まだまだ8ミリ作品が何本もあったことなんですが。
ここでは、8ミリVSビデオのshootingの戦いがコメディ仕立てて描かれてます。shootされたらやられちゃうという設定。
8ミリ映像とビデオ映像をミックスした作品かしら。

『Miron』(Production E.D./ビデオ/30分)
今回の卒業制作に用意していたB級活劇映画『Miron』が、しかし制作に失敗してしまった。
その顛末をイメージ映像で綴った作品。ほんとうに『Miron』を作る予定だったのか、それともそれはネタで、そういう設定で最初から作られたメタな作品か、それはわからないのだけど。

これも「何があったか」を語る部分において「ドキュメンタリー」なのでしょうが、どっちかというと「イメージ」のような感じがします。その区切りはどこにあるのか、ほんとに上手く説明できないのだけど。

『花のように人の世に』(松岡みのり/ビデオ/24分)
これも「何があったか」描かれてるけど、「ドキュメンタリー」よか「イメージ」の作品かなぁと。
言葉というより、イメージで綴られています。
自然の風景、それから花を使った染色、お加減の少し悪いおばあさん、染められていく布、それが仕立て上げられ、それはそのおばあさんの前掛けで、という作品でした。
美しい自然、花を使って染料を作る行程、丹念な職人仕事で染められていく布…、うつくしかったです。

『アシハラノナカツクニ』(宮本尚昭/Super8/10分)
これも8ミリで撮られたイメージ映像。自然の風景はカラー、街の風景はモノクロ、という使い分けになるかしら?
8ミリとは不思議なもので、昨日撮られたフィルムであっても、それは昔の風景のような肌触りがあります。視覚メディアとしてはいちばん「記憶」に近いものじゃないかしら?
そのモノクロームの街の風景もなんだか「昭和の風景」みたいな風情を漂わせていて、とても不思議でした。

さて、全体を通して。

去年は1プログラムしか観られなかったので、去年の上映内容はよくわからないのですが。販売も終了した8ミリのはずなのに、逆に作品数増えてね?であります。
そしてふと気がつくと、アスペクト比4:3の(デジタル)ビデオ作品がもうなくなってしまったみたいです(あったらごめんなさい)。ビデオ作品は16:9に移行完了したみたい。まぁほんと、昔のテープ式DVカメラなんて使い勝手も今のHDDやシリコンメディアのビデオカメラと比べれば悪いだろうし。最近のビデオカメラって驚くほど安くなってるし。

傾向としては、ここ数年感じるのだけど、手堅いなぁと思います。エネルギーをもてあましているような、時としてそのせいで破綻してしまったような作品はもうないなと。無茶する作品は。昔は「カメラに煽られて」無茶をするような作品も見かけたのだけど。(無茶をしろと言ってるわけではありません。怪我とかトラブルとか、ほんとうにお気をつけて。)ま、あるいみ、カメラが身近になった、特別なものではなくなったという事もあるかもしれません。

昔はムービーカメラを手に入れるというのは大変で、それ自体が「青春のひとコマ」だったりしたのでしょうが。今は1ヶ月もバイトすればそこそこのビデオカメラが手に入るでしょうし。編集機材もそこそこの性能のPCがあれば、1万ちょっとも出せばそこそこの機能を持った動画編集ソフトも手に入るでしょう。携帯の動画機能を使うのも映像作品的にはありかと。そういう意味で「動画」を撮る行為も特別じゃなくなってきてるんだろうなと。

なんか作品の感想どころか紹介ですらない、しょせんは「自分語り」に過ぎない文章でありましょうが。人の「表現」に寄生した「自己表現」を書いてしまったような気もしますが。今年のイメフォの卒展も面白かったです。見られてよかったと思ってます。

いつまで見られるのかなぁ…。そろそろそういう事を思う年齢になってきてます。

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