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2011/07/12

椎名桜子『それでもわたしは白い服がほしい』

110712
椎名桜子『それでもわたしは白い服がほしい』(マガジンハウス・ananの本)
読了。エッセイです。

お使いの帰りがけ、古本屋さんを見つけてちょっと覗いてみたのですが。
百均棚に椎名桜子の本書と『おいしい水』という小説があったので、ちょっと懐かしくなって購入しました。

椎名桜子、バブルのころあたり、Wikipediaで改めて調べると88年ごろのようですが、ちょっとだけマスコミを賑わせた方、という記憶です。
なんといっても「まだ小説を出してないのに『作家』という肩書きでデビューした」というところかしら。最大の特徴は。

端整に撮られたポートレートに、「処女作執筆中の作家」というようなコピーがついていたと思います。それでのけぞりました。
ふつー、「作家」ってのは、最低でも書き上げた小説が世に出せるレベルだと認められ、その小説が雑誌に載るか単行本になってから名乗る肩書きじゃないですか?
(本書を読むと原稿を持ってあちこち回った事が書かれていて、まったく小説など書いたこともない人ではなかったようですが)

おいおいと思わず突っ込みそうになって。
そしてそれはたぶん「世間をおいしく生きてるんだろうなぁ」というやっかみの感情のせいだろうけど。

まぁ、それ以外にはあまり関心もなく、もともと自分の興味のあるジャンルの本を書いていたのでもなく、まったく手を出していませんでした。そして当人もいつの間にか消えていて。

バブル崩壊から20年。本書も奥付を見ると22年前の初版。
アレはなんだったんだろ、なんてちょっと興味を持って、もちろん百均という事もあって、一緒に並んでいた「おいしい水」と一緒に買ってみました。2冊で200円。

 

けっこうふつうに読めましたよ。

どうせ話題作りだけの人に過ぎなくて、中身はダメダメだろって先入観をずっと持っていましたが。
文章がどうしようもなく下手で読むに耐えない、ということもないし。

もちろん担当編集さんが大きく手を入れたり、最悪ゴーストライターという可能性もあるかもしれませんが。
きちんとサクサクふつーに読める文章でした。
活字が大きくて行間が開いていて、つまりけっこうスカスカなせいも早く読めた理由かもしれませんが。

なんつーか、バブル当時のギョーカイ人ノリ?有名人の誰々と会った、業界パーティー楽しかったとか。あるいはブランド話、リゾートはどこそこがいいわぁ、なんておはなし、たぶん私が読んだら嫉妬でムカついて思わず放り出すような話もほとんど出てきませんし。お嬢様がお高く留まって下を見下してるね、と感じさせる部分もあまりありません。そういうのばっかりだったら読めなかったでしょう。実は某漫画家さんの作品で、漫画は面白かったけど、あとがきがニューヨーク在住でアーチストの誰某に会った、みたいな自慢話が延々と続くのに辟易して漫画じたい読まなくなったこともありますし。

たぶん、アーチスト志向のそこそこイイトコのお嬢さんならふつーに書きそうな文書なのかなぁと思いました。

まぁどれだけシンパシーを感じられたかは解りませんが。20代前半、世の中にグングン出て行く、ルックスにも恵まれた、上り調子のお嬢様、時代はバブル真っ盛り。と、かたやバブル崩壊後の大不況、鳴かず飛ばずで失業の恐怖に怯えて生きていかねばならないキモメンの中年男と、共通できるものはあまりないかもしれないな。でも、最後まで読めるぐらいのクオリティはありましたよ。

たぶん徒花といえば徒花なんでしょう。他人の人生を軽々しく「徒花」なんて決め付けるのは違うかもしれませんが。そしてやっぱりあの売り方には今でも違和感と反発を覚えますが。

しかし、マガジンハウスの「プロジェクト・椎名桜子」(という物があったと思いますが)関係者は当時どうだったのかなぁ。下世話な興味ですが。立ち上げる時の熱気。たぶん、「仕掛け人」みたいな方が椎名桜子という“素材”に惚れこんでいたと思いますが。ケレン味たっぷりに、大技を見せつけるつもりで小説を出す前に“作家”の肩書をつけて売り出して。得意絶頂の皆さん。しかし大ゴケ。責任者探し、責任逃れ。そういう人間模様。そして、その渦中の、空虚な中心(と本書を読んでると感じたりします)としての椎名桜子。その喧騒を眺めている時の心中は如何ばかりのものだったかなぁと。

ほんと下世話な興味ですけどね。下品なあたくし。

いや、重ねて書けばけっこう面白く本書は読めました。
ふつーに、文庫ぐらいの価格帯の本なら、ちょっとした車中の伴に求めたかもしれませんよ。
ああいう売り方の人じゃなかったら。

こういう売り出し方をされずに椎名桜子はデビューできたんでしょうか?
そして、そういうルートだったらまだ活躍してたり、いや、けっこうヒット作を書いたりしてたんでしょうか?
やっぱそれが最後の疑問。
それはまだ小説の方を読んでないし、だいたいそれほどどういう小説が売れるかどうかも解らないし。
解ろうとする努力をするつもりもないのですが…

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