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2007/10/27

『それいぬ』

『それいぬ~正しい乙女になるために~』(嶽本野ばら:著 文春文庫PLUS)
読了。本書が嶽本野ばらさんの最初の御本になるようです。嶽本野ばらさん、初読であります。私も勘違いしてたんですが、嶽本野ばらさんは男性の方だそうです。

本書の存在はだいぶ前から知っていました。ここ数年、乙女さんたちと知り合いになる機会が多くて。だから、「乙女のバイブル」たる本書の存在も気になっていたんですが…。
でも私はキモメン、しかもオヤヂ。手を出しかねていました。何度か本屋さんで見かけて、手にも取ってみたんですが。うぅむと悩んでけっきょく棚に戻していた本です。
ま、ちょっとあって、今回えいやっと手を出してみた次第。

いや、最初は、特濃の甘ったる~~いシロップを流し込まれるような感じの本かなぁとか思って手を出しかねていた部分もあるんですが。でも、そういう感じはしなかったです。
薄い本です。そのぶん、乙女のエッセンスがぎゅっと濃縮されているような気がします。ステキフレーズがいっぱいで、思わずあちこちに付箋をぺたぺた貼りまくりました。

嶽本さんの言によると「乙女のハードボイルド」とか。

探偵がバーバリーのトレンチコートを傷つきやすい魂の鎧とするなら、少女はJane Marpleのデコラティヴな衣装にガラスの細胞を包み込みます。これが乙女のハードボイルド、堅ゆで卵主義なのです。(68p「ロリータの卵」)

いやほんと、ステキフレーズがいっぱいです。
(いや、会長がこの文章を読まないようにお祈りしますが…)

では、付箋ぺたぺたしたところからいくつか引用しつつ。

私は「もっと幾何学的精神を!」と書いた。幻想文学というと、なにか夢のような、もやもやとした雰囲気ものだと思いこんでいるひとが、あまりにも多いように見受けられたからである。幾何学的精神は、また論理と構築性といいかえてもよい。(76p「幾何学のミッフィー」より、嶽本野ばらが澁澤龍彦の文章を引いた部分)

以前、日比谷カタンさんがご自身の演奏をオカルティックと評されて、それにご立腹な文章を読んだことがあります。そのことを考えたりします。その理由がここにあるような気がします。

僕は本物の星空よりも、プラネタリウムに映し出される星空のほうに強く心を惹かれます。ダイヤモンドよりも硝子玉、生身の人間よりもロボットが好き。(中略)「女性」のレプリカであると同時に「少年」のレプリカでさえある「少女」という存在。乙女とは、現実世界のイミテーションなのです。可愛さや美しさのみを抽出した模造品、いびつでありながらピュアなアンドロイド。(20p「プラネタリウムと模造少女」)

ファンタジーの持つ「夢」とは、現実を超えようとする想像力の闘争のことです。僕達は現実に倦み、ファンタジーによって生き返ります。ファンタジーにとって現実とは敵であり、アクセサリーなのです。(44p「幻想の植物少女」)

ここらへんの「虚構との親和性」こそ、オタク(っぽい)私が本書を面白く読めた部分かと思います。「現実こそ死ねばいい」(ザ・バカンス「ふたりで逃げるのさ」)

乙女は道徳が好きですが、基本的に非道徳主義なのです。(123p「野ばらはひなぎくになりたい」)

うぅむ…。そういう局面に接したことがあります。

そう、死は常に僕らの憧れなのですものね。僕達の求める死とは、本物の死ではありません。(中略)本物の死、形而下の死には困惑させられます。それは余りに日常的で人間的なものです。(中略)僕達にとって死とは、観念以外のなにものでもないのですから。そして、本物の死に就いては興味なんてないのです。(53p「博物館とお葬式」)

ここらへんの機微、解るような気がします。

乙女とは宿命、貴方が自分で逃れようとしても逃れられない呪縛。(180p「左様なら三角また来ても三角」)

“乙女”を“オタク”と入れ替えても成り立つ文章だと思います。そう、オタクってのは、気がついたらなっているもの、なってしまっているものかと。オタクはなりたいと思ってなるものじゃないのではと。オタクになる宿命に気がついて、受け入れて、オタクになるってのはアリと思いますが。また、例えばそれは“破滅型人生”にも入れ替えられるかと思います。

あたしは最近、私にとって“デブ”もそういうものじゃないかと思ってます。デブは宿命。たとえダイエットしようとしても、ふらりと入った定食屋で思わず「カツ丼大盛り!豚汁もつけて!!」と言ってしまいますもの、私(木亥 火暴)。

いやほんと、ステキフレーズいっぱいで。いちいち引用していたら本書を丸々写してしまいそう。
だからもしご興味がおありでしたら、読んでみて下さいませ。高い本ではありませんし。大きめの書店ならたいてい置いてあるかと。置いてなければAMAZONでも扱いがあります。
(厚さの割に高いと思うかもしれませんが…。その値打ちはあると思います。)

ということで、よろしく。

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「ユリイカ 2007年8月号」 特集・澁澤龍彦20年目の航海(青土社) [昨日同様、澁澤龍彦についてのお勉強を続けています。] ⇒「マルジナリアの人、澁澤龍彦」  跡上史郎 “私は、澁澤龍彦で大学(院)の卒論、修論を書いた。それだけではなく、何本かの査読付きの学会誌論文も澁澤で書いて、その他の業績も加え、日本文学系の研究社として、大学に職を得た。そのようなケースは、私が初めてではないかと思う。” “<異端>でも<正統>でもない澁澤龍彦とな何なのか。私の考えでは、彼は境界的、<マージナル>なの... [続きを読む]

受信: 2007/11/06 22:51

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