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2006/08/22

オタク・イン・USA

オタク・イン・USA(パトリック・マシアス:著 町山智浩:編&訳 大田出版:刊)
読了。
アメリカ合衆国における日本製アニメ、漫画、キャラクタートイの紹介のされ方と、同国におけるオタクカルチャー模様を紹介した本です。

「はじめに-僕とオタクと校庭で」にこの本のスピリットが凝縮されています。
パトリックさんの子供時代の写真、典型的なアメリカンボーイ、アメリカンガールたち(かつてザ・ドアーズが"most beautiful people in the world"と歌った)の写真。jocks(体育会系)、チアリーダータイプ、ナード(ガリ勉)君、そして、ギーク(オタク)なパトリックさん。

世界のオタクたちが日本のオタク文化とファースト・コンタクトするきっかけはそれぞれ違うけれど、根っこの部分には共通するものがあると思う。つまり、彼らはみんな生まれてからずっと自分をとりまく環境、支配的な文化に対して不満があって、そこからの脱出を日本製のファンタジーに求めたんだ。『スター・ウォーズ』で、砂漠の惑星タトゥイーンの農民として暮らすルーク・スカイウォーカーが宇宙に憧れたように。日本こそは「新たなる希望」なのだ。
僕には彼らの気持ちがよくわかる。アメリカ文化もタトゥイーンみたいに保守的になっちまって、他人と違うことを夢見る者には劣悪な状況だ。ジョックスとチアリーダーの支配、厳しいセックスのモラル、教条主義的な善悪二元論、そんな抑圧的な価値観から解放された自由な考え方をアニメやマンガは教えてくれた。(本書「はじめに-僕とオタクと校庭で」)

そして、「あとがき」では、オタク賛歌ばかりではなく、アメリカで起こったオタク犯罪、ミヤザキ型犯罪、オタクによる少女殺しが紹介されています。
単なるオタク賛歌本じゃなくて、オタクのダークサイドまで見つめようとしているその筆致、好感を持てます。

さらっと『電波男』に言及されているのも素敵。ほんと、知ってるのが当たり前という感じです。パトリックさんは岸田秀まで読んでいらっしゃるかなぁ。

「日本発のカルチャーが欧米で流行ってる」という記事に関しては、どうも眉に唾をつけてみてしまうきらいがあります、私には。「ほんとに流行ってるの?」って感じで。
どうも欧米に対するコンプレックスは抜けないようで。

かつて、欧米の文化の輸入は日本にとって急務でありました。それこそ法律でちょんまげを禁じたり、武士の帯刀を禁じたりして。挙句の果てには鹿鳴館。
そして敗戦後、日本文化は劣っているせいで戦争に負けたとかになって、さらに米国文化を全面肯定に取り入れる事を目指してきて。

最近は「アメリカじゃ○×だよ」という、アメリカ式が全面的に良いのか?と思わず突っ込みたくなるような物言いはおかげさまであまり聞かなくなったけど。

しかし、考えてみれば、この「はじめに」にあるような、日本におけるアメリカ文化への反発がオタクカルチャーの成立条件の一つであったかも知れず。そしてそれが正統のアメリカ文化に馴染めないアメリカ人たちにも受け入れられるようになったかもしれません。

アメリカにおけるオタクカルチャーの位置づけも解りやすいです。
つまりアメリカでの「オタク」は、「GOTH」とか「ヒップホップ」のようなサブカルチャー・グループとなっているのだ。(本書250ページ)
ここらへん、「今、アメリカでは「オタク」が大ブーム」なんていう紋切り型の物言いよりはるかにきちんとしているし、わかりやすいです。位置づけとしてもね。いや。

アメリカにおける日本製アニメ輸入の黎明期のエピソードも面白いです。
換骨奪胎されて、別物のお話に仕立て直されたり。無茶苦茶な吹き替えがなされていたり。
外国文化の受容に変容はつきもの、ではありますが、それを超えていたみたいです。
でも、それもまたありようのひとつかもしれません。

オタクは国境を越えるひとつのカルチャー、いや、メンタリティなのかもしれません。
今、ひとつの時代の末期にいると感じる事がままあります。
オタクカルチャーもその末期を乗り越えるためのひとつのオルタナティブなカルチャー、いや、メンタリティのあり方なのかもしれません。
だからこそ、オタク嫌が嫌われる時は徹底的にオタクが嫌われるのでしょう。既存のメンタリティーの持ち主に対しては。

もちろんオタクのメンタリティーが時代の末期を越えるとも思えません。もし乗り越える物があるとすれば、それはオタクのメンタリティーも含んだ何かだと思うのだけど。

もちっと何か書きたいし、もっとうまく書ければいいと思うのだけど、うまく書けないや。

いや、「オタク・イン・USA」、おススメ本であります。
ここでゴタクを並べるより、ひとこと「読んで!」って言うべきだと思います。

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