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2012/09/27

東京都現代美術館「特撮博物館」

東京都現代美術館で開催中の『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』展を見に行ってきました。平日、有休とって。
この展覧会はとても楽しみにしていました、ただ、混雑は苦手ですし、混んでるとあまりゆっくり見ていられないし、というので、とりあえず、学生さんの夏休み過ぎたころ、休日は避けて平日に行こうと思いました。で、有休とって、やっと見に行きました。

現代美術館はアニメ映画『イノセンス』タイアップの「球体関節人形展」に行った事があります。調べてみると8年前か。だいぶ間があいて2度目になりますな。そして今回の展覧会も「館長」としてフィーチャリングされてる庵野秀明の『ヱヴァQ』がらみの部分もあるでしょうから、アニメタイアップでありましょうか。『特撮博物館』公式サイトのキャッチコピーに「エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。」とありますしね。「現代美術」でありますな。

ま、当日やっぱり引きこもりの虫に手こずって、出かけたのは午後、平日は空いてるかなぁと思っていたら、切符売り場からすでにけっこう並んでいました。これが休日とか夏休み期間だったら大混雑だったんだろうなぁ。
まぁ、会場内は混んでいましたが、それでも見たいものはだいたい見られるレベルでありました。

でもやっぱ早めに出といたほうが良かったかと反省します。午前中のほうが空いていたのではないかと。そして、午後になると、学校終わった小学校低学年の子供たちもやってきていて、騒がしかったですし。いや、子供嫌いという訳じゃないけど、やっぱ映画の上映中とかも騒いでたし、そしてそれはある程度は仕方ない事と思います、だからこちらが気をつけてぶつからないようにしようという意味ですが。

「ミニチュアで見る昭和平成の技」という事で、展示物は特撮物のミニチュア、メカとか建物のとか、スケッチや設計図といった設定資料、コンセプトアートとか、そういったものがメインでした。

フロアは2フロア使ってました。東京都現代美術館は地面をくり抜いて建てられているという奇妙なというか,アートなつくりになってるのですが、上のフロアから入って下のフロアに行くって順路になってました。

ワクワクしながら入場。
あ、あと、音声ガイドがあったのですが、使わずに見学しました。もし音声ガイド使っててれば解るって部分を勘違いしてたらごめんなさい。貸し出し所がちょいと混んでて、一刻も早く見たいと気が急いてたもので。

まず、上のフロア、最初のコーナーが、昔の特撮映画のコーナー、70年代あたりまでかなぁ。『(初代)ゴジラ』『妖星ゴラス』『宇宙大戦争』『海底軍艦』『緯度0大作戦』『日本沈没(旧版)』あたりかな。まだ現役モデラーだったら模型の作り込みとか体で解ったかもしれませんが。

模型のサイズは「尺」で表示されるってこと、何尺って呼ぶって習慣、面白いです。
まだまだ昔ながらなんだなぁって。(現在はどうかは解りませんが)

また、「スケール」じゃないって部分もあるかと。つまり「○分の一モデル」という考え方をしてない。スケールを厳密に合わせるようなつくり方はしてないのかなと。特撮の世界は画的に不自然でなければそれで良いという考え方だったのかなと。

まぁ例えば、海外になりますが、「サンダーバード」とか見ていて、ふとスケールがおかしいのでは?と感じる時があります。メカの模型同士やセットとの縮尺が合ってないんじゃないかと。特撮の世界はそこらへん、歴史的にアバウトなのかなぁと。

次がウルトラシリーズの紹介だったかな。ウルトラシリーズのメカなんか。「エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。」とあるように、力が入っていたのではと。

次も巨大化系特撮ヒーローの展示だったか。ただ、ウルトラシリーズ、巨大化ヒーロー系の展示に関しては、各ヒーローのマスクの展示はありましたが、着ぐるみの展示はあまりなかったような。ここらへん、「ミニチュアで見る」と絞ってる部分かなぁと。

そいや、仮面ライダー系の展示も見かけなかったような。それは「ミニチュアで見る」となると埒外ではありますが。等身大ヒーロー系は。

建物のミニチュアの展示もありました。これもまたリアルで見事。モデラー時代、このくらいのスキルでディオラマの建物とか作れてたら楽しかったろうなぁと。

上のフロア最後のコーナーが『巨神兵東京に現る』という短編映画の上映でした。今回の企画展にあわせて制作されたもののようです。企画:庵野秀明、巨神兵:宮崎駿、監督:樋口真嗣で、スタジオジブリのレーベルでした。

綾波系のぼそぼそとした女の子のナレーションをバックに、東京に現れた巨神兵が東京を、世界を、灰燼に帰すという短編でした。ナレーションもストーリーの説明的というより詩的な独白って感じ。終末のひととき。

世界の終わりを描く、それはまた今日的なのかなぁ。昔だったら巨神兵が現れても人類かヒーローに倒されるまでを描くかも、短編でも、とかちょっと思ったり。
しかし、ふと気がつくと、確かに、ミニチュア特撮ってのは、そのほとんどの場合において、破壊のイメージと不可分だなぁと気づかされたり。

この灰燼に帰す東京の風景、それにカタルシスを感じる私も確かに居りましたよ。

んで下のフロアに降りていって。ちなみにいったん下りると上には戻れないそうです。お気をつけて。

下りて最初のコーナーが特撮関係の美術倉庫の中って趣向の展示。
かなりボロボロになった特撮用の模型もあって。やっぱこういうのも愛着があって処分できないんだろうなと。いや、また再利用とかするのかな?『ローレライ』の潜水艦のでっかいミニチュアが圧巻でした。『終戦のローレライ』、面白かったなぁ。

そして『巨神兵東京に現る』を作例として特撮のメイキングの展示。各シーンはどのように撮られたかとか、壊れるビルのプロップの解説とか面白かったです。

実は『巨神兵~』を見て、3DCGIもけっこう使われたんだろうなと思ったのだけど。CGと思ったシーン、巨神兵が現れる前のキラキラした粒が飛ぶシーンとか、爆発のキノコ雲とか、巨神兵から立ち上る煙とか、それもまた特撮だったようです。

ただ、CGを使わないというのは、コンピューターを使わないという訳じゃなく、画像処理とかでコンピューターを大活用しているかたちでありました。

巨神兵、着ぐるみとはちょっと違う感じだったので、CGではもちろんないにしろ、ストップモーションアニメーションかなぁと思ったのですが。後ろや脇に操演の方がついての操り人形というタイプでした。んで操演の方は全身青い衣装を着けていて、コンピューター処理で操演の方は消すって方式でした。今はそういった素材をコンピューター上で合成して完成ってかたちかしら。

まぁ、自分の中ではどうしても3DCGIvs特撮ってかたちに考えてしまいますが。現場ではどちらがより効果的な仕上がりになるか、あと、コストパフォーマンスで考えていらっしゃるのでしょうが。

私はやっぱり元・モデラーのせいか特撮派で、最近の映画とかでものすごくスペクタクルな映像を見ても「どうせ3DCGIだろ」って思ってしまいます。最近はね。いや、特撮の創意工夫にかけるのと同等かそれ以上の創意工夫を3DCGIの世界でも、プログラマさんとか制作スタッフさんがかけていらっしゃるであろう事も理解していますが。

模型制作の工房を模した展示もステキでした。筆立てが切った缶ビールに転がらないように樹脂で土台をつけた物とか、手先が自然に動く人ならそうするだろうなって感覚、良かったです。

職人さんの仕事もまた細分化されているようで、いろんな担当があるのかな?ウルトラセブンの目とかカラータイマーとかどうやってできたかって展示とかも。木工、それから版金細工。

そして『巨神兵東京に現る』のミニチュアセットを再現したもの。これは圧巻でした。このセット、入っていけるようになってました。行列ができてたので私は入りませんでしたが。なぜか阿佐ヶ谷を模した街並み、西荻窪駅の模型もありました。制作スタッフさんがご近所に住んでいらっしゃるのでしょうか。いや、阿佐ヶ谷なら、けやき通りを再現して欲しかったぞ。あの緑のトンネルは効果的じゃないかなと。

このセットも崩れた東京タワーがあって、その前の展示も東京タワーが2本ぐらいあって、ほんと、モチーフとしての東京タワーは人気者なんだなぁと思いました。
そのうちスカイツリーの出てくる特撮も現れるのだろうけど、やっぱ、東京タワーはエエですな。

それから映像を用いた特撮のいろんな撮影テク、画像合成のテクニックの紹介がありました。個人的にはこれらをもっとたくさん見たかったな。でも小体なりに上手にまとめて紹介してあったと思います。今はこれらのテクニックのほとんどはコンピューター上でやるんでしょうが。マスク合成とかフィルムでやると気の遠くなるような作業のようですし。

最後が館長:庵野秀明さんのコレクションかどうかはわからなかったのですが、特撮オモチャの展示と、特撮映画やテレビの名場面集。この名場面集、アドレナリンがドバドバ出てしばらく見入ってました。

会場を出ると物販コーナー。いやほんといろんな品々。今回の展覧会にあわせた海洋堂のリボルテック巨神兵がいい出来と聞いていましたが。さすがにもう売り切れ。10月再販予定、予約可だそうですが。さすがに予約してまで欲しい熱意はなく。(一般販売はされるものなのでしょうか?)
あとおススメとしては『円谷特殊技術研究所』という特撮アンソロジーDVD-BOXがあるそうですが、8千円超とちょっと手が出ず。

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500円ガチャの巨神兵を1回だけ、あと、図録と『巨神兵東京に現る』のパンフレットがセットになったもの(2,700円でした)を買いました。500円ガチャの巨神兵は3種類なので、ちょっと出せばコンプもしやすいと思います。ま、ガチャを回しまくってたのも昔の話になったな…。

あと、今回のグッズ売店は会場外の通路にも小規模ですがありました。
ミュージアムショップもありましたが、そちらは覗きませんでしたが。

今回、次いつ来るかわからないので、「特撮博物館」のほか、もうひとつの企画展『FUTURE BEAUTY 日本ファッションの未来性』と常設展も入れるチケットを買ったのですが。到着が遅かったのと、けっこう長居したので、そのふたつは駆け足でざっと見ただけです。『FUTURE BEAUTY~』はコンセプチュアルな品物から、着た人がふつーに道を歩いていてもおかしくない感じの服まで、いろいろあったです。そいや特撮展目当ての?オタ系に混じってオサレ系の人もいたなぁと思いましたよ。

本来の予定なら、このあと近くの深川江戸資料館も覗いてみる予定でしたが。これは館内に江戸時代の街並みが再現されていて、ある意味これも特撮的で好きな場所なんですが。さすがに回れる時間じゃなくて。そのまま帰宅しました。

120927_2

夕焼け、きれいだったです。

ほんと、もっと早くに出て、せめて午前中ぐらいに現地着だともっとゆったり見られたかなと反省しましたが。
でも、とても楽しい展覧会でした。
やっぱ基本的には感動点はノスタルジーかな。小さいころ、夢中になって見ていた特撮物。そのブラウン管やスクリーンの向こうにあったものが、数十年の時を経て、距離を越えて、目の前にそれがある。それが感動でした。もちろん、ノスタルジーだけじゃない、とも思いますが。

あと、やっぱ、「特撮史」としてもうちょっと纏まった物が見たくなりました。その系譜とか。ミニチュアのテクニック、撮影のテクニックの歴史、とか。もちろんそうなると海外からの影響、『サンダーバード』とかにも言及しないといけないでしょうが。

もう1度くらい見に行けたらいいのだけど。それは無理だな。
こういう展覧会、またいつかあるといいのだけど。
ま、あの大規模な球体関節人形展もアニメ映画『イノセンス』ありきだったし、今回も『ヱヴァQ』ありきで実現した企画なのかな。ならやっぱり無理かなぁ。
またいつかやって欲しいものだけど…。
つかどこか常設の施設が欲しいなと。

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