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2013/02/12

チョコレート展

昨日は上野の国立科学博物館で開催されている特別展『チョコレート展』を見てきました。
チョコレートにまつわるモロモロを総花的に取り上げた特別展です。
ツイッターでフォローしてあるある方がお書きになっていて、興味を持ったのが行ってみたきっかけでした。

大昔、ほんと大昔ですが、『チョコレートからヘロインまで』という本を読んだ事があります。
もう内容なんかもほとんどすっかり忘れているのですが。ただ、このインパクトのあるタイトル、精神に影響を与える食物・摂取物として、「チョコレートからヘロインまで」というタイトル、憶えています。

ま、もちろん、ドラッグ解放論者の論調のひとつに、「麻薬を法律で規定して取り締まってるけど、我々の社会にはまたごく普通に、もちろん合法的に、意識を変容させるための嗜好品が溢れている、麻薬だけを非合法化するのはおかしい」ってのがありますが。中島らもさんがお書きになったように、酒は筆頭でしょう、そして煙草、お茶、コーヒー、そしてチョコレートまで。酒は米国の禁酒法とかイスラムの戒律とかでタブー化されたりもしましたが。
まぁ、よく考えたら、人間なんて空腹の時と満腹の時でさえ、けっこう精神状態変わったりするものですが。

そういう視点を、強烈なインパクトとともに与えてくれた本という事だけ、本書のことは憶えているし、また、それもあって、『チョコレート展』というのにもちょっと惹かれたわけです。

またたとえば、『チャーリーとチョコレート工場』って映画(原作は小説ですが)もありました、チョコレートのもつ独特の雰囲気、ミステリアスなヒミツを感じさせるって側面、もあるのかなぁと。『チャーリーとクッキー工場』とかじゃあまり魅力ないような気がしますしね。

やっぱりどこか人をトリコにしてしまう部分があるんじゃないかしら、チョコレートって。

祝日ですし、大混雑は容易に予想されるたので、せめて少し早く行こうと、9時の開館時間を目指そうとしましたが、やっぱ出掛けにグダグダして出発は少々遅れました。それでも午前中には到着。切符売り場も入場もそこそこ混んでいましたが、身動き取れないってほどでもなく。

入場口にはかすかにココアの匂いが漂ってます。展示物から自然にその匂いがしているのか、演出のためかワザとかはわからないのだけど。

まず最初の展示はそもそものチョコレートの原料である、植物としてカカオの展示。カカオの木とカカオの実。カカオってアフリカあたりのものと思っていましたが、ガーナチョコレートとかあるし。しかし、カカオはもともとは中南米原産だそうです。
そして、カカオが現在栽培されているのは、アフリカ、インドや東南アジア、中南米の赤道付近とか。

カカオの実、そしてその中にあるチョコレートの原料のカカオ豆。カカオの実の果肉は甘く、種子であるカカオ豆は苦く。だから、動物はカカオの果肉は食べてもカカオ豆は食べず、結果としてカカオ豆をあちこちに蒔いてくれるそうです。そして、そのカカオ豆の苦さを人類はチョコレートなどとして利用するようになったと。カカオの果肉の方もちょっと食べてみたいなぁと思いましたわ。
果肉と種子(カカオ豆)が渾然としてる様子、なんとなくアケビの実っぽいです。カカオのラグビーボール型の実もアケビの実に似てると言えば言えない事もないかなぁ。

その次が「チョコレート前史」とでも呼ぶべき内容。

人類のカカオ豆の利用は、紀元前のオルメカ文明やマヤ文明にまで遡るそうです。この時代は、すりつぶしたカカオ豆にいろいろ加え、飲料(現代のココアとは別物?)として用いられたとか。ただ、それを飲めたのは王侯貴族レベルの人たちだけだったとか(前コーナーのカカオの木の繊細さを知ると、それも頷けます)。カカオ飲料を飲むための装飾されたカップの展示や道具類の展示とか。

そしてそのカカオ飲料はヨーロッパに渡ります。それはまた欧州による中南米収奪史の一部でもあるのですが。
そしてヨーロッパでも上流階級、富裕層の飲み物として流行したようです。

ただほんと、どうも展示を拝見していると、このころまではカカオ飲料はその味を楽しむものではなく、ある種の意識の変性を体験するための嗜好品(≒ドラッグ)だったように見受けられるのですが。古代カカオ飲料が「神の飲み物」と呼ばれたことも、それが理由じゃないかしら?ネイティブ・アメリカンたちが麻薬であるペヨーテを神事に用いていたみたいに。

『チョコレートからヘロインまで』だったかどうかは忘れたのですが、チョコレートのように興奮剤成分と高カロリーが混じっている品物は、「キク」そうであります。まぁ、といっても、コーヒーや紅茶並みかちょっと上ぐらいのものでしょうけど。しかし、酒や煙草といったドラッグ系嗜好品が乏しかった時代には、けっこう強烈なものだったのかもしれません。

面白いのは、欧州でこのカカオ飲料を飲むために凝った器が作られていたこと。カカオ飲料を楽しめるだけの富裕層であることの誇示でもあったのでしょうが。
古代中米文明の人たちも凝った器でカカオ飲料を楽しんでいたのと同じというのが面白かったです。

欧州で使われたカカオ飲料を作るためのポットは蓋に「モリニーリョ」(泡立て棒)が挿しこめるようになってるのが特徴。器もソーサーの襟状のパーツにカップをはめ込むようになっていて、ひっくり返さないための工夫がしてあるようです。そんなにひっくり返しやすかったのかなぁ。それともカカオ飲料が貴重品だから、ひっくり返してもったいない事をしないための用心かしら。

このポットと器のコレクションが展示されていました。古い物だけではなく、近年に作られた物も展示されていたのですが。まだ、この、(ココア以前の)カカオ飲料ってまだ飲まれているのでしょうか。それとももう飲まれることはないけれど、ポットや器のコレクションのジャンルとしては残っていて、コレクター向けに新作や古い品物のレプリカ品が作られているのでしょうか。人ごみの後ろからちょっと眺めたくらいですが、とても美しいものでありました。

そしていよいよ近代チョコレートの誕生へ展示は進みます。

チョコレートの前に(近代)ココアの発明があったようです。カカオをすりつぶしたカカオマスから油脂分をある程度取り除き(取り出された油脂分がカカオバター)、ココアパウダーを作り、飲料として飲みやすいものにしました。それがココア。
そして、ココアバターとカカオマスを使って、固形の食品にしたのがチョコレート。チョコレートの誕生。

ココアを発明したのがオランダのクンラート・バンホーテン。固形チョコレートを発明したのがイギリスのジョセフ・フライ、そしてスイスでミルクチョコレートが発明され。そしてスイス人のフランソワ・ルイ・カイエはチョコレート生産の工業化とそれにより大衆化を進めた人物。ドイツのヘルマン・ボールマンはチョコレートの原価を下げる原材料の工夫をして。更にチョコレートの大衆化が進んで。19世紀前半~20世紀初頭のお話になるのかな。

バンホーテン、ネスレ、カイエ、今も耳にする大食品メーカーのルーツがここにあるようです(名前だけ残って実態は別物、という可能性もあるかもしれませんが)
まさに「チョコレートを制する者が食品業界を制する」という状態じゃなかったかと。

そう、「食品産業の工業化」という見方もできるかと。

速水健朗『ラーメンと愛国』という本によると、日本においてインスタントラーメンの製造が食品の工業製品化を進めたそうですが、チョコレートもまた、西欧における食品製造の工業化の象徴だったようです。

その次のコーナーが「チョコレートと日本」。日本における最古のチョコレートに関する記述は、18世紀末の1797年のことみたい。だからいわゆる近代チョコレートじゃなくて、まだカカオをすりつぶしたものを飲料としていたころみたいです。なんかやっぱり食べるのを楽しむものじゃなくて、精力剤みたいな扱いだったみたい。

それから和菓子の木型を応用したチョコレート型。西欧だと金属製の型を使うらしいのですが、木製だとチョコを冷やして固めるのに時間がかかったんじゃないかと思うのですが。
そして、昔懐かしい国産メーカーのチョコレートのパッケージの展示とかCMのコーナー。ここはだいぶ人ごみがしていて、さっと眺めてスルーしましたが。やっぱりこういうノスタルジックなものって人を集めますな。

チョコレート展は基本的に撮影自由なのですが、このコーナーだけ撮影禁止っぽかったです。でも人ごみで注意書きも目にしにくい感じで、ここも撮影している人がいらっしゃいました。

お次がチョコレートができるまでの展示でした。「カカオ豆になった気分で」というコーナーがいろいろあったのが面白い趣向。

まず最初に生産地での作業。もちろんカカオの実の収穫から。そして実の殻を割って、中の果肉とカカオ豆を取り出す作業。そして醗酵。果肉とカカオ豆は分離されず、この醗酵行程で果肉も役に立つとか。そして醗酵行程を終えたカカオ豆は輸送のために乾燥され。チョコレート工場のある“先進”諸国へ輸出されます。

で、あとは工場レベルでチョコレートができるまで、なんですが。ほんと「工業製品」って感じがします。作られる工程もそうですが。また、その工程の開発、添加される副原料の発見、そういうのが確立されるまでの歴史というのもあったのでしょうが、それも含めて「工業製品」ぽいなと。

チョコレートの面白い性質としては、結晶構造のとり方が6種類あるそうで、それぞれに融ける温度が違うそうです。そのために体温に近い温度で融ける、いちばん口当たりのよい結晶構造をとらせるための工程の工夫とか面白かったです。また、それを安定させるために、出来上がったチョコレートをしばらく寝かせる工程もあるそうです。

最後は様々なチョコレートの展示、チョコレートの種類、チョコレート型とか、昔のチョコレートのパッケージとか。
工業製品としてのチョコレートの紹介のあと、こんどは菓子職人さんの手作りチョコレートの紹介。

入り口と出口のところにチョコレートで作られた彫像(いや、塑像か?)が展示されていました。出口のところにあるシーラカンスの塑像が凄かったです。当時の海のディオラマ仕立てになっていて、アノマロカリスとかもいて。

それから、今回音声ガイドを借りてみました。紹介パネルを見るとアニメにもご出演の方だったみたい。この音声ガイドの機械はここで返却します。

んであとはお約束の物販コーナー。パンフレットと、それからティスティングセットというのが安価なので買ってみました。

ま、そんな感じのチョコレート展でした。

ハッピーな話だけではなく、ちょこちょことダークな話もありました。チョコだけに。
先に書いた欧州による中南米略奪史とそれによる欧州へのカカオの伝来。そしてカカオ農園で働かされる奴隷たち。奴隷制度廃止後もカカオ農園で苛酷な労働を強いられる農園労働者たち。南北問題になるのかな。
先に私はカカオってアフリカ原産だと思い込んでいたと書きましたが、それもまた植民地で奴隷に作らせるためにカカオをアフリカに持っていったのがそのもともとでありますし。

そしてまたカカオの病気の流行によりカカオがとれなくなり、農園労働者たちの仕事がなくなる問題。世界第2位のカカオ生産量を誇っていたブラジルが、1990年代前半のカカオの病気の流行で生産量が四分の一に落ちるようなこともあったそうです。

ビターな話。チョコだけに。

んで、『チョコレート展』を見たあと、せっかくだから科学博物館の常設展示も覗いてみました。

科学博物館はもう大昔に拝見した記憶がありますが。なんかそのころとがらっと変わった感じがします。リニューアルされたという話を聞いた記憶もあるのですが。
展示館が地球館と日本館に分かれていました。地球館をまず覗きました。

展示とかも前に来たときよりだいぶ垢抜けた印象です。模型展示も多かったのですが、なんていうのかな、通り一遍の模型じゃなく、「造型魂」を感じさせました。まぁそのあたり、昨今のフィギュアブームとその表現力の向上とか影響してるんじゃないかと思うのですが。

しかしやっぱり日本の国を代表する、フラッグシップ博物館です。地球館をざっと見ただけで、頭も体も自分のキャパ越え、頭はぼーっとしてくるし、足が棒になりました。で、日本館は見ずに帰っちゃいました。
ま、この国のフラッグシップな博物館を1日で見て回れるなんていうほうがおこがましいかしら?

帰りにチョコレート展の入り口を通りかかりましたが、行列ができていて、入場制限もかかっているようです。休日にご覧になるなら早い時間、できたら平日がおススメかと。

という方向で、楽しい休日でしたし、たっぷり歩いて体にもいい休日だったなぁと。
時間に余裕があれば上野動物園も…、なんて考えてましたが、それは甘い考えだったようです。チョコだけに。
また動物園はこんど行きましょう。動物園を見て回るのもいい運動になるでしょう。

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