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2009/10/27

『バッド・モンキーズ』

091027 『バッド・モンキーズ』(マット・ラフ:著 横山啓明:訳 文藝春秋:刊)
読了。“冒険小説”と読んでいいかどうか解りませんが…。
日本冒険小説協会ブログで紹介されていたので読んでみました。
ちょっと名伏しがたい作品でありました。

ジェイン・シャーロット。女性。30代後半くらい?ちょいとパンキッシュな暮らしもそろそろ取り返しのつかないお年頃。彼女は職を転々としている無目的な暮らし、時にはドラッグに手を出し。
彼女は殺人事件を起こし、精神科医に精神鑑定を受けています。その彼女の語る物語が本作のメインストーリー。

彼女の口から語られる物語、それは驚くべきもの。実は彼女はある“組織”に属していると。その“組織”は矯正不能な極悪人を探し出し、殺す組織、そして彼女はその“組織”の処刑チーム「バッド・モンキーズ」の一員で。その行きがかりから殺人を犯してしまったと。

(以下ネタバレゾーンにつき)

彼女の語る“物語”。14歳、“組織”の出会いとなるある「事件」。そして“組織”にスカウトされ、ヘマもしでかしつつ最初は活躍する彼女。しかし、やがて組織の方針と自分のやりたい事に齟齬をきたし、不協和音。その挙句彼女は…。といった“物語”。

しかし、彼女を鑑定する精神科医は事実関係を調べ、彼女に反証を突きつけます。それは彼女の妄想だと。実際には起きなかった事だと。

最初はちょっとファンタジーやSFの入った冒険小説のようなおはなし。しかし話が進むにつれて、彼女の話が妄想の色合いを濃くしていきます。目に見えない監視カメラで常に監視されている事、たまたま置かれていた雑誌が伝えるメッセージ、なぜかワープできたり伸縮自在な体になったこと。そして自分の暗黒面のドッペルゲンガーまで登場して。

精神科医は彼女がそういう妄想に入り込むきっかけとなったある事件を見つけだし、彼女に突きつけます。

そうやってお話は進んでいくんですが。しかし終盤、なんだかよく解らない展開になってきて。
うむむ…。いったい何がどうなったんでしょうか。本当に起きた事は何で、幻想は何だったのでしょうか。何が妄想だったのでしょうか。そしてやっぱりファンタジーというかSF的なテクノロジーは本書の世界に実在するのかしら?
よく解らない読後感でした。

ま、人はそれぞれの“物語”を生きているとは思うのだけど。妄想、幻想といったもので生きているとは思うのだけど。
そして人はお互いの”物語”をぶつけあうことで少しづつ軌道修正して、お互いに大きく齟齬をきたさない程度の“物語”を生きているのではと思うのだけど。その共同幻想が“現実”と呼ばれているものであると思うのだけど。
しかし、それが、“他者”による軌道修正を受け付けず、極端に“自分だけの”物語になってしまった人たちが妄想病患者と呼ばれる人たちなのではと思うのだけど。

そう思いながら読みつつ、しかしそういった先入観がドンガラガッシャンと崩れるラストでありましたよ。

POPな装丁もいい感じです。単行本で1,200円というお値段、なんかちょっと安すぎないかなと思いました。最近のハードカバー、千円台後半は当たり前、2千円超も普通ですし。
装丁はペーパーバックでカバーもないというスタイルなんですね。あちらのペーパーバックに近いつくり。パルプ小説というか。

ほんと“冒険小説”と呼べるかどうかは解りませんが、面白く読みました。
しかし本当に奇妙な味の作品でした。

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