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2006/11/11

死刑のすべて

『元刑務官が明かす 死刑のすべて』(坂本敏夫:著 文春文庫)
数ヶ月前に文庫で出てから買おうかどうしようか迷っていた本でした。先日購入し、読了。

タイトル通り、元・刑務官の著者による日本の死刑についての本です。
じっさいの死刑の様子はもとより、死刑囚の暮らし、死刑囚の取り扱われ方など、死刑をめぐる様々が書かれています。そして、何よりも、“現場”からの作品となっています。

坂本氏の姿勢は「俺たち現場にいる人間がいちばん死刑の事を解ってるんだ!」という事に尽きるかと思います。
ですので、“人権”家による死刑反対運動から現場を知らない官僚や政治家による刑務所や拘置所制度の改革、そして、刑務所や拘置所勤務を腰掛にしか考えてないキャリア組まで批判的に述べています。
その強烈な自負が本書の原動力だったかと思います。

私も現場主義の考え方をしたいです。実際できてるかどうかは別として。
で、現場の人間が誇り高い人物だったら、現場主義がいちばんでしょう。
でも、そうじゃない人間だったら、それはたちまち身内のなぁなぁ主義になってしまうでしょう。
残念ながらほんとうに誇り高い人物はほんの一握りというのが現実かと思います。

もちろん著者はその現場の腐敗についても筆を伸ばしています。
さすがに実情をそのまま、という風には書けないらしくて、モデル小説というかたちをとっていますが。そこらへんまで書くという態度を持って、著者の自負は誇り高さに裏付けられていると思います。

しかし、死刑というのは、現場で実行する刑務官たちにとっても極めてストレスの高いことである事を改めて知りました。やっぱり、人を殺すというのは大変なのだと。感情的になって、一瞬の興奮状態であれば人は人を殺せるかもしれませんが。しかし、「死刑」という行為はその対極でなければならなくて。
また、共に暮らし、情も湧いている人間に死刑を執行するのは、ある意味、そうあるべきかもしれないけど、刑務官にとってとてもつらい事のようであります。

死刑囚も様々。罪を悔い、償いをもって死刑に臨む者もいれば、刑務官をたぶらかし、のうのうと暮らしながら死刑の日まで生きていく人間もいるようです。

そういうカオシックな、一筋縄でいかない“現場”。だからこそそこにいるのは“人間”なのかもしれません。そして、だからこそ、そこからの報告は心をうつのかもしれません。
そう。重い本ではありますが、グイグイ読ませてくれました。

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