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2009/04/03

『地を這う魚』

『地を這う魚 ひでおの青春日記』(吾妻ひでお:著 角川書店:刊)
読了。コミックスです。

吾妻ひでおは高校時代に出会いました。同級生が「これはすごい」と持ってきたのが『やけくそ天使』でした。その突き抜けたようなアナーキーっぷり、それから私も吾妻ひでおの漫画を買うようになり、『不条理日記』とかSFネタを絡めた不条理ネタとかも楽しみました。鬱々とした高校生活を送っていた私にとっては冒険小説や“ハードボイルド”小説、寺山修司のエッセイなんかに並ぶ清涼剤でした。

本書は「青春日記」とある通り、工員勤めを辞めた吾妻ひでおが漫画家のアシスタントとなり、カット描きなどでぼつぼつ自分の仕事を請け負い始めるあたりまでの時期を描いています。
アポロ11号の月着陸の話がチラッと出てきますから、時代的には70年前後の頃の話か思います。

淡々と、シュールなタッチで描かれています。

登場人物も大部分が動物系で描かれていますし、街にも擬人化された動物や魚とか変な生き物とかなんかよく解らないぐにゃっとしたものたちが徘徊したり飛んでたりします。
そして、語り口はどこか淡々としている印象を受けます。

(以下、ちょっとネタバレゾーンにつき)

デビュー前の主人公・あづま。工員として勤めていた印刷会社?(工場の看板では印刷会社っぽいんですが、なんかよく分らないぐにゃっとしたものを作ってる工場に描かれています)で勤めていたあづま。しかし、要領が悪いせいかどこの現場でも上手くいかず、とうとう工場を辞めてしまいます。

そして、ある漫画家のアシスタントの職を得ますが。しかし、アシスタントの給料もひとり暮らしには少なすぎ。(雇い主の漫画家が住み込み食事つきアシスタントの給料を基準にしていて、アパート住まい食事自弁なのに給料をえらく安くしていたらしいです)

貧しさ。会社を辞めて住むところもなく、山手線の車内で寝たり、仲間のアパートに転がり込んだり。空き瓶を集めてお金に変えて、電車賃をつくったり。アパート住まいを始めても、安いアシスタントの給料でやりくりするために食費をどれだけ削れるか頭を悩ませたり。

仲間。喫茶店で漫画家を目指す仲間たちとダベったり、漫画談義。仲間の部屋を家捜しして隠してあるへそくりを見つけてちょっとおいしいものを食べたり。ウィスキーを持ってきた仲間と酒盛りをしたり。(アル中で入院する吾妻ひでおがそのころは下戸だったようです。飲酒を鍛える余裕もなかったのかもしれません)

アシスタント先の漫画家さんから教わること、プロの漫画家や漫画雑誌編集部をその紹介で垣間見。
そして、漫画家デビューする仲間。その影でカット描きの仕事を請けたりして。そこでは“華やかなデビュー”なんて言葉が出る隙もなく、じわじわと、少しづつ世に出て行く感覚。ほんとのデビューってこんな感じなんだろうなあという印象を受けました。

そして悩み。自問自答がイカや天使やカメやなんだか解らないグニャグニャしたものという外部キャラが自分に問いかけるという描き方をしてました。

地名や人名もグニャっとした感じにもじられていて、元ネタが解りそうなのから何をもじったのかよくわからないものまでありました。

そういう、吾妻ひでおならではのシュールなスタイルで描かれる自身の青春物語。しかし、語り口はどこか淡々としていました。
ラスト、数ページで師匠の漫画家や仲間たちの後日談がちょっとだけ語られていますが。
やっぱり続編も読みたいなと思いました。本格デビューしてから超売れっ子の日々とか。

今まで読んだ吾妻ひでお作品にも昔語りの作品があった記憶がありますが。そういうのをまとめたものも読みたいなと思います。

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