『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』(桜庭一樹:著 富士見ミステリー文庫)
読了。桜庭一樹、今回の直木賞受賞作家ですね。
先日、お世話になってる映像作家の かわなかのぶひろ先生とちょっと呑む機会がありました。米子からお見えになったかわなか先生の昔の教え子さんという方もいらして。で、その昔の教え子さんが「“さくらばかずき”はいいですよ。」って話を伺って。ま、ほんと酔眼朦朧中の会話だったのでよく憶えてなかったのですが。でも、“さくらばかずき”という名前は憶えていて。翌日ググってみました。
“桜庭一樹”という名前の小説家が見つかりました。ウィキペディアの桜庭一樹の項によると桜庭一樹は米子出身の方だそうで。で、あ、この人の事かなと膝を叩きました。その教え子さんとの関係はよく解らないのですが。同郷というくらいか、同級生とか先輩後輩とか。それとも別方面の友人でいらっしゃるか。
で、桜庭一樹を読んでみようと思って。いろいろ調べてみたら本作は文庫ですし、手ごろな感じなので、試しに読んでみようと思いました。AMAZONから本書が届いたのと同時に桜庭一樹の直木賞受賞を知って驚きました。
いや、本音を言えば佐々木譲さんか馳星周さんが受賞して欲しかったのだけど。
届いた本書を見るとライトノヴェル系の作品みたいです。“ライトノヴェル”ってなんだかあまりよくは解ってないけど。出版社が普通の文庫や新書小説と違うレーベルで出していて、表紙とか挿絵とかアニメ風の絵の、若い人向けの小説、というくらいの認識しかありませんが。じゃ、ジュヴナイルとどう違うの、とかよく解りませんが。
本書の表紙も、登場するふたりの少女がゴスロリドレスを着て抱き合ってる姿が描かれていて、カラー口絵があって、本文中もアニメ調の挿絵があります。(実はそういうほんわかイラストには似合わないお話しだけど)
舞台は日本海側の海沿いの小さな町。たぶん、桜庭一樹の出身地の米子あたりの町がモデルかな?
主人公は山田なぎさ。13歳、中二。父親は漁師だったけど、ある突然の嵐の日、遭難して死んでしまって。今は母親がスーパーのレジ係をして生計を立てて、そして彼女が食事の用意とか家事をしています。4歳上の友彦という兄がいるけど引きこもり。怪しげな通販に一家のわずかな稼ぎを無駄遣いしています。なぎさは中学を卒業したら自衛隊に入って稼いで、一家の生活を支えようと決心しているようです。
9月の3日か4日ぐらい、彼女のクラスに転校生がやってきます。海野藻屑。アニメとかでは「登場人物が変な名前でも突っ込まれない」法則というのがあると思いますが、本書ではその名前、思いっきり突っ込まれます。
藻屑、不思議な女の子。自分を人魚だとクラスのみんなに自己紹介します。ペットボトルのミネラルウォーターを離さず、いつもグビグビ飲んでます(糖尿なのか?)。ぼくっ娘、美少女。そして毒舌家。その毒舌が“砂糖菓子の弾丸”、“現実”を撃ちぬけずに溶けて消えてしまう弾丸。
本作は海野藻屑がやってきてからの1ヶ月間のお話し。
本作は最初スラスラと、中ごろはページを繰るのが苦しくなってきて少しづつしか読めなくなって、そしてラストは目が離せなくなってグイグイと読みました。気がついたら思わず降りる駅を乗り越していて、久しぶりの「乗り越し本」でした。
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』。救いのないお話しですし、読む人を選ぶ本かと思います。でも、ある一部の人にとってはとても感銘を受ける作品かと思います。
あなたがもしそうでありましたら、ゼヒ。
さて、お話は…。(以下ネタバレゾーンにつき)
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