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2006/04/22

無頼の掟

無頼の掟(ジェイムズ・カルロス・ブレイク:著 加賀山 卓朗:訳 文春文庫)
今年の日本冒険小説協会、外国軍部門大賞受賞作ですが、会員の私が未読でした。
で、今頃やっと読了。

面白かったです。おススメ本であります。

で、お話は。
(以下ネタばれ注意)

禁酒法時代のアメリカ合衆国。主人公の青年・ソニーは、頭脳明晰の優等生。学業の道に進んでも成功は約束されていたけど。イカサマ博打や強盗で稼いでいる二卵性双生児の叔父たちの共にギャングとして生きていく事を選ぶ。
叔父の銀行強盗に運転手役として加わったソニー、しかし、逃走用の盗難車に乗っているところを見つかり、留置場にぶち込まれる。留置場にぶち込まれたソニーは乱闘騒ぎに巻き込まれ、誤って看守を殺してしまう。
殺人で刑務所に入れられたソニーは、他の囚人の脱獄騒ぎに乗じて脱獄し、叔父たちの元へ戻る。また叔父たちとともに強盗にいそしむソニー。
しかし、彼が殺してしまった看守は、冷酷な警官のひとり息子だった。彼は復讐のため、いかなる手段を取っても彼を追い詰めようとする。
というお話でした。

時代背景は20年代の禁酒法時代。しかし、読み始めた時点では、それがあまりよく分らなくて。漠然と現代物かなぁと読み始めました。冒頭ソニーの銃がトップブレイクのリボルバーという描写があって「いつの話だ?」と思って。あわてて後書きを読んで20年代が舞台と知りました。
(トップブレイクのリボルバーとはフレームが中折れして上に開いて、シリンダーに弾込めをするタイプのリボルバー。昔は当たり前の方式だったみたいですが、フレームが分割式で強度的に問題があるというので、今はフレーム一体型でシリンダーがフレームの横に振り出せるスウィングアウト式が一般的になってます)

ソニーは悪党だけど、いい人として描かれています。もちろん彼に魅力を感じなければ、思い入れを入れさせなければ、このような物語は成り立たないのですが。
彼が看守を殺してしまったのは、ある囚人がある囚人を痛めつけようとしたのを止めようとして乱闘騒ぎになったせい。脱獄もある囚人、むしろソニーに敵対している、暴力で他の囚人をシメている囚人が脱獄しようと騒ぎを起こしたのに乗じたから。
そして、叔父のイカサマ賭博の最中、ひょんなことからある女性を助け、厄介の種になるかもしれないのに、彼女を連れて行きます。

いや、ソニーはモテメンであります。作中もてまくりのやりまくり。そこらへんがキモメンの私には、ソニーにはあまり入れ込めませんでした。わはは。

むしろ叔父のバックにシンパシーを感じました。妻に二股かけられ、追いかけて間男をボコにしてる時に元・妻にペニスを切られ。
そして、もうひとりの叔父・ラッセルとソニーは女連れで道中でもいちゃついているのに、彼はひとりぼっち。女は買ったりナンパしているみたいですが。愛はない。いや、叔父たちは「恋愛は邪魔」とうそぶいていますが。しかし、ふたりに女が付いていってるのは愛でしょう。

んで、酔っ払ってぶち切れてソニーの連れている女にちょっかい出したり。ここら辺から仲たがいして叔父たちとソニーの関係が破綻していくのかなぁと思いましたが、なんとなく元の鞘に戻ります。あたしだったら、男三人でふたりは女連れ、こっちはひとりぼっち。んで、ふたりからいちゃついているところを見せられ続けたら確実に仲たがいしてるぞ。たとえ兄弟でも。

物語はソニーの一人称視点のパートと、彼を追い詰める警官、ボーンズの視点から描かれたパートに分かれます。ボーンズのパートではフォントが変わります。
ただ、ボーンズのパートは僅か。こういう小説では敵役も書き込んで魅力を出し、作品に深みを与えるのが定石かと思いますが。本作では逆に、彼がソニーたちの関係者たち次々と拷問し、情報を聞き出していくシーンが淡々と描かれています。内面描写などほとんどなしに。それがまるでターミネーターのような怖さを出してきます。

ラストは、うむ、落しどころかなぁというラスト。

本当に面白く読めました。そこそこボリュームはある本でしたが、さくさくと読み進められて、「面白かったぁ!」です。私も読んでいたら投票したかと。
ただ、何日も余韻が残ったり、読みながら激しく興奮したり、という事はなかったです。
こちらの感性も衰えつつあるのでしょう。

いやしかし、「真夜中のデッドリミット」とか、「ダンシング・ベア」とか、読んだ後もしばらくぼーっとするような本がまた読みたいぞ。いや、こちらの感性が鈍ってきたなら出会えないかもしれないなぁ。

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