痴情小説
痴情小説(岩井志麻子:著 新潮文庫)
読了。各作品に色の名を冠した短編集であります。
先日、岩井志麻子さん原作の映画『インプリント~ぼっけえ、きょうてえ』を見に行った訳ですが。
で、途中読む者を切らして飛び込んだ本屋さん、文庫でも買おうと思って。で、見つけたのが本書です。
あたし、恋愛小説ってのは大の苦手です。私はもてませんが、まぁ、そのおかげで男女のドロドロは経験していません。好きだった女の子に振られてド凹む事は多々ありますが、でも、ある程度深い仲になった相手とドロドロになった経験はありません。それは悪い事ではないかもしれません。そして、そういうドロドロは経験せずに一生を終えられたらと思います。そうなるような恋愛は要らない。恋愛するんだったら、幸せに残りの人生過せるような恋愛が欲しいです。まぁ、最初からドロドロしようとして恋愛する奴ぁいないと思いますが。
ただ、ドロドロになりそうな恋愛というのはある程度予想はつく場合があると思います。不倫とか二股とかね。そうなりそうならきっぱり諦められるくらいの意志の強さは持ちたいと思います。
何度か書いてますが。
恋愛にもダイエットは必要だと思うんですよね。
あたしはデブです。ダイエットしてないから。あまり見てくれもよくないし、体も壊すでしょう。
恋愛も同じ、ダイエットしないと心が醜くなるし、心も壊れていくでしょう。食欲のダイエットとの違いは、ただ、体の美醜はすぐわかるけど、心の美醜はすぐには解らないってだけくらいだと思います。
もちろん、食欲の赴くまま食べあさってもちっとも太らない人もいます。また、無理して食べないと栄養失調で倒れそうな人もいます。ほとんど食べてないように見えるのに、別に栄養失調にもならない方もいらっしゃいます。恋愛のダイエットも同じことが言えるでしょう。
そして、ダイエットするたびに太っている私は、恋愛のダイエットもずいぶん大変なのだろうなと理解します。気軽に「食べなきゃいいじゃない」と言われると、ちょっとムカっときます。
それと同じく「恋愛も節度を保って」と言われても、どうしてもそうできない人たちがいるだろう事も理解できます。どうしても食べたくなる、食べずにはおられない気持ちになる事があります。だから、男(女)になりふり構わず、たとえドロドロに踏み込む事になると解っても、むしゃぶりつきたくなる心情も理解できます。理解できますが…。
閑話休題。
んまぁ、だから、こういうドロドロを描いた小説って、どうかなぁ、投げ出さずに読めるのかなぁと思ったのですが。
う~ん、恋愛小説って、どこか盲目の自己陶酔って部分があって。それも苦手な理由だけど。でも、本作はどこか醒めているような気がします。ドロドロの深みにはまる事が解ってるんだけど、頭のどこかではそれに気がついているんだけど、でも深みにはまらずをえない、そういう感じかなぁ。ダイエットしなきゃと思いつつ、見てくれが悪くなるし、体も壊すし、でも、そうなると解っていても、食べずにおられない心情に通じるんじゃないかと。そういうのは恋愛経験のほとんどない、ドロドロの恋愛経験のない私も類推で想像できます。
という訳で、本作もけっこう面白く読めました。
ラスト、けっこう登場人物が殺されたりします。それもなんかいきなりって感じ。
やっぱり破滅を最後に置きたいのかなぁと思います。でも、読み手として、登場人物が死んでショックを受けたりはしないんですよね。
『インプリント~ぼっけえ、きょうてえ』にも出てくる台詞ですが、「女のあそこの穴は地獄に繋がっている」訳で、その穴を通って死んでいった登場人物たちは地獄へ行ったのだろうと思います。しかし、地獄に繋がっていても、いや、地獄に繋がっているからこそ、人はその穴の深遠を覗き込みたいのでしょうか。
あたしは覗き込む機会がありませんなぁ。…いやはや。
あと、ベトナムと韓国が本作にはよく登場します。岩井志麻子さんがこだわりのある場所なのでしょうか。
ベトナム、あたしにとってのベトナムはベトナム戦争のベトナムですが。ベトナムと聞いただけで脳内に武装ヘリコプターが飛びまわり、ドアーズがジ・エンドを歌い、女と言えばアオザイ姿の娼婦かブラックパジャマを着たベトコン女性しか出てきませんが。
岩井志麻子さん、一時期はよく読んでいたんですが。ホラー小説から情痴小説に行っててからは読まなくなりました。でも、苦手だと思っていた情痴小説でも、岩井志麻子さんなら面白く読めるようです。少しづつ読んでいきましょう。
ホラー小説も情痴小説も、人の心の闇に触れるという意味において、岩井志麻子さんの中では同じものかもしれません。
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コメント
BUFFさんも読まれたのですね~!
今まさに私も読んでいる最中です。
中々ドロドロな、現実が曖昧な感じが良いですね。
『ぼっけえきょうてえ』も観に行かれたのですか~!
私も行かなきゃ!って、まだ上映されているかな??
岩井さんの情痴小説は私も最近好きになり、
一生懸命読んでいます。刊行ペース早くて大変です。
BUFFさんも読んでいるの嬉しいな。
今度語らいましょうね~。
投稿: なつみ | 2006/06/23 12:26
何度もすみません。
韓国とベトナムが良く登場するのは、
彼女の恋人がそれぞれの国に居るからなのです。
岩井さんが描写する韓国とベトナムが好きです。
投稿: なつみ | 2006/06/23 12:28
◎なつみ様
『ぼっけえ、きょうてえ』はもともとあちらのVシネのようでありますから、ヴィデオ版で観る方が本筋かもしれませぬ。
韓国もヴェトナムもいつか行ってみたい国、なんですが、行く機会がこれからあるのかなぁ。と思っています。
投稿: BUFF | 2006/06/25 15:33