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2008/11/21

『書店はタイムマシーン』

『書店はタイムマシーン 桜庭一樹読書日記』(桜庭一樹:著 東京創元社:刊)
読了。

久しぶりの桜庭一樹の本ですが、今回は小説ではなくて日記です。
桜庭一樹の2007年11月から2008年2月までの行状と読書の記録、という感じの本でした。あと、巻末に対談が収められています。

桜庭一樹読書日記シリーズはこの前にもあるようです。ほんの少し承前的な事も出てきますので、前の作品から読んだほうが、ちょっとだけいいみたい。ほんとにほんのちょっとだけだけど。

スタイルはひと月ごとに章立てされていて、ひとつの章はまたいくつかの文章に分かれています。もともとがネット上で連載されたものらしくて、文章を拝見すると週一弱か隔週 ぐらいに連載されているみたいです。そして、ひとまとまりの文章は、桜庭一樹ご自身が携帯カメラで撮った写真にちょっと解説をつけたのがリーダーで、次に 日記で紹介されている本の一節の紹介、それから本文へと続きます。あと、桜庭一樹と担当編集者の方?による本や作家なんかについての脚注がついてます。

ほぼ行状と読書の記録でありますから、生い立ちの思い出とか、思うこととか、直接的な桜庭一樹の創作のヒミツ!的な部分は少ないのですが。いや、どんな本がお好きか、お読みになってるかということは、じゅうぶんその作家さんの創作のヒミツであるかとは思いますが。

私個人としては、桜庭一樹の著作を質・量ともに読み込んでいるとは言えませんが、やっぱり気になる作家、であります。
私個人の中では、ですが。桜庭一樹はゴシック&ロリィタな作家という位置づけであります。
私ごときススけた中年オヤヂがゴシック&ロリィタというのも噴飯物と、自分自身でも思いますが。

ただ、ここ数年、そういうイベントによく行くようになりました。そして、そういう世界が好きな、愛でている自分に驚いています。きっかけは寺山修司なのですが。寺山修司を追いかけていたら、気がついたら、そういう世界に足を踏み入れていました。

寺山修司とゴシック&ロリィタの世界、親和性があると思っているのですが。
本書でもちらっと桜庭一樹さんが寺山修司を好きと書いてあるのが嬉しかったです。

本書に現れる桜庭一樹像、いい感じです。本と映画の虫で、外出はちょっと苦手。お化粧なんてあまりしない。ある程度の自己韜晦を出していて。たぶん、読者であろう本好き人間が親しみをもてるキャラになってます。巻末の対談も大物を呼んで、というかたちではなく、仲のいい担当編集者さんたち?との雑談形式になってます。

かたや借金しまくりで男漁りしまくりあたしって無頼派?なんて人生をセキララに書くような女流作家さんもいらっしゃいますけど。そして、そういう生き方が“藝”の域に達している方もいらっしゃいますけど。そういう意味ではおとなしい感じです。
いや、ま、「おとなしい本読み」のあたしとしては、桜庭一樹のほうに好意を持ちますが。でも、無茶苦茶な人生をセキララに描く方もまた面白くて好きなのですけど。

この日記の期間、作家としての桜庭一樹さんは日本推理作家協会賞と直木賞を受賞されます。特に直木賞受賞のくだりが面白いです。受賞してからの喧騒、そして、ひと段落ついてひとり静かに本を読んで暮らす日々に戻るくだり、しみじみとしていて好きです。

全体的な読書傾ですが。本書に紹介された本は何冊かは読んでます。そのくらい。ほんの何冊かくらい。
いや、あたしは決して読書量が多い方ではないですし。日本冒険小説協会会員の看板がとても恥ずかしいくらい。昔、ある方が、「多読に驕らず少読に恥じず」と仰って頂いたのを支えにしていますが…
あと、紹介された本で、食指が動くのはちょっとありましたが。読書傾向については若干被っているかなというかんじ。その程度です。好きな作品をお書きになる作家さんでも、読書傾向まで同じという事では決してないのだなぁと思いました。

世界中で、いろんな小説が書かれている。読者のわたしたちも、世界のあっちからこっちに、自由に好き勝手に飛んでは、降りる。漫画みたいな世界地図のあちこちから、ちいさい飛行機が飛び立っては、あっちにこっちに飛び去る。途中で消える飛行機もあって、それはなんと過去へ(もしくは未来へ)行ったのだ。時間軸も超えて、あらゆる政治もイデオロギーわたしたちを苦しめる自意識も越えて、ただ、“本を読む人びと”になって、現在のアメリカ文学から、過去のヨーロッパへ。南米へ。中国へ。タイへ。
ときどき、このへんにも着陸する、未来の外国の読者。そのころわたしも、わたしの本を作った人も、読者も、もう死んでる。でも本は読まれる。(177p)

本書の中で見つけた、好きな言葉です。
何年か前の日本冒険小説協会全国大会で、内藤陳会長が
「本ってのは俺たちをいろんな所に連れて行ってくれる」
というような事を仰ったと記憶しています。ほんのちょっとのお金で、沈没したタイタニックのそばにも、灼熱の砂漠の只中にも、熱帯のジャングルにも、アイガーの北壁にも。本はどこにでも連れて行ってくれると。
また以上の言葉にさらに寺山修司の「どんな鳥も想像力より高くは飛べないだろう」という言葉も付け加えたいです。

まぁほんと、たどたどしく、しどろもどろな我が人生ですが。でも、本のおかげでだいぶ助けられていますし。いや、それにしちゃ読書量少ないけどさ…。

面白く拝読しました。そろそろ桜庭一樹の小説も読もうかと思いますし、「もっと本を読みたい」と思わせてくれる本です。
前にもちょっと書いたけど、いつか日本冒険小説協会会報・鷲に桜庭一樹のことを書きたいと思ってるのですが。

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