« 『あの人に会いたい 寺山修司』 | トップページ | アコギも買いました »

2009/06/11

『ヴァージン・ブルー』

『ヴァージン・ブルー』(桐生祐狩:著 角川ホラー文庫)
読了。
桐生祐狩さんの新作です。
わぉ、ちょっと気恥ずかしくて書きにくいぞ。

という方向でちょっと書いてみますけど。

桐生祐狩さんのひとつ前の出版された作品、『川を覆う闇』を「汚穢ホラー」と呼ぶならば、『ヴァージン・ブルー』は「張形ホラー」になります。ある“ちから”を持った張形を巡ってのホラー。幽霊や怪物系のホラーじゃなくて、「やっぱりいちばん怖いのは人間ダヨ!」的な方向のホラーになります。
張形。男性器のかたちを模した、女性の秘所に突っ込んで使う自慰の道具、ですな。

(以下ネタバレゾーンにつき)

その張形は用いる女性にこの上ない悦楽と、高貴な幻覚、現世の奇跡、そして最後には破滅、を与え、その主(あるじ)であるある男にもまた、超常的な力を授けるものであった、と。
その張形、それに魅入られた女性たち、その主の男、そしてその謎を追う警官と、その事件に関わってくる、あるキリスト教系新興宗教の牧師の物語であります。

お話しの中では、最初にその張形を手に入れるのは華弥という女性。たぶん、小さいころ“自己否定”を植え付けられてしまった感じの女性。彼女は張形が与えてくれる“ちから”を受け入れる事を拒んで死んでしまうのですが。
華弥は桐生祐狩タッチの人物、というような気がします。桐生祐狩の作中に出てくる、私が知る限りでは、桐生祐狩しか書けないような感じの、“儚げ”な女性でした。

だいたいこのようはお話を書くなら、普通は、後述の真由美的な人物をすえるのではないかと思います。その“奇跡”を己の欲のために使い、破滅していく人物。華弥のような人物は出さないものかと思うのですが。そこのところが桐生祐狩タッチと思うのです。だから、華弥のほうをメインにすえたものを読みたかったなと。でもそうするとお話は転がらないしなぁ。

で、その次にその魔法の張形を手に入れるのは、その、華弥の友人(ではないけど、便宜上)の真由美。彼女は華弥を内心で小バカにし、見下すために友人ヅラをしているような人物。彼女自身もコンプレックスの塊。不美人だけど、“おさせ”となって、醜い自分だけどヤリたがる男が集まってくる事で鬱憤晴らしをしているような人物。

彼女はもちろんその張形が与えてくれる“ちから”を大歓迎し、今までの溜りに溜まった憤懣を、その“ちから”を行使する事によって晴らしていきます。しかし、ちょっとした綻びから彼女もまた破滅していくんだけど。

たぶん、桐生祐狩ワールドでは、この華弥的な部分と真由美的な部分がせめぎあってるのではないかと思うのですが。私もそういう部分があります。(安直なシンパシーの表明は最大限に警戒すべき事とは理解していますが)
だから私は桐生祐狩の作品が好きなのかもしれないです。

インモラル、かつダークな部分もあったと思いますが。私としては良かったです。いや「もっとやってください!」って感じだったです。そうインモラル&ダークという感じがしなかったのは、私もインモラル&ダークな嗜好を持つ人間だからでしょうか。現実じゃヘタレですけどね、私。

例えば、張形は聖母子像のかたちをしています。そこらへんが涜神的ではありますが。でも、イイ感じです。そいつが華弥の秘所に初めて潜り込んでいくシーンはなんか笑ってしまいました。笑うところでよかったのかな。
真由美がその“ちから”によって大衆を扇動し、暴動を起こさせるシーンも。もっと“血しぶきの祭り”でも良かったような感じがしますが。

ラスト、その張形を思わず応援している自分がいて、「捕まってくれるな」「壊されてくれるな」って気分になりました。

とまれ、本作も面白く読みました。
桐生祐狩の作品ももっとたくさん読みたいものであります。

|

« 『あの人に会いたい 寺山修司』 | トップページ | アコギも買いました »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『あの人に会いたい 寺山修司』 | トップページ | アコギも買いました »