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2007/02/04

孤独のグルメ

『孤独のグルメ』(原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社文庫)
コミックスです。読了。
『孤独のグルメ』ひとりメシの世界を描いた作品です。これもネット掲示板で画像が貼られていて、それに惹かれて買ってみました。

物語自体は虚構になります。

主人公、井之頭五郎は個人経営の雑貨輸入業者を営む男。で、商談とか納品で訪れた街で、ひとりメシを食うためにたまたま入った店で起きた事や感じた事、考えた事を彼の一人称視点で描いている、というお話です。

井之頭五郎。前述の通り個人経営の輸入雑貨商を営んでいる。愛車はBMWかボルボ(2台所有してるのか、乗り換えたのか、はたまたレンタカーなのかは不明)。ただ、バスや地下鉄で移動することも多い。学生時代も彼女はいたようですし、4年前にもある若手大女優とも恋仲になって、ふたりでパリで過ごしたこともある。高校生の息子がいる離婚した姉がいる。そして、ひとり暮らし。筋肉質の体、格闘技の心得もあるようです。
イケメン、しかし孤独な生き方。孤独を愛するタイプのようです。

かっちょいい主人公、孤独を愛する生き方。そして、一人称視点、内的独白を多用した台詞回し、いわゆる“ハードボイルド”系の語り口に繋がりますね。

グルメ漫画とは趣が違うかな。メニューの紹介とかはしてるけど、薀蓄ネタはないし。
あと、ネタ元のお店はあるかもしれませんし、“取材”はしてるかもしれませんが、お店の人がカンカンになりそうな描きかたしてるお店もあります。

私もだいたいメシはひとりで食べます。それも肥満に繋がるとは解ってますけど。もともと独行タイプですし。飯屋に並ぶのも大の苦手。行列自体あまり好きじゃないし、「これからこれを食うのね」と、欲望丸出しのところを人にさらすのは苦手です。
知らない飯屋に飛び込むのも迷います。ま、それ自体は好きだけど。
いや、私は井之頭五郎みたいにイケメンじゃないけど。

その、モデルになった店の人がカンカンになりそうなお話のひとつ、快哉を感じたのがあります。
店の主人がお客の前で店員を怒鳴りつける店。
さすがにそういうお店に当たることはめったにないのだけど。私はそういう飯屋が、いや、あらゆるお店でいちばん嫌いです。中には粗相をした店員を客の前で怒鳴りつけるのが顧客サービスと思ってるみたいに感じられる店もありましたが。
そういうのはバックヤードでやれと、飯がまずくなると。

あたしはそういう店に当たっても何も言えませんが、井之頭五郎はきっちりと店主に抗議します。んで、逆切れした店主に胸倉を掴まれそうになるところを、あっさりと関節技で返します。胸がすっとしました。あたしもそれくらいやれればいいんですけど。
しかし、そういうシーン、グルメ漫画にはありえないですな。

谷口ジローさんは、以前から色々本とかネットとかで紹介記事を見て、興味を持ってた漫画家さんです。でも、今回初めて作品を読みました。
久住昌之さんは、泉晴記さんと組んだ泉昌之名義の作品を、昔、よく読んでました。オトコの、ややもすると独りよがり的な、美学を描くと面白い人だなと思います。『ダンドリ君』とかね。『夜行』っていう、夜行列車で、オノレの美学にこだわり駅弁を食べる、いわゆる“ハードボイルド”風なオトコの話とか、印象に残ってます。『孤独のグルメ』もそういう路線、ただ、作画が谷口ジローだからギャグじゃなくてシリアス方向と。

『孤独のグルメ』、楽しみました。
しかしまぁ、孤独を楽しめるほど気持ちのゆとりもなくなってきてる私ですが。
昔は「孤独の美学」なんて粋がってたんですがね。

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