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2007/02/18

児雷也『五人部屋』

070218 五人部屋(児雷也:作 古川書房:刊)
読了。これもコミックスです。短編集です。

ゲイの人たち向けのコミックスです。G-menというゲイ雑誌の連載をまとめた物とか。
ゲイの人たち、好む相手のタイプによって色々と分かれるようですが。書影を見てもお分かりの通り、マッチョタイプで、毛むくじゃら、そしてちょっと愛嬌のあるタイプの男性を好むゲイの人たち向けの作品のようです。

本作を読もうと思ったきっかけは、またまた画像掲示板に本書に納められている作品の一編、『約束』の一部が貼られていたのがきっかけ。

同性愛については、私は、理性的な観点で言えば、本人たちが幸せであればなんら問題ないと思ってます。お互い愛し合い、慈しみあうような関係であれば、いいなぁと思います。これは異性愛についても同じと考えたいと思っています。
また逆に、相手が自分に惚れているというのを利用して、金銭を過剰にせびったり、相手が悲しむ事を承知で二股かけたり、暴力をふるったりというような、相手を不幸にしてしまうような関係であれば、同性愛でも異性愛でも、認めたくはありません。えてして世の中にはそういう風な関係に陥る人もいますが。

あたしはどっちだろう?異性愛者だと思いますが。でも、たぶん、あたしは、恋愛、あるいは深い友情とか、濃厚な対人関係を築くこと自体ができない人間のような気がしてます。
いや、たくさんの人に良くして頂いて、それはとてもありがたく、嬉しく思っています。でも、やっぱり、いちばん落ち着くのは独りの時です。まぁ、ひとりの時はまた孤独に心をさいなまれたりしますが。
今までたくさんの女の子に振られてきたけど、うまく行かなかった理由は、私は心の底ではそういう人間であるという事が原因なのかもしれません。

いや、閑話休題。

各作品の冒頭に作者の児雷也さんによる短い解説が載っています。その解説によく「少女漫画」という言葉が出てきます。
そう、基本的に本書に収められた作品は、ゲイという部分を除けば、かつての、昔ながらの、「少女漫画」の世界に近い作品が多いです。

たとえば、ホモセクシュアルの主人公がノンケ(ホモセクシュアルじゃない)相手に片想いして悩んでるってお話がいくつか出てきます。片思いに悩む姿、ゲイの世界の話でなければ、まんま昔の少女漫画の王道パターンなんですが。
でも、その、彼らの切なさ、とても私の胸に届いてきます。

たとえばその一編、『約束』。

舞台は昭和19年、太平洋戦争末期。戦闘機乗りの主人公は、同じく戦闘機乗りの上官にひそかに想いを寄せてるんだけど。上官はノンケ、もちろん言い出せなくて。で、明日は帰還できないかもしれない出撃の日、他の兵隊たちはみんな街に繰り出してしまい、兵舎に残った主人公とその上官は二人で酒盛りを始めます。で、ひょんな事から主人公が描いていた、上官をモデルにした裸体画を上官に見つかってしまう、と。そして全てを悟った上官は、主人公に、出撃前の最後の一夜、主人公を添い寝に誘う、と。

切なくて涙が出ました。
『戦場のメリークリスマス』の、デビッド・ボウィが坂本龍一を抱きしめてキスをするシーンを思い出しました。

そう言えば、今まで読んできた冒険小説とかでいちばん切なかったシーンは、花村萬月の『ブルース』という小説で、ゲイのヤクザが、惚れた男が、女と一夜を過しているマンションの窓を、一晩じっと下から見上げているというシーンでした。

ま、ベタな“切なさ”が好きなんですね。私って。

しかし、まぁ、最近の少女漫画は読んでないけど。なんかエロ本の隣というか、隣を通り過ぎてアッチの方まで行ってしまった作品が多いと聞きます。早い話がすぐヤリまくると。DQNであると。そういう作品はもう読む気すらどころか、半径5キロ以内に近づきたくないと思いますが。そういった中、ある意味“古典的”な“切なさ”の世界を描いた、本作がとてもしっくりと読めたのではと思います。

もちろん、Hシーンもあります。やおい系の線の細い少年たちのそういうシーンは読む気はしないけど、でも、本作のマッチョ同士のHシーンは、けっこう読めました。
ある意味、“祝祭的”な感じがします。日本古来の裸祭りというか、ほんと「オ○ン○ン祭り!!」という感じでね。

また逆に、私は普通の男女の恋愛物は苦手なんですが。それは、私が恋愛できないタイプで、だから、恋愛物を読んでも、「オリにはこんな世界無縁だぁ~~!!」という気持ちが先にたってしまうから、読めないんだと思います。でも、ゲイの世界だと、そういう感情が起きなくて、逆に、彼らの恋愛感情に寄り添えるのではと思うのです。これはある意味差別かもしれませんが。スマヌ。

で、その事を逆に考えると。

ちょっと昔の、まだ『恋愛教』がはびこる前の時代。恋愛結婚じゃなくて、見合い結婚が普通だった時代。恋愛には憧れるけど、「恋愛できないこと」がコンプレックスじゃなかった時代。恋愛以外にも、自我の安定装置が様々に存在し、機能していた時代。
そして、だから、恋愛物語を、異世界の物語として、無邪気に憧れのまなざしで楽しんでいればよかった、そのころの時代の気持ちで、今でも楽しめる恋愛物語の世界なのかもしれません。本作の世界は。

ほんと、切なくて、暖かい気持ちにさせてくれる作品でした。
『五人部屋』、これもまたおススメ本であります。

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