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2006/05/20

川を覆う闇

という訳で、
川を覆う闇(桐生祐狩:著 角川ホラー文庫)
読了。

あたし、ホラー小説はあまり読まないのですが。
なんて言えばいいのかなぁ、“汚穢ホラー”とでも呼ぶべき作品かと思います。
例えばスカトロってのはもう1ジャンルとして確立していると思います。ヴィデオとか本とかコミック、そして実際の行為としても“スカトロ”というジャンルは確立していると思います。
ただし、あたしはスカトロ嗜好はありませんが、たぶん。
また、腐肉物、屍肉物というジャンルもあるでしょう。ゾンビ物とかそのジャンルに入るでしょうし、友成純一さんのそういう世界を描いた作品は読んだ事があります。

しかし、それらを抱合した上に、さらに生ゴミとかそういうものまで含んだ“汚穢”というものを扱った小説ってのは読んだ事がありません。筒井康隆の短編にそういうのがあったかなぁ。

「不潔さ、というのはある状態を指すんじゃありません。それには意思があり、悪意があり、増殖する生理があり-知性さえあるんです」(本書63P)
“清潔”と“不潔”の戦い、現代の“清潔”信仰に押されつつある不潔の神は、“清潔”という価値観にまつろわぬ故、迫害され続けていたある女性を拠代に“清潔”に戦いを挑んできた、というお話であります。

(以下ネタばれにつき)

いや、面白く読みました。

じつは、桐生祐狩さんの作品はとっちらかっている印象がありました。読み取り能力の低いあたしは途中でお話がごっちゃになってややこしくなるという傾向がありました。『フロストハート』とか『剣の門』とかがそういうややこしくなってうまく読めなかった作品であります。
ただ、最近作はそういう部分がなくなって、読みやすいです。ある意味、桐生祐狩ワールドの魅力が減じたかもしれませんが、あたしとしてはありがたいです。

清潔神と汚穢神の戦い。清潔神の配下の少女たち、生殖器官も消化器官も取っ払って“清潔”になった少女たち。なんとなく自己の“生身”の体を嫌悪する、現代の一群の少女たちの姿を連想させます。そして、“汚穢”系の女性の姿も、また現代において存在している一群の女性たちを思い浮かべます。そういえば、三角みづ紀さんの『東京心中』って映像作品の冒頭、どうやらみづ紀さんの私室らしい設定のお部屋、典型的な“汚部屋”でありました。

本書に提示されている価値観、たぶん、桐生祐狩さんそのものの価値観でもあると思います。あたしはどうかなぁ。

汚穢描写はド迫力のぐっちょんぐっちょん。最初の頃は本当に神経を逆撫でされるような感じでした。このくらい逆撫でられたのは、花村萬月さんの『ブルース』冒頭の指切断シーン以来。ただ、後になるとちょっと慣れてきて、人間ってほんと結構慣れるもんだなぁと思いました。

ところで。

『真・女神転生』というヴィデオゲームを遊んだ事があります。あたしが遊んだのはメガCD版でしたが。
"LAW"と"CHAOS"という属性がありました。ウィザードリィシリーズにもそういう設定があったと思いますが。“正義と悪”という意味と混同されやすい概念ですが、違うそうです。"LAW"は一神教的価値観、ひとつの神の元に統べられた価値観、"CHAOS"とは多神教的価値観、“混沌”を許容する価値観です。
で、『真・女神転生』でプレイヤーはLAWとCHAOSどちらの属性にも属さない"NEUTRAL"状態でゲームをスタートします。プレイ中に属性がどちらかに触れるイベントがいくつかあって、終盤でLAWかCHAOSに固定されるイベントがあります。そして、LAW属性に固定されれば、CHAOS属性のボスキャラをやっつけてLAWエンディング、CHAOS属性に固定されればLAW属性のボスキャラをやっつけてCHAOSエンディングになります。

しかし、このゲームには第3のエンディングがあって。NEUTRALのままラストまで行くエンディングがあります。いちばん難しいコースです。LAWとCHAOS、両方のボスキャラをやっつけないといけません。また、このゲームは敵モンスターを仲間にして戦うというゲームなのですが、LAW属性じゃないと仲間になってくれないモンスター、CHAOS属性じゃないと仲間になってくれないモンスター、というのがあって、それぞれに強力なモンスターがいます。しかし、NEUTRALのままだとどちらの属性のモンスターも仲間になってくれなくて。

いちばんたいへんなエンディングですが、やり遂げたときの満足感もひとしおでした。
そして、世の中には“バランス”というものが大切だと思いました。そして、LAWにしろ、CHAOSにしろ、どちらか一方に生きていくことは実は楽な道で、NEUTRALである事が、いちばん大変なのだなぁと思いました。ゲームに人生教わってどーするとも思いますが。

閑話休題。

本作は二段落ちであります。まぁ、ごくありふれたよーな、ま、収まるべきように収まるようなエンディング。桐生祐狩でコリはないんでわ、と思うと、いきなりガラガラと二段目の落ち。でも、やっぱりというかなんというか、桐生祐狩的にはハッピーエンドだそうであります。

ちなみに日本冒険小説協会のブログでは「切った爪の匂いを嗅ぐ感覚」だそうです。言い得て妙であります。

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