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2008/12/16

『最後の性本能と水爆戦』

『最後の性本能と水爆戦』(道満晴明:著 ワニマガジン社:刊)
読了。コミックスです。

道満晴明の作品を知ったきっかけは、また某画像掲示板からでした。ちょっと不思議な作風?に惹かれて。
ただ、どうも、道満晴明は寡作な人のようですし、現在新刊で入手できる単行本も少ないようです。だから、手は出していなかったのですが。気になる作家さんでした。
で、今回新刊で本書が出版されたと知って、手を出してみた次第。

本書は“最後の”性本能と水爆戦と記されてあります。その通り、本書の前に『性本能と水爆戦』『続・性本能と水爆戦』があるようですが、2冊とも絶版のようです。で、来年、合本として復刊されるようです。

短編集です。ギャグマンガ調のシンプルで丸っこくて角ばった絵柄、かな?独特の味わいがあります。好みです。

もともとアダルトコミック誌に掲載されたもののようです。だから、ベッドシーンもあります。男女もあればレズもあり、って感じ。ただ、“ヌケる”ものではありません。

お話はシュールというか、「奇妙な味」系になるかな。どこか奇妙な世界の奇妙なお話でした。SFテイスト、オカルトテイスト、入っていて。
「エログロナンセンス」にも分類されるかと?でも、独特のタッチのせいかあまりグロさは感じさせません。

ほんと、「どうやってこういうお話、思いつくんだろ」って感じ。思考回路が常人と違うというか。でも、だからこそ、意外な方向から来て、面白いです。
そして、どこか、虚無感というか、喪失感を感じさせます。そこがいちばん私の琴線に触れるところかしら。

そういうエログロナンセンス、シュールさ、SFチックなセンスは吾妻ひでおに似てるかしら?ただ、吾妻ひでおのように、けたたましく狂騒したり、その逆に沈み込んでニューロティックになるような、そこまでの揺れ幅はない感じ。それはつまり、その底に虚無感とか喪失感がもう隣のものとして存在しているのが普通って状態かもしれません。だから、もう、逃れようともがくこともなく、その反動で沈み込んでしまうこともなく、ただ、淡々と隣にそれがあるということなのかもしれません。
時代そのものがそうなっているのかもしれないけど。

(以下、ネタバレゾーンにつき)

ほんと、こういうお話、どうして思いつけるんだろう。
例えば。

「グルグル」。男の子に一目惚れしてしまった女の子の心臓が飛び出し。エロ漫画誌を読むとそれがペニスの形になって、彼女の股間から伸びたラビアのような触手と絡み合う、というおはなし。

「妹の通夜」。いじめを苦に自殺した妹。通夜の夜、鬼がやってきて、妹を屍姦する、というお話。ただ、ホラーというよりは、どこか淡々としたタッチ。もう空虚さに満たされてしまい、そういうことも看過してしまうような感覚のようにも見受けられますが。

「MUSE」。女の子に告られた男の子。そのとき、男の子のところに未来から警告者がやってきます。彼は数年後死に、彼の死に狂った女の子は、やがて世界を滅ぼすと。だから、今のうちに別れろ、と。しかし、男の子はあっさりと彼の警告を無視し、女の子とつきあい始めます。人類の未来より、彼女との関係が大事。その、ある意味すごいニヒリズムというか、(自分の死を超えて、)世界と繋がってないという感覚。“セカイ系”って奴でしょうかね。

「1972」。誘拐してきた対立している組の娘を犯す三下。彼は自分の性的経験から、イク時に「火事だ!」と叫ぶ癖があって、そして、同席している幹部は、浮気の最中、火事で妻子を亡くしていて。ブチ切れた幹部はその三下を撃ち殺してしまう、とか。

ほんと、どうやってこんな話、思いつくんだろうなと思いました。
そして、タッチも、こういうお話も、好きです。

来年復刊される「性本能と水爆戦」も買おうと思ってます。

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