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2010/03/04

『四畳半神話大系』

『四畳半神話大系』(森見登美彦:著 角川文庫)
ネット巡りをしていて、どこかで(思い出せない)面白い本と紹介されていて、で、ちょっと興味を持って買ったのですが。でもちょっとだけ読んで放り出していました。
なんか4月からフジテレビのノイタミナ枠で4月から深夜アニメ化されるようで。公式サイトを見たら、なんか面白そうです。見てみようかなと思って。そういえば原作本を持ってたなと思い出して、積読本の山から引っ張り出してきました。そういう感じで読了。森見登美彦は初めてです。

「四畳半」には思い入れがあります。松本零士の『男おいどん』とかの四畳半ものからですが。で、四年前まで実際私も「四畳半トイレ共同風呂なし」暮らしでした。20年以上。途中2年ほど六畳間暮らしでしたが。この本の主人公の年齢以上ですな…。
ま、今の暮らしは仮の暮らし、そのうち収入が上がるとか所帯を持つようになれば四畳半暮らしから出て行けばいいやと思いつつ、気がついたら二十年以上でしたよ。
ふつーにバリバリ仕事して、そこそこの収入になって、所帯を持ったりして、そういう「薔薇色の人生」とやらを手に入れることもなく。

いや、ま、閑話休題。

『四畳半神話大系』は大学3回生の「私」が、大学入学からの来し方を回想するというお話になっています。「私」はボロボロの下宿屋、「鴨川幽水荘」の四畳半に暮らしています。だから『四畳半神話大系』
ちょっと幻想的な(あるいはSFみたいな)要素も入ったドタバタ・コメディという感じのお話。
その幻想的な部分において“神話”かな。

4つのお話が入ってます。「私」が入学時に興味を持った4つのサークル(サークルでないのもありますが)のそれぞれに入ったらどうなったかをパラレルワールドに描いています。

第一話「四畳半恋ノ邪魔者」は映画サークル「みそぎ」。
第二話「四畳半自虐的代理代理戦争」は“樋口師匠”への弟子入り。
第三話「四畳半の甘い生活」はソフトボールサークル「ほんわか」。
第四話「八十日間四畳半一周」は(学内の?)秘密機関「福猫飯店」。

登場人物は4話通してほぼ同じ。「私」と同級生の「小津」、“師匠”である先輩「樋口清太郎」、後輩の女性「明石さん」、樋口と親しい(彼女かどうかは微妙なスタンス)歯科衛生士の「羽貫涼子」、樋口の敵役のイケメン「城ヶ崎」。
その面々のおりなすお話。

(以下ちょっとネタバレゾーンにつき)

ま、若いナァというのがまず第一印象ですか。
あたくしのように四畳半生活二十年以上の煮〆たような“ヴェテラン”にとってはね。
いちばんの先輩格の樋口師匠の思わせぶりな風情でさえ、稚気溢れる人物のように感じられます。いや、ま、ああいう人物に現実には心当たりは無いですが。

「私」が憧れたのは「薔薇色のキャンパスライフ」。しかし彼はなぜかネガティブな方向にいってしまって。「他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える」小津とつるむようになって。愚行に愚行を重ねて堕ちていく、と。不毛(≠パイパン)な青春。いや、パイパンは好きだけど、私。
ま、それは我が身と引き比べても解ります。意識的にしろ無意識的にしろネガティブな方へネガティブな方へ舵を切ってしまうタイプっています。つうか私もそういうタイプなんでしょう。心の底がひねくれてるんでしょ、たぶん。

四畳半暮らしを選んだのもそういうことからかと。ボロボロのトイレ共同風呂なしの四畳半独特の「魔力」。二十数年間その魔力と共にあったわたくしだからそれも解ります。こちらがそれを選んだのか、やってきた者に四畳半がそれを与えたのか。たぶんどっちの要素もある「相互作用」だと思いますが。

ホント、「住む場所」って大事なのよ。ま、若いころの一時期ならトイレ共同風呂なしの四畳半暮らしもお薦めしますが。いちどはやっとけとは思いますけど、ね。

ちなみに某大学そばの四畳半下宿の住人で、中退しなかったのはひとりだけという事例を知って居りますが、私。特に住人同志交流があったわけでもなく、つまり、仲良くサボっていたということなく。そのボロボロの四畳半下宿の魔力のせいだったのかと今にしては思います。
ほんと、四畳半恐るべし、でありますよ。

つうか「私」はまだまだやり直しがきく大学3回生。それに4話ともラストには彼女ができるし。
それに比べて私はもうやり直しが難しい中年だぞ。私だって「薔薇色の人生」が欲しかったぞ。「薔薇色のキャンパスライフ」は無理だったにしろ。

本作を読むとまだまだ情報の少ないアニメ版公式サイトのトップ絵のイラストとかも意味が解ります。
大きく横顔が描かれている女性はたぶん明石さん。可愛いですな。原作を読むともっと好きになりますな。どうせ黒髪の乙女には縁のなかった私の人生だけどさ。明石さんみたいな彼女がいたらな。
左下で寝転がってるのが「私」でしょう。けっこうイケメンじゃないか。
横縞シャツが小津かと。邪な存在だから横縞シャツなんでしょうか。
熊や蛾が描かれているのもなぜだか解りました。

4話で登場人物が同じというほかに、4話でほぼ共通するエピソードとかシチュもあります。そういうリフレインも面白い趣向です。最後のひとことネタは4話できれいにオチてるし。

擬古文調とまでは行かないとは思いますが、擬古文がかった文体も良いです。また、舞台が京都なんですが、作中に出てくる京都の地名もまた良い雰囲気。そういったものがいい塩梅にちょっとした深みや重みを本作に与えているかと。
ちなみに鴨川デルタはアニメ『けいおん!』のオープニングにも使われたみたいですね。

ちょっとした幻想的な部分、「奇妙な味」も作品に深みを与えているかと。第4話の「八十日間四畳半一周」となると、もうほぼ完全にファンタジーの方に振れていますが。

そしてやっぱどっか、「若いな」という雰囲気があると思います。やっぱり大学生がわいわいやってるという雰囲気かなぁ。

とまれ、本作は面白く読めました。アニメのほうも楽しみに待とうと思います。

あ、あと「人形愛」も肯定的に描かれてるのが良かったです。私も人形愛に生きたいと思っていたのですが、もう夢で終わる夢になってしまいました…。

つうか私も早いとこキッパリと四畳半暮らしを卒業してたら、今頃は「薔薇色の人生」だったかもしれんな……。

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