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2006/11/10

数学的にありえない

『数学的にありえない(上・下)』(アダム・ファウアー:著 矢口 誠:訳 文芸春秋:刊)
読了。
かつて数学の単位を落して悲惨な目に遭ったものとしては少々心の古傷をえぐられるタイトルではあります。

よしだまさしさんのガラクタ風雲で紹介されていたので、読んでみました。

上下で4,400円の本であります。ほんと、最近はハードカバー1冊で2千円くらい、上下刊で4千円くらいという本が多いですな。いくつか読みたい本があるのですが、ちょっとたじろいでおります。
日本冒険小説協会会員が本代を惜しむというのは会員失格でありますが…。
いや、情けない話ですが。
本書は書店で買ったのですが、レジでお金を出す時、一瞬「くらっ」ときました。給料日前でちょうどお金がないときでしたし。

さて、本書の紹介は版元の文芸春秋社のサイトによりますと
http://www.bunshun.co.jp/book_db/html/3/25/31/4163253106.shtml
であります。
一種の予知能力兼感応能力に目覚めてしまった主人公、彼と、彼の秘密を我が物にせんとする人々との丁々発止の戦いを描いた作品、であります。

(以下ネタバレゾーンかも)

うん、面白く読めました。グイグイ引き込まれるほどではなかったけど。
しかし、よしださんもお書きになってるように、なんかひと味足りません。

う~ん、何なんでしょうか。

そのひと味はある種の“香り”、みたいなものかと思うのですが。確かにストーリーは丁々発止抱けど。でも、キャラクターへのイレコミとかはあまりありませんでした。ストーリーが波乱万丈なのは面白本の必須条件ではありますが。でも、キャラクターの魅力とか語り口の魅力とか、そういったものが読んでいる最中は読者を酔わせ、読後もしばらくそれが残る、記憶に残る本となるのではないかと思います。そういった部分が弱いのかなぁ。

超能力もの、という事で。本書の主人公の持つ超能力って、ほんとオールマイティーであります。世界の過去と現在のすべてを知り、未来の世界の可能性のすべてを知る、そのきっかけの起こし方を知っている、という能力になります。一種の“神”かと。

その能力が当たり前に使えるんなら、主人公が窮地に追い込まれる事もなく、だからお話にはならない訳で。だからここまでのオールマイティーな超能力ものなら、その能力が発動したりしなかったりする必要があるでしょう。あるいはその力の怖さを理解せず、安易に発動させて逆にピンチに陥るとか。
残念だけど本書ではその能力の発動がどうもご都合主義っぽく感じられたりしました。

まぁ、数学の単位を落した経験のある者として、数学の天才という主人公が気に入らなかっただけかもしれませんがね。

あと、それだけスケールの大きい超能力ですから、やっぱりスケールの大きい話にしてほしかったなという部分もあります。“セカイ系”な物語に走る日本のライトノヴェル事情も対極にありますが。ま、本書なら続編が作れそうな感じです。

とまれ。

本書は確かに面白本であります。大変面白く読めました。
しかし、やっぱり、この身を焦がすような、ぼっとするような、読後何日もボーっとしてるような、思わず深夜+1に行って語りたくなるような、そんな冒険小説や探偵小説を読みたいのです。最近、ほんとそういう面白本には巡り会えません。

いや、こちらの感性が落ちてきているのだろうけど。

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