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2007/11/16

『パノラマ島奇譚』

『パノラマ島奇譚』(江戸川乱歩:著 春陽堂文庫)
読了。

私の読書歴には江戸川乱歩とかの本は入っていませんでした。数年前、夢野久作をちょっと読んだくらい。
小説本を読み始めたのは中学生時代、星新一からです。ショートショートだし、短くて読みやすかろうというのがきっかけ。それから先生が話されていた松本清張にちょっと行ったんだけど。あるテレビ番組で松本清張のインタビューを見て、私の故郷を「職工の街」と吐き捨てるように言ったのにカチンときて、それから松本清張は読まなくなりました。

高校に上がるくらいから星新一つながりでSFを読み始めました。筒井康隆とかブラッドベリとか。

ちょうど姉がSFマガジンを読んでいて。ま、姉の本に触ってるのを見つかるとボコられるんで、姉の留守中にコソコソ見てたんですが。田中光二の『わが赴くは蒼き大地』の前編が載ってました。いや、挿絵のヒロインの女の子の後ろ姿、『宇宙戦艦ヤマト』の森雪みたいな体にぴっちりしたボディスーツ姿だったんですが、その腰の線あたりにグッときました。で、『わが赴くは蒼き大地』を買いました。

ほんと、こんなに興奮した本は生まれて初めてでした。で、おおはまりして。そして本書の巻末には例の『冒険小説が読めない人生なんて』っていう名エッセイが入ってました。
それから冒険小説を読むようになり。
あと、それと、“オカズ”用に買っていた週刊プレイボーイでハードボイルド特集があって、それから“ハードボイルド”小説に手を出して。チャンドラーをよく読んでました。
そして、これもまた“オカズ用”であった月刊PLAYBOY誌で会長の『読まずに死ねるか!』を読むようになって、しまいには日本冒険小説協会にも入会して。

なんか、ぜんぶきっかけがスケベ心ですな…。

それと並行して寺山修司を読むようになって。それは演劇部の部室の片隅に転がっていた角川文庫版の寺山修司の戯曲集がきっかけでした。「人生はお祭りよ!」の台詞がいたく気に入って。今でも角川文庫の寺山修司は出てますし、カバーを変えたりして販売に熱心で嬉しいのですが、戯曲集はなくなってしまったようで残念です。

ま、そんな感じの読書歴なんですが。だから、江戸川乱歩とか日本の推理小説とか猟奇小説(と呼んでいいのかな?)については出会うきっかけはありませんでした。

ただ、十年くらい前、筋肉少女帯というバンドに出会って、その世界にハマりました。リーダーの大槻ケンヂさんが江戸川乱歩とかその手の小説のファンで、エッセイにもよくお書きになってるし、楽曲自体にも乱歩を下敷きにしたものがありました。

また、最近読んだ『本棚探偵の回想』の喜国雅彦さんも乱歩の大家でいらっしゃいますし。
で、これをきっかけに乱歩を読んでみようと思いました。
乱歩はいろんなところから出ていますが、喜国さんの本を読んだあとだと、「乱歩はやっぱり春陽堂版かなぁ」と思って春陽堂文庫版にしてみました。どれにしようかなぁと思って、選んだのが本書です。

本書は『パノラマ島奇譚』他4編を収めた短編集です。

表題作の「パノラマ島奇譚」。筋肉少女帯のアルバムに『サーカス団パノラマ島へ帰る』というのがあって、ま、それが本書を選んだ理由でもあるのですが。

いや、男の妄執が造り上げたパノラマ島、ビジュアルで見てみたいなと思いました。最近はCGとかもあるし、可能ではないかと。それこそ『MYST』みたいな架空の島を舞台にしたコンピューターゲームもありますし。

「こんなのありえないだろっ!」というトリックで莫大な財産を手に入れる主人公。いや、『長いお別れ』でもテリー・レノックスのあのトリックは「ありえないだろ!」って思いましたが…。
探偵役がお話のラストにひょこっと登場して、ちょろちょろっと事件を“解決”するのもあっけにとられた部分。だいたい今まで読んでいた“ハードボイルド”系の小説は探偵役が最初から出ずっぱりというか、だいたい探偵役の一人称で語られる小説が多いですから。

「白昼夢」。掌編のスケッチのような作品。もともとショートショート好きですし、こういうぎゅっと凝縮されたような作品が好きです。

「鬼」。これもありえるのかなぁというトリックですが。推理物、思考パズル的トリック物としては弱いような気がするんですが。でも、いかにも推理物という大仰なやり取りが新鮮です。

「火縄銃」。小さいころ読んだ探偵クイズ本に同じような話が出てきて懐かしかったです。

「接吻」。ラストの真実はどうかわからないというあやふや感、いいです。それを突き詰めていくと当人にすらわからない志賀直哉の「范の犯罪」とかに行きますし、“テラヤマ的”な感じもします。こういうのってけっこう好きです。

面白く読めました。もちろんであります。
これを機に江戸川乱歩も少しづつ読んでいこうと思っています。

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