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2010/08/03

時代の事件として考えてみる

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100803k0000m040118000c.html
『2児放置死:「30分泣き声続く」異変伝える通報』(毎日jp)

なんとも痛ましい事件であります。
こんな事件は、いつの時代でもある、どの時代でも一定割合で起きるもの、と考えず、この時代ならではの事件と考えるとすると、と考えてみたのですが。

ひとつは「母性愛幻想」の崩壊があるのではと思います。
岸田秀によると人間は本能の壊れた動物とか。だから、動物が持っているような「母性本能」は人間は持ってない。そのため、人類はそれに替わる「母性愛幻想」というのを発明し、子供を育てる能力を失わないようにした。そう理解しているのですが、私は。

しかし現代、人類はその「母性愛幻想」を安直に壊してしまったのではないかと。

「母性愛」はある側面、女性を束縛するものとして機能してきました。近現代、人はあらゆる束縛から自由になろうとして。で、ついでに「母性愛幻想」も壊してしまったのではと。それは一方では子育てに縛られる女性を解放してくれたのでしょうが。しかし、もう一方では育児放棄という問題を生んでしまったと。

「母性愛」という「共同幻想」。そのおかげで、人類が、さまざまな問題はあるにせよ、とりあえず絶滅せずに大過なく繁栄できてきた、人類をある部分支え、ある部分束縛してきた、「共同幻想」。そのひとつは確実に「母性愛幻想」だったかと。
それが壊れてきている。

ただ、それは一面、育児を一方的に押し付けられてきた女性を解放するものだったといういことは忘れてはならないかと。

もうひとつは「個人」の問題かと。

近現代は「個人」を何よりも重視する時代だと思います。人は地縁血縁、つまりご近所さんや親類縁者という「個人」を縛る「しがらみ」から解放され、自由に、自分の意思で生きることを善しとしている。それが近現代の考え方。そして大部においては私はそれに賛成します。

しかしその、かつては「個人」を縛ってきた「しがらみ」は、もう一方ではセーフティネットとして機能してきました。かつて人は窮地に陥ってもそのセーフティネットに助けられて、もちろん一方ではセーフティネットの一員として誰かを助けて、きたのだけど。

現代、人は豊かになってきて、例えば子守りを誰かに頼まなくても、ベビーシッターさんを雇ったりできるようになってきて、つまり、セーフティネット機能を金で買うことが今の時代といえるかな?親の面倒は見なくても介護保険で済ませられるとかも。(もちろんそういった福祉関係のお金が国庫を圧迫している昨今だけど)

だから、人は「個人」として自由を謳歌して生きていけるようになった。それは基本的に善いことだと私は思ってます。私だって親戚付き合いや近所付き合いはウザいと基本的には思ってます。

しかし、本件のように、セーフティーネットを持ってない、金銭的にもそう豊かでない(ホストに入れあげなければお金はあったのでしょうが)、個人が窮地に陥った時、にっちもさっちも行かなくなってしまう、と。

他に例えばネカフェ難民とかいますが。昔なら、そうなったら親戚の所にでも転がり込めてたのでしょうが。そのかわり、そこそこ豊かな暮らしをしていれば、誰か窮乏した親戚が転がり込んで来ることも認めなければいけない。

育児に関しては、このような育児放棄の事件だけでなく、先日のアナウンサーさんの自殺事件みたいに、産後うつをひとりで抱え込んでしまい、自殺に追い込まれるという、事件も起きていますが。これも「母性幻想の崩壊」と「地縁血縁のセーフティーネットの喪失」というふたつのファクターが絡んでいるかと思います。

私個人はこういう時代の流れは基本的によいことだと思ってます。ただ、その影で、こういった不憫な事件も起きることも、これから起きる事も、あるでしょう。
それは良かれと思って我々が進んできた道の「行きついてしまった」姿。それを肝に銘じておくのがたいせつかと。

ただひとりのエゴイスティックなバカっ母の起こしたことじゃなくてね。

もちろんただひとりのエゴイスティックなバカっ母の起こした事件として解釈し、彼女を安全地帯から非難する、あるいは無関心でいる方法もありますよ。そっちの方が正しいかもね。

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コメント

その幻想がもっと崩壊して
幻想であることに皆が気づいてくれたら、
子供を産まないと言う選択も、アリになるのですが。

投稿: きこ | 2010/08/03 23:16

◎きこ様
そうですね。
アンハッピーな繁栄より、ハッピーな絶滅がいいと私も思います。

投稿: BUFF | 2010/08/05 12:25

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