« 映像の地下水脈#13 | トップページ | 2009年7月からのアニメは »

2009/06/30

『夏のあらし!』を観終わって

今期楽しんだアニメのツートップは『けいおん!』と『夏のあらし!』でした。
『けいおん!』に続き、夏のあらしもこの日曜深夜の回で最終回でした。さみしいです。
『けいおん!』と同じく、『夏のあらし!』も最終回は番外編という感じで、お遊び回でした。
(『夏のあらし!』は途中にもお遊び回が挟まれていましたが)
なんかもうむちゃくちゃはっちゃけたお遊び回でした。パロネタあまり解らなかったけど…。

『夏のあらし!』という物語は。昭和20年5月29日の横浜大空襲で死んだ少女たちの幽霊たち-あらし、カヤ、加奈子、やよゐ、そして、現代を生きる人たち-中一の少年・一(はじめ)、訳あって男の子として一たちの前に現れる少女・潤、方舟という昭和レトロ喫茶の店主、実は凄腕女詐欺師のマスター、そして、マッチョな私立探偵のグラサン、たちのコメディあり、シリアスありというお話でした。
舞台は「方舟」という戦災にも生き残ったレトロな昭和喫茶。少女たちの幽霊は夏の間しか現れないらしく、ひと夏の物語。

そして、面白いアイディアだなと思ったのは「通じる」という設定。幽霊の少女たちは、現代に生きる人々の中で、「通じる」相手というのがいるようです。そして、少女たちは「通じる」相手ができると、過去に飛ぶことができます。また、彼女たちが存在するためにも「通じる」相手からエネルギーを貰う必要があるみたい。そこらへん、ほんと面白いアイディアです。

彼女たちは過去へ飛び、戦災で死ぬはずだった人々を助けたりします。
「過去への干渉」となると「親殺しのパラドックス」が問題になるわけですが。そこらへん、時間旅行物だと必ず出てくる問題ですね。私もそういうのを考え出すと頭がややこしくなるものですから時間旅行物は実は苦手なんですが。

でも『夏のあらし!』の時間旅行観は面白いです。あらし達が過去への干渉を行う前に、既にあらし達が助けた人たちが存在しています。時間移動しての過去への干渉も織り込み済みで時間は流れているみたい。そこらへん時間の流れの上にさらにメタな時間の流れがあるような感じです。うまく説明できないけど。

戦災で死んだ少女たちの幽霊、彼女たちの想い、というヘビーな部分。それに思いっきり遊びまくる演出。そして、オッサンキラーな昭和40~50年代あたりの昭和歌謡という組み合わせ。どうやったらまとまるか思いもつかないファクターをうまく纏め上げてとても面白い作品に仕上がってます。

画的な演出も良いです。光の効果が多角形になってたり、夏の、まぶしすぎて逆に暗く感じるような色使い。背景のいろいろな方向へ動く引き。過去の世界の少し色調を落とした様子。ひと夏のお話という感触を強めてくれます。

その、昭和歌謡な部分ですが。なんかあたし的ツボ直撃と思ったら、新房監督と私はだいたい同年代みたい。たぶん、監督的に懐かしい昭和歌謡が私にも直撃だったのでしょう。
あのころ、まだ「国民歌謡」というのが存在できた時代。老若男女が同じ歌に親しんでいた時代。そういう時代の最後のころ。

シリアスな部分にじーんと来て、お遊び部分を笑ったり感心したり。そして、昭和歌謡の懐かしさも心に沁みる、ほんと、いいアニメでした。

映画化しないかなぁとちょっと思ったり。うまく纏め上げれば2時間くらいの尺に収まるでしょう。実写でもいいなぁ。でもこういったおはなしに似合う少女役の女の子が現代にいるのかは解りませんが。
反戦メッセージも入ってるし、企画は通りやすいかもとも思うのですが。

後半、あらしたち空襲で死んだ少女たちの幽霊は「通じた」生者からエネルギーをもらう事によってその存在が安定する、という設定が出てくるんですが。
そこらへん、幽霊じゃなくても、人間そのものがそうですな。人間は人との関わりによって初めて“生きる”ことができる。それをこういうかたちの物語にして教えてくれていると思いました。ほんと、ややもすれば人との関わりを持ちたくなくなり、引きこもり志向になりがちな私にとっても心にかすかな痛みを伴って響く感動ポイントでした。

そういう深さもあって。ほんと今期もっとも良かった作品でした。

ところで、『夏のあらし!』には、「ブログスカウト」とやらがありました。つまり、『夏のあらし!』のヨイショを、ブログを書いている人にお金を払って書かせて宣伝しようとしていました。

番組が終了した今だから書きますが、実は私のところにもブログスカウトのメールが来ました。一日にいくつもカウンターが上がらない私のブログにもメールがくるとなると、けっこうたくさんの人にそのメールは行ったと思います。(私は新房監督作品の『絶望先生シリーズ』や『まりあ†ほりっく』について書いたから来たと思いますが)
「何でこんなことするんだろう。絶対このことについて書く人も出てくるだろうし、だとするとあまりいいイメージがつかないんじゃないかな?」って思いました。正直言って。

そういうこともあって、本作を見始めるのはひと滴の苦味を感じつつだったのですが。でも、何度も書いてるようにとても面白い作品でした。ただ、ちょっと癖のあるテイストですから面白がれる人は限られてくるかもしれませんが…。太平洋戦争を扱った重い部分は敬遠されるかもしれませんし、また、お遊びというかおふざけがてんこ盛りの新房演出も癖があると感じられますし。

しかし、そういったおふざけを織り交ぜつつ、でも、きっちりと重い部分は重くパンチを繰り出してくれました。私はこういうテイストが大好きです。

応援したいものですが。DVDなど買える財力はありませぬゆえ、あまり応援ができないのが歯がゆいですが。ほんと、毎期1~2作品はDVDを揃えられるくらいの財力が欲しいものであります…。ただ、こういう文章を書いておススメをするのみ、であります。

ほんと、お金なんかもらわなくてもおススメしますよ、本作は。
「私が金のためにやらない事は、金のためにやる事よりたくさんある」(ロバート・B・パーカー)

|

« 映像の地下水脈#13 | トップページ | 2009年7月からのアニメは »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92510/45505715

この記事へのトラックバック一覧です: 『夏のあらし!』を観終わって:

« 映像の地下水脈#13 | トップページ | 2009年7月からのアニメは »