『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』
昨日は新宿バルト9で『トロピックサンダー/史上最低の作戦』を観てきました。
ほんと、封切り劇映画なんてめったに見ない私ですが、今回は前売りまで買って楽しみにしていました。
『トロピックサンダー/史上最低の作戦』の事を知ったのは、「町山智浩アメリカ日記」の紹介記事からでした。
『地獄の黙示録』のパロディ、ベトナム戦争ミリタリーマニアで『地獄の黙示録』も大好きな私としては見逃すわけには行きますまい。
『地獄の黙示録』は最初の封切り版と数年前に公開された『特別完全版』を映画館で見ています。また、『地獄の黙示録』のメイキングドキュメンタリーの『ハート・オブ・ダークネス』も映画館で見ています。『地獄の黙示録 特別完全版』のDVDも持ってます。
ただ、著書を拝見すると町山智浩さんご自身の『地獄の黙示録』に対する評価は低いようですが。
立花隆が『地獄の黙示録 特別完全版』の公開に合わせて『解説「地獄の黙示録」』という解説本を書いてます。私はハードカバーで読みました。面白かったです。
これを町山智浩さんは著書(「映画の見方がわかる本」シリーズだったかと思いますが)で批判して、「深読みのし過ぎ、『地獄の黙示録』は行き当たりばったりにつくられた映画」というような事をお書きになっていたと記憶しています。映画をたくさんご覧になっていて、その潮流にも詳しい町山さんが、そのアメリカ現代映画史的な文脈で、それに詳しくない立花隆の訳知り顔な書きようを批判していたと記憶しています。
ここらへんの書きようが、『新世紀エヴァンゲリオン』当時、サブカルな人がわっと「エヴァ語り」を初めて、それに対してもともとのアニメの世界の人たちが、「アニメの事を何も知らないくせに」と苦虫を噛み潰した感じで苦言を呈していたのに似ているような感じがして、ちょっと面白かったです。『新世紀エヴァンゲリオン』もグデグデになって破綻してしまった作品だと思いますし、それは『地獄の黙示録』と共通項だと思いますし。
私も『地獄の黙示録』はグデグデで破綻していると思います。でも、破綻したものであっても、だからこそ、その“ちから”みたいなのはあったのではとも思います。それは『新世紀エヴァンゲリオン』と同じ感想ですが。
いや、閑話休題。
今回見に行った映画館は新宿バルト9です。なんてそこにしたかというと、フィルム方式じゃなくてデジタル&プロジェクター方式の映画館だからです。
まぁ、私も、「映画はフィルムじゃなくちゃね」と思う部分もあります。8ミリフィルム生産中止反対の署名にも参加しましたし。でも、フィルムもやがて消え
ゆくものだとは思ってます。「じゃあ、デジタル時代の映画館はどうなっていくんだろう。画質とかはどうかな?」なんてのにも興味があります。ま、せっかく
封切りを見に行くんだから、ものは試しという感じで見に行きました。
つうかシネコン形式の映画館というのも初めてという遅れているわたくし…。ま、なんかややこしいですな。
バルト9も全席指定制の映画館でしたが。満席に近い状態ならともかく、お客さんはちょぼちょぼしかいないのだから、入って好きな場所に座れるようにして欲
しいものでした。初めて入る映画館ですし、席がどのようになってるかも解らなかったし。つうか空いてれば勝手に移動してもいいとも思うのですが、それがで
きないのがチキンですな。
入場した時点でスクリーンに広告が映写されていました。あと、予告編で、撮影風景をビデオカメラで撮ったのを映していました。こういう小回りの利き方がプロジェクター方式の利点のひとつかもしれません。
だいぶグダグダ書いちゃいましたが、さて、本編は。
(以下若干ネタバレゾーンにつき)
舞台はベトナム。ベトナム戦争を扱った映画、『トロピック・サンダー』の撮影現場。
監督はイギリス人の雇われ監督。俳優陣はちょいとマイナー&落ち目方向の人たち、かな。
撮影現場はグデグデ(『地獄の黙示録』の撮影現場もそうだったようですが)で、莫大な費用をかけて準備したジャングルをナパーム攻撃する(『地獄の黙示録』でもあったのとそっくりな)シーンも撮影に失敗してしまいます。
追い詰められた監督は、アドバイザーとして撮影現場にいたベトナム帰還兵の?原作者のアドバイスに従い、俳優たちをジャングルに放り出し、ゲリラ撮影でリアリティを出そうとしますが。実はそのジャングル、麻薬ゲリラが跋扈する地帯で。監督はインドシナ戦争時代の地雷を踏んづけて爆死、はぐれた役者のひとりと、原作者と爆破係のスタッフはゲリラに捕まってしまいます。
最初はゲリラの襲撃も撮影かと思っていた役者たちも、撮影ではない、本物のゲリラを相手にしていると気がつき、捕まった仲間をゲリラのアジトから救出しようとします。救出作戦の首尾やいかに、というお話しでした。
ゲラゲラ笑う、という方向ではなかったですが、面白く拝見しました。もちろん大作という方向ではないし、佳品かと。
ラストの救出劇、ハラハラドキドキしながら見てました。
そして役者バカゆえにピンチに陥る登場人物も。そう、そういう「映画愛」が本作にはあると思います。パロディネタも私にはいくつかわかる程度でしたが、ネタがたくさんちりばめられているなぁという程度には私も解りました。映画をたくさん見ている、ほんとの「映画愛」の人には、映画をたくさん見ている人には、もっとたくさんパロディネタに気がついて、もっと笑えた作品ではないかと思います。
劇中登場したM-16はベトナム戦争当時のフラッシュハイダーがチューリップタイプのもので嬉しかったです。M-16のカービンタイプはベトナム戦争当時のものかどうかはわかりませんが。弾倉もきちんとベトナム戦争当時の主流だった20連タイプでした。これが『地獄の黙示録』だと、フラッシュハイダーはバードケイジタイプだし、弾倉もベトナム戦争当時はほとんど使われなかった30連タイプでしたし。
ナパーム攻撃のシーンに出てきた戦闘機はA-4スカイホークだったかなぁ…。だいぶ忘れちゃいましたけど。でもA-4だったら背中にこぶのないタイプだし、あのタイプ、まだ現役なのかしら。いや、CGの可能性もあるけど。
ヒューイ・ヘリコプターがジャングルの緑の渓谷に潜り込んで飛ぶシーンは美しいです。やっぱりヒューイはいいなぁ。
画質ですけど。ふと気がついたけど、上映作品はぜんぶがぜんぶプロジェクター上映じゃないのかな?フィルムの映写機も設置されているのかしら?本編の画質はフィルムのような気がしました。
そのうち映画もデジタル化が進むのかなぁ。商業映画の撮影の現場もフィルムからデジタルに移行してくるのかしら。デジタルビデオカメラで撮ってデジタルプロジェクターで映写するようなシステム。画質とかどうなるんでしょうかね。
ちなみに昔読んだパソコン雑誌によると、ノンリニア編集を初めて取り入れたのが『地獄の黙示録』だったそうです。もちろん当時は動画編集に使えるコンピュータなんてなかったから、フィルムをレーザーディスクに焼いて、それをセットしたレーザーディスクプレイヤーをたくさん繋いだシステムだったそうです。確かに行き当たりばったりに撮影された『地獄の黙示録』の編集を試行錯誤するには最適のシステムだったのだろうなと思います。
『トロピック・サンダー』、面白かったです。ただほんと、映画をたくさん見る人向けかなぁとは思います。私もたくさん映画を見られたらいいのですが…
| 固定リンク | 0
コメント