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2009/05/12

『実録 死体農場』

『実録 死体農場』(ビル・バス&ジョン・ジェファーソン:共著 相原真理子:訳 小学館文庫)
読了。

法人類学者として長年事件などの遺体鑑定に携わり、また、遺体の腐敗を研究する「死体農場」を設立した著書の回顧録です。書名に“実録”とあるのは、パトリシア・コーンウェルに本書に登場する「死体農場」をモチーフにした『死体農場』という小説があるからのようです(私は未読ですが)。パトリシア・コーンウェルは実際に死体農場を取材して『死体農場』を現したそうで、本書にはパトリシア・コーンウェルによる序文が添えられ、また、本書中にもパトリシア・コーンウェルが登場します。

私は死とか死体とか苦手なはずなんですが、なんかこの手の本をよく読む傾向にあります。
上野正彦の『死体は語る』シリーズ(全部は読んでないのですが)、朝鮮戦争戦死者の、それもひどく損傷した遺体の身元鑑定を行った埴原和郎の『骨はヒトを語る』(遺体鑑定の現場が私の故郷の方なので、妙な親近感を持って読みました)、日航機御巣鷹山墜落事故当時、遺体の身元鑑定作業に携わった飯塚 訓の『墜落遺体』とか、なんか読んでます。

本書も著者による遺体鑑定のエピソード、事件解決に鮮やかに繋がったエピソード、あるいは失敗談、がメインです。そして、本書を類書より大きく引き離しているのが、著者が設立した通称「死体農場」、つまり、実際に人間の遺体を使って、その腐敗について研究する研究所の話です。

面白いなと思ったのは。アメリカ合衆国では、遺体鑑定については、新鮮な(解剖とかでいろいろ調査できる?)遺体については検屍官の領域、亡くなってから時間が経過して、ひどく腐敗してたり、白骨化している死体については法人類学者の領域というシステムになってるっぽいところです。
日本だとどうなんでしょうか?司法解剖とか法医学者が全面的に受け持つのかなぁ?よく解りませんな。いろいろ小説とか読んでるはずだったのですが。

その、遺体鑑定のエピソードも面白いです。スリリングかつエキサイティングでした。ちょっとした法医学豆知識も知識欲を満たしてくれます。

でもやっぱり白眉は「死体農場」に関するお話でしょう。「死体農場」は通称で、正式には「テネシー大学人類学研究施設」と言うそうですが。実際に人間の死体を様々な条件下に置いて、その腐敗について調べる施設。う~ん、実際に人間の死体を使わなくても、動物の死体で代用できないものかとも思ったりもしますが…。やっぱり結果が違ってくるし、確実なデータは取れないんでしょうね。
ほんと、人間の遺体の腐敗の進行についていろいろ知識を教えられました。

しかし、こういう研究にも献体される方がいらして。ほんとうに頭が下がる思いです。

以前、ジャック・ケッチャムの『閉店時間』と言う中編集を読みましたが、どうもその中に収められた「雑草」という作品の元になったらしい事件に関する記述もありました。両方読んだから気がついたのですが。
自分の妹を彼氏がレイプするために差し出し、眠らせるための麻酔薬の使い方を間違えて吐瀉物で妹を窒息死させた彼女、それからも彼氏は少女達を誘拐してはレイプしてなぶり殺して、遺体をノコギリで切り刻んで捨てたりしたカップルの事件。『閉店時間』の解説には、実際にあった事件をベースにしているとあって、「妹を彼氏にレイプさせるところは創作だろう」と思ってたのですが、それもまた事実だったみたいです。

ほんと面白くて、一気本でした。面白いという部分もあるし、遺体鑑定に関わる様々な技術(それも「死体農場」のおかげで長足の進歩を遂げたそうです)、遺体の腐敗にまつわるいろいろな知識、そういう知的エンターティメントな部分も大いにあります。

本書もまたおススメ本であります。ただやっぱりちょっときついけど…。

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