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2010/03/23

イメージフォーラム映像研究所2009年度卒業制作展

今年もイメージフォーラム映像研究所の卒業制作展を見に行ってきました。
今年はABCの3プログラム、19日にAプログラム、20日にBCプログラムを見ました。
という彷徨で、書ける範囲で感想を書いてみます。

実験映画の感想を書くのは難しいです。劇映画だったら、「ハラハラドキドキのストーリー」、「ド迫力のアクション」「あのアイドルが脱いだけど、がっかりおっぱいだった」とか書きようがあるのですが。
しかし、実験映画はその映像の息遣いで成り立っていると思うのですが、その書きようがどうもちょっと難しいです。文章にしにくいです。
しかし、劇映画もその息遣いといったものがけっこうその映画を面白く見られるか見られないかのファクターになると思うのですが。構図とかカット割りとかね。

いや、まぁ、逃げ口上かなと。
私ごときの感想など、あまり当てにしないでください…。

まず、Aプログラムから。

Aプログラム

「Water Closet」((山田園子/ビデオ/4分)
ドローイングアニメーションかな?モノクローム、縦長の画面。
女の子がお手洗いに入って、シャワーを浴びて、という光景。おとなしい、地味な感じの女の子なのですが。
でもラスト、シャワーシーン。排水口に流れていくひとすじの毛にちょっとドキッとしました。
そのセンス、いいと思います。

「ワルツ」(小林亮太/ビデオ/23分)
巡り会わせにちょっとびっくりした作品。本作は双葉双一さんがご出演です。双葉さんは日比谷カタンさんの対バンで何度かライブを拝見している方です。独特の、不思議な空気をまとった方。
イメージフォーラムの大将、かわなかのぶひろ先生からの人のつながり、三上寛さんと出会ってからのライブハウス通いの人のつながり、そのご縁がこういうかたちで交叉するとは。つか、そのつながりに通底して寺山修司がありますけど。

自分の中の音楽を喪失したらしい男(双葉双一さん)、彼はなぜか山あいの古びた木造の廃校にたどり着き。そこに暮らすダンサーの女性と出会い、それによって男は自分の中の音楽を取り戻し、再びステージに立つ、と。そういう感じのおはなしでした。

もとは45分くらいの作品にする予定だったそうですが。23分という半分の尺になったそうです。映画ってのは長くするより短くするほうが大変かと。説明が足りないかと思ったり、単純にせっかく撮った映像をなるべくたくさん使いたいという作り手の思いがあったり。もちろん短くしすぎて観客が解らなくなるというのも困りますが。

本作はウェルメイドな印象がありました。山あいの、雪に包まれた廃校の風情、いい感じですし。台詞に頼らずに、ニュアンスの積み重ねで物語を理解させる手腕。
映像の使い方の巧みさ。「音楽」を取り戻していく男と、雪から顔を出す緑、雪解け、そういう映像が上手く活かされています。

「てつうまおやじ」(宮崎勇麿/ビデオ/28分)
魚屋さんを営む作者の父親、作者の記憶にはバイクに乗っていた父親のイメージがあって。作者のお願いに20年ぶりバイクを引っ張り出す父親。しかし、バイクはエンジンもかからない。それを父親が修理していって、再び走るようになるバイク、それに乗る父親の姿。

うぅむ…。バイクを修理するのが作者さんだったらなと思いますが…。
バイクはヤマハのSR500ですな。ビッグシングル、いいなぁ。私もバイクに乗らなくなって20年近くか。また乗りたいと思う時もあるけど、また乗るだけの根性が残っているかしら…。

Bプログラム

「one day」(酒巻玲/ビデオ/4分)
スープを作る小人が可愛らしいです。絵とか作品のまとっている雰囲気、私の好きな坂田靖子っぽい感じがして、好きです。

「帰るところ」(志麻美紀/ビデオ/7分)
上手に纏め上げられたイメージ映像。上手いです。

「EDEN」(磯辺真也/ビデオ/24分)
テーブルの上の紅茶、灰皿、カセットテープレコーダーから聞こえてくる途切れ途切れの歌声。カメラが引いたショットになると、それが廃墟の一室だと解って。

廃墟となった団地のようです。山腹に忽然とそびえるその廃墟。雪の中。
ほんと、こういう場所どうやって見つけたんだろうという場所。そして、その場所だからこその作品だと思います。

「not empty」(ちだふみこ/ビデオ/12分)
パッチワークのぬいぐるみのお人形のストップモーションアニメ。
周りの人間の口から吐き出される針が体中に刺さってしまったお人形。女の子のお人形が現れて、その針を抜いてくれるんだけど。でも最後、その女の子がぶっとい針を一本、そのぬいぐるみの心臓にグサッと刺して。
う~ん、そうだよなぁとゾッとした作品でした。

「会社員力 This is it 真夜中の政権交代CHANGE」(阿保丈晴/24分/ビデオ)
DTP屋さんで働く女性。モニターからマウスポインタが飛び出して…という作品。
PCネタの映像作品もいくつか見ていますが、こういう発想はなかったです。

Cプログラム

「検札係たち」(高橋範行/ビデオ/30分)
某水族館とプラネタリウムが併設されてる施設の入り口の検札係の人たちのドキュメンタリー。
ただし、その人たちを映すのではなく、イレギュラーな視点から映しています。ブースのカウンターのところを上から撮ったフィクストとか、池の植え込みのアップのフィクストとか。それに検札係の人のインタビューの音声がかぶるかたち。ま、話の内容も特に仕事内容とかじゃなくて、ほぼ駄弁り。女の子の好みとか、痔の話とか。
そういう感じのちょいとアヴァンギャルドな作品でした。

「Blue」(大野紗恵/ビデオ/8分)
「Blue」といえばデレク・ジャーマンですが。私は未見ですが。いきなり赤一色のスクリーン。そしてフィクストで綴られるイメージショット。フィクストというカメラワークの不思議な感覚に気づかさせてくれる作品でした。

「移動式六畳」(瀬野高秀/8ミリ/5分)
ほんと、消えつつある8ミリですが。本作は今回唯一の8ミリ作。ほかに8ミリフィルムの映像をベースにしたビデオ作品もあるようですが。
世界を移動する安アパートの六畳。そのチープさが8ミリと似合っていて、いいです。

「tension」(東清仁/ビデオ/10分)
これもフィクストの作品。公園のベンチに座っている男の背中。遠景に噴水。そのまんまかなと思っていたら、その噴水に飛び込む男たちが現れて。
画面の隅でネタやってるってのは、ズッカー兄弟のコメディ映画とか、森田芳光映画でもあったかな。そういう感覚、好きです。

「THE 梅屋商店」(渡辺亮/ビデオ/10分)
作者の実家の小さな水産加工場を素材にしたストップモーションアニメ。
ひなびた漁師町に普通にありそうな小さな水産加工場なんですが。その什器類なんかがアヤシク蠢く様子、なかなかにシュールで面白かったです。

あと、全体を通しての印象ですが。

今年も「フリチン映画」が無かったなと。エネルギーを持て余し、思わずフリチンでわーっと走り回ってしまったような作品。
持て余したエネルギーでムチャしたりする作品もなかったように思います。ロープで体を結わえてマンションの屋上から飛び降りたり、命綱も着けずに鉄骨をよじ登っていったり。そういう作品はなかったなと。
もちろんフリチンになれ、ムチャをしろとはいいません。お巡りさんに捕まったり、怪我したり死んだりしたらつまらないもの。
また、そういうお巡りさんがやってくるような、挑発的なことをゲリラ撮影してしまう作品もありませんでした。何度も書きますが、やれとはいいませんが。

皆さん、きちんと「作品」として纏め上げていると思いました。それと関連してですが、毎年必ずプログラムには載ってるけど、上映はされない作品、つまり、制作が間に合わなかった作品があるものなんですが。上映前に「上映を予定しておりました○×は作者の都合により上映できません」というアナウンスがされることが毎年あったのですが。今年はそういいうアナウンスをついに聞きませんでした。

そういうのがイメフォの生徒さんだけじゃなく、最近の若い衆の特徴なのかなぁと思います。
どうしたらいいか自分でも持て余してるエネルギーはないぶん、手堅く纏めてくる、と。

ま、「反抗する若者」を衒っていたかつての若者世代が良かったとは決して言いません。「反抗する若者」を衒っていたモノ書き上がりの某都知事なんて、ジジイになったらちょう保守反動化してますやん。オリンピックやりたいってワガママして税金無駄遣いしてますやん。

「反体制」というセンスが若い衆の中からなくなりつつあるのかもしれない。もちろん「反体制」を気取り、学生運動に身を投じていったかつての団塊世代の若者たちがその後どういう道を歩んだか見ていれば、そーゆーことはツマラン事と醒めた目で見てしまうのが当然ですがね。

それと、テクニカルな面。

8ミリから最近のデジタルビデオカメラまで、画面のアスペクト比はだいたい4:3だった訳ですが。
地デジとかの16:9がこれからは主流になっていくかと。ビデオカメラも16:9で撮れるのが出てる訳ですし。
これから卒展作品も16:9が増えてくるかなと。
また、HD製作が普通になればまた映像表現そのものも影響を受けるかと。
私は8ミリとかのぼやけた映像も映像作品としては好きなのですが。もちろんそのタッチを活かした作品じゃないとダメでしょうが。
でもまた逆にそのHDっぷりを活かした作品とかもこれから現れてくるのだろうなと思います。

ま、そんなことを思いつつポスターハリスギャラリーへ。

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