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2011/04/17

イメージフォーラム映像研究所2010年度卒業制作展

土曜日はイメージフォーラム映像研究所2010年度卒業制作展に行ってきました。
ほんらいなら3月の予定でしたが、震災で日程が1ヶ月ほど延期になってました。

今回のプログラムはA~Dで、土曜日ぜんぶ上映されるのですが。
渋谷に向かう途中、地震があって地下鉄が停まりました。で、バスで向かったのですが。
それで、最初のCプログラムの頭の何作品かは見逃してしまいました。
そう大きな地震じゃなかったし、数分待てば再開したと思います。そして、地下鉄のほうが早く着くし、開演に間に合ったと思いますが。
ま、こういうときもほんと冷静な判断を下せないあたし、って方向で。

また何作品かについて書いてみようと思います。書ける作品について。何度も書いていますが、実験映画について何か書くのは難しいです。劇映画ならヒロインがかわいかったとか、ストーリーがハラハラドキドキとか書く取っ掛かりはいくつもあるのですが。実験映画はどう書けばいいのかまず頭を抱えてしまいます。

まぁその程度のレベルの人間の書いた感想ということで。

『ノイズレコーダー』(浅野佑典/ビデオ/10分)
古くて調子が悪くなったビデオカメラを使って撮られた作品。ノイズとか乗ってて。
そういう「天然系」の作品でした。

『おやじのバイク』(宮崎勇麿/ビデオ/40分)
去年の卒展で『てつうまおやじ』を出品された方だと思うのですが。
今回は『てつうまおやじ』のアナザーバージョンという趣向です。
両作とも父親を題材にした作品なのですが。
『てつうまおやじ』では自分の古いバイクを物置から出してきてレストアする姿に多く尺を咲いていますが、本作ではそれはあっさり目にしています。
そういう、語り口を変えた作品。そのあり方が面白いです。

『ひとつの空白』(銭谷海/ビデオ/10分)
私の拝見した中では唯一の人形アニメーションでしたか。
顔とかは写真かグラビアの切抜きをつぎはぎで貼ってあったり。独特の雰囲気のお人形でした。

『仙川のパリジェンヌ』(倉島章江/ビデオ/15分)
日本人のフランスコンプレックス。それこそ赤塚不二夫のイヤミから、実験映画だと帯谷有理さんの『フランス映画』まで。けっこう面白おかしく。しかしアメリカコンプレックスはどんな作品があるかな、とか考えたりしながら見ました。

『intra-』(林玄/ビデオ/13分)
森の中の風景の映像を構成したとても“実験映画”らしい映像作品でした。
シャープな感じ。

『風の中のダイアログ』(松宮大輔/ビデオ/23分)
作者さんが主宰していた?映画サークル?にかつて所属していた女性へのインタビューと当時と今の8ミリ映像で構成されている作品。
語られている内容というよりむしろ、そのぼそぼそとした語り口との持ってる不思議なリズム感と、8ミリの映像タッチ(8ミリって記憶のようにぼやけるメディアだと思うのですが)とがあいまって、独特の雰囲気をかもし出しています。

『ウーマンイントラブル』
(斉藤大也/ビデオ/5分)
ヲ人形をモチーフにした作品。今回トリッキーな映像作品は少なかったのですが、その中で数少ないトリッキーな部分のある作品でした。

『REQUIEMA』(小枡裕巳/ビデオ/60分)
タイトルはレクイエムと作者のお姉さんの名前を合成したものでしょうか。
「セルフ・ドキュメンタリー」系の作品になります。10年前に他界した姉をモチーフに、作者の家族へのインタビューと映像で構成された作品。

他界した家族のことを家族や親戚、関係者へのインタビューで描き出すという作品はイメフォの卒展で時々拝見しますし、印象深いものも多いです。『私が選んだ父』『男のサービスエリア』『中村三郎上等兵』『映画はエンジン』など。

本作は最後のテロップひとつで作品がどんがらがっしゃんとひっくり返されます。ただそれがほんとかもわかりませんが。

たとえばフェイクドキュメンタリーとかいうの。否定する人もいますが、私はそういうのは“アリ”だと思っています。寺山修司が言うように「作り変えられない過去なんてない」「去り行く一切は物語に過ぎない」そして、「事実は人間なしに存在できるが嘘は人間なくしては存在できない」と思ってますし。特定の政治団体とかが自分たちの主張のためにでっち上げを行うとかいう場合を除けばね。虚虚実実のあわいというのも面白いと思いますし、好きです。

『せいぶカップ』(Maggie Chann/ビデオ/15分)
喫茶店でのAV監督へのインタビュー、なんですが。ま、ふつー、そういうのってインタビューイとかインタビュワーの姿を映すものなんでしょうが。本作はそういうのはまったく出さず、店内の様子とか食器とか什器とか他のお客さんばっかり映しています。ま、インタビューはもちろんドラマとかでもアクセントをつけるために会話シーンとかに一瞬そういう映像を挿入したりしますが。薬味みたいに。本作はその“薬味”みたいな映像ばっかの作品。最後は切り貼りされた会話で遊んでみたりしてます。

『そげる・たわむ・外に流れる』(三木はるか/ビデオ/25分)
タイトルのそげる、たわむ、外に流れるというのは、老化に伴う女性のバストの形の変化だそうですけど。作者さんはそんなのとはまったくご縁のない貧乳の持ち主。その自分の貧乳をネタに自虐っぽくコメディ仕立てにしたじぶん映画。ビデオ映像と8ミリ映像の使い分けとかも面白いです。

作者さんにはアニメ『らき☆すた』より「貧乳はステータスだ!希少価値だ!」という言葉を僭越ながらお贈りしたいと…。

全体を通しての印象ですが。

今年も「フリチン映画」はなかったなと。なんていうのかな、自分でもどうしていいかわからないエネルギーをもてあまして、思わずフリチンでわーっとやってしまうような映画のこと。そういうエネルギーを持て余してしまったような作品はなかったかなと。その代わり手堅くまとめてくるという印象。小粒だったかなと(偉そうでごめんなさい)。ま、私みたいに自分の作品は作らずに偉そうにこういう風に書くほうがダメダメでありますが。

たぶん、そういうのは、イメフォの生徒さんが、というだけじゃなくて、若い衆全般のメンタリティの変化だと思うのだけど。
そういう時代なのだなぁと思ったりもします。

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