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2009/07/05

映画『美代子阿佐ヶ谷気分』

昨日は渋谷のシアター・イメージフォーラムに『美代子阿佐ヶ谷気分』の初日第1回を観てきました。三上寛さんご出演というのと、あと、イメージフォーラムですし。

監督の坪田義史の作品は、だいぶ前のイメージフォーラム・シネマテークかイメージフォーラムフェスティバルで『でかいメガネ』というのを拝見したことがあります。もうどんな作品だったかほとんど忘れているのですが。坪田さんご自身を主役に据えた、もちろん劇映画じゃない、実験映画・映像作品系の映画ですから、ストーリー的な作品というよりイメージ的な作品だったのかと。女の子をラブホテルに連れ込んで、パーティーグッズの“でかいメガネ”をかけて挑むシーンだけをかすかに覚えています。

原作者の安部愼一の作品は、本作のタイトルにもなった『美代子阿佐ヶ谷気分』だけ読みました。ちょっと前のことです。タイトルだけは、漫画史とかについて書かれた文章によく出てきますので知っていましたが、手を出したのはこの映画のことを伺ったのがきっかけ。

『美代子阿佐ヶ谷気分』という長編作品があると思っていましたが、『美代子阿佐ヶ谷気分』は冒頭収められた短編だったというのが意外でした。
ただ、収められている作品自体は、安部愼一の私小説的な世界、そして、その恋人であり同棲相手であり、後には妻となる美代子は他のさまざまな作品にも登場します。

映画『美代子阿佐ヶ谷気分』は、安部愼一の『美代子阿佐ヶ谷気分』をはじめとするいくつかの作品を基に、安部愼一の半生を“物語”として再構築した作品のようです。
時にはシュールレアリズムなイメージ描写を織り交ぜつつ。そこらへんは実験映画的な感じもします。

(以下ネタバレゾーンにつき)

冒頭、『美代子阿佐ヶ谷気分』の原作にもあった「阿佐ヶ谷の彼の部屋であたし平和よ」という、キスマークつきの扉の言葉、そして、映し出されるコマが実写とオーバーラップしていっておはなしは始まります。最初は短編『美代子阿佐ヶ谷気分』をなぞっていって。

時期的には『美代子阿佐ヶ谷気分』の舞台となった70年代初頭をメインに、いったん故郷の田川に戻り、美代子と籍を入れたころ、それから、再び上京した時代、子供も生まれて、そして、田川に再び戻ってからほぼ現在にわたる期間が描かれています。

原作の『美代子阿佐ヶ谷気分』を読んで気づいたのですが、安部愼一ご自身をモデルにした人物の姿が様々です。そういう自画像ってのはアレンジは少々変わったりするものでしょうが、基本的な部分は統一するものじゃないかと思っていたのですが。
本作では優男、モテそうな感じの水橋研二が演じています。ちょっとぼーよーとした部分も感じられ。

美代子役は町田マリー。「毛皮族」という劇団の方とか。「毛皮族」という劇団の名前だけは知っていましたが、お芝居は拝見した事はありません。

安部の友人役で小説家志望の川本賢治を演じるのは本田章一。豊川悦治とか及川光博系の鋭い、独特の空気を持った感じがする方でした。
もうひとりの安部の友人役、過激派崩れでしょうか、爆弾マニアっぽい池田溺役が松浦祐裕也。今だったらいわゆるオタクになってたかもしれない、ちょっと挙動不審でマニアックか雰囲気が良かったです。私もオタクですし。
安部の浮気相手になる飲み屋の女性、真知子があんじ。

原作では、安部が友人に美代子とセックスさせて(もちろん美代子も友人も嫌がるのですが)、それを眺めるという作品もあったのですが。本作では川本がその美代子とセックスする友人でした。それを原作を読んだときは、どこかフェティッシュな動機なのかなぁと思ったのですが。本作では、その前に安部と真知子の浮気が描かれ、それに対する自罰として安部は友人と美代子を目の前でセックスさせようとしたような感じに描かれていました。もちろんそれは何も解決しない、ただ傷を深めるだけのことだったのですが、本作でも語られるように。
しかし、まぁ、嫌がってる美代子の気持ちを考えない、自罰のためだけに、だから、ひょっとしたら自分自身しか見てない安部の身勝手さとも思われますが。

今回、舞台挨拶があったのですが、美代子役の町田マリーさんが、「こういう男についていく女性の心理は女性にしか解らないでしょう」というようなことをおっしゃっていた記憶がありますが…。

同棲かぁ。もちろん「モテない男」である私はそういう世界とは無縁ですが。そういう、いつも支えてくれる女性、もちろんセックスも愉しめる女性がそばにいる暮らしってうらやましいと思いますが…。でも、そういったふたりの関係がヒリヒリするものとなることもある訳ですし。
それは嫌だなぁと思います。独り身のほうが気楽なのかなぁ。ま、キモメンでモテない私ですけど、でも私自身が心の底からそういう深い関係を忌避しているのがさらにモテない理由かもしれないですけど。

後半、心を病み、新興宗教にはまり、荒れていく安部の姿。けっきょくそのせいか再び安部と美代子は子供をつれて田川に戻るようです。
ちなみに田川は私の故郷近く。田川は海に面していたかなぁ…。もう記憶もおぼろげだわ。

時々挟み込まれる、シュールレアリズムなイメージシーンも良かったです。
三上寛さんはどこにご出演なんだろうと思ったら、そのイメージシーンでした。
内藤陳会長といい、三上寛さんといい、ほんとピンポイントで凄い役を演じられるものであります。
そのほか、様々な方々のカメオ出演も凄かったようです。

小道具たち。当時の書籍とか出てきますが、もちろんガロも含めて。それが全部古びた感じなのはどうかなと思いました。当時だったら新品かと。演出だったのかなぁ。

安部と美代子の部屋や、真知子の部屋にギターがありました。フォークブームのころになるのかなぁ。あのころは部屋にギターが転がってるのが当たり前だったのでしょうか。
岡林信康のアルバムも小道具として出てきます。

コロッケもいい感じのアイテムでした。こんどお肉屋さん行ったらコロッケ買おうっと。
それから、音楽は安部愼一の息子さんのバンドがつけていました。
演奏風景も出てきました。シェルターってどこのライブハウスかなぁ。下北沢のシェルターなら行ったことあるんですが…。

映画終了後、舞台挨拶がありました。坪田監督、水橋研二さん、町田マリーさん、本田章一さん、松浦祐也さん、あんじさん、そして、『ガロ」の編集者役の佐野史郎がお見えでした。そういえば佐野史郎さんのライブも拝見したことがあります。佐野史郎の奥さんのライブも。佐野史郎さんはあのころの『ガロ』のリアルタイム読者だったそうです。安部愼一が載りはじめた頃は毎号は読んでなかったそうですが。

という方向で、よい映画でした。
当日はお客さんぎっしり、立ち見も出てました。
たくさんのお客さんの入る映画になるといいなと思っています。

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コメント

追記ですが。
原作『美代子阿佐ヶ谷気分』のほうの感想はこちらへ
http://buff.cocolog-nifty.com/buff/2009/01/post-3848.html

投稿: BUFF | 2009/07/05 21:42

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